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君と創る歴史  作者: 秋月
第2章~悠久の時を超えて~
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第20項:記憶の彼方の記憶

今この瞬間が朝か夜なのかも判らないほどに、陽光が差し込まない鬱葱と木々が生い茂る森。

俺達は一心不乱にグラスノアへ向かって歩みを続けていた。

時折、進路を塞ぐ木の枝や茂みを切り払う。


「なぁ…」

「何よ」

「いつになったら着くんだ?」

「そんなの、知らないわよ」


不満そうに言うイグサの額にはうっすらと汗が見える。

それもそのはずで、里でサクヤ達に見送られてから今まで歩いた時間は約二〜三時間。

普通の道を歩くならいざ知らず、この足場や周りの状況が最悪な場所をそれだけ歩けば、訓練を受けていても疲れはする。


「でもさ、いい加減、見えてきて、欲しい、もの、だよな!」

「そう、ねっと…。方向、はあってるはず。ああ、もうこいつら鬱陶しい!!」


今俺達の言葉が途切れ途切れになっている理由はこの樹海に潜む獣だった。

一つの群れを追い払うと、また少ししてからまた新たな群れが現れる。

それを追い払っての繰り返しがかなり前から続いていた。


「やっといなくなったか。つかさ、なんでこんなにいるんだ? 里の近くじゃ全然見かけなかったのにな」


朧の里付近じゃ、まったくと言っていいほど獣はいなかった。

シグレ達が獣の群れに襲われるようになったのは、里を出てから約一時間ほどしてからだった。


「そりゃあ、里には母さんや父さんがいるからね。獣としての本能が近づくなって言ってるんじゃないの?」


イグサが「アハハ」と少し笑いながら邪魔な木の枝を折る。

俺も進行の妨げとなる茂みをバサッと切り捨てる。

辺りを綺麗にしながら、シグレはイグサの方を振り返った。


「じゃあ、襲われている俺達は獣にとっては弱いって思われてるのか?」

「……獣の本能も、存外充てにならないね」

「そうだな」


それから更に一時間が経ち、シグレ達は大きな湖の畔に出た。

湖は楕円状に広がり、木々は湖を見守るかのように辺りに生えている。

上を見上げればもう空は茜色に染まり、もうすぐ闇が訪れようかとする頃合だ。

時刻は夕方。

シグレ達はこの夕日が差し込み、真っ赤に燃えている湖の畔で一夜を過ごす事にした。




   ***




「シグレはさ、昔の事って覚えてるの?」

「ん?」


イグサが焚き火に枝を数本放り込むと、力を得たかのようにパチッと火は爆ぜた。

闇の中で妖艶に燃える赤と黄色が織り成す炎はイグサの目に映り、ユラユラと揺れている。

多分、俺の目にもそう映っているのだろう。


「それって、俺が向こうの世界にいた時か? それとも」

「こっちにいた時」


シグレの言葉を途中で遮るも、イグサの目はずっと焚き火を見詰めたまま動かなかった。


「そうだな………」


俺が記憶の中を模索している間、周りは閑散としていた。

聞こえてくるのは火が時たま爆ぜる音や獣の遠吠え、そして向かい側にいるイグサの小さな呼吸音。

イグサは静かに俺の答えを待っていた。


「正直言えば、この世界の事は殆ど覚えていない」


俺の返答を聞くや否や、イグサは「そっか」とだけ呟いた。

その様子が俺にはなぜか淋しげに見えた。


「でも――――――」


俺が言葉を続けるとイグサは興味があったのか、視線を焚き火の炎からこちらに向けてくる。

心なしか耳と尻尾が微かに揺れている気がしたがそれを言えばまた、イグサが怒り出すだろうから言わないでおく。


「でも、一つだけ覚えている事がある」

「それって?」

「いつも、母さんに連れてきてもらった場所で、一緒に遊んだ友達がいた事だ」


今、俺の頭の中ではその時の図が浮かんでいる。

つい先日、自分がこっちの世界出身だと知るまでは何か分からなかった記憶。

気持ちいい風が吹く森に囲まれた丘で、俺と名前も覚えていない三人と走り回っていた。

母さんと、他の三人の母親であろう人達も少し離れた木の下の影からいつも見ていた。


「その三人が今、何処で何をしているかは分からないけど。俺がこの世界にいるなら、いつか会えるよな」

「………」


シグレが少し照れくさそうに笑うとイグサも少しだけ笑みを零す。


「後もうちょっとで顔とか思い出せそうなんだけどな。何かきっかけがあれば……」

「大丈夫だよ」


イグサが微笑みながら焚き火を眺める。

ユラユラと揺れる炎を映しているイグサの目からシグレは目を離すことはできなかった。

それほどまでに、優しげで、綺麗だった。


「いつか会えるよ。例え、何年かかっても、シグレがその事さえ忘れなかったらさ」


言葉と共にイグサがニカッと笑ってから再び焚き火に木の枝を放り込む。

その火が爆ぜた音で俺はハッと我に返った。


「そ、そうだよな。俺さえ、忘れなかったらいつかきっと……」

「そ。いつかきっと」


イグサが目を細めて視線を湖のほうへと移す。

続いて俺も湖面へ視線を移した。

湖面は静かに漣を立てながら、夜空に大きく光り輝く月の幻影を映し出していた。

「最近、シグレ兄様とイグサ様のツーショットが多くないですか(イライラ」(アニー)

「ちょ、アニー。何か黒いオーラ出てるって!」(カディウス)


キミレキ豆知識:朧の里の名物は、マタタビ団子。



どうも秋月です。

今回は比較的(かなり)短い話になってしまいました。

それもこれも学校の宿題が多いのがいけないんでs(言い訳)

はい、早く終わらない自分が悪いのです。

それに加えて部活やら何やらで更新速度ががた落ちしています。

更には文章力までがた落ち(もともとない)

出来るだけ時間を取って余裕を持って書いていきたいとおもっています。

どうか寛大な心でこれからもよろしくお願い致します。

それでは!

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