第0項:序章
それはこの世界とは違う世界。
今、自分達が存在しているこの世界とは時や空間、次元までもが違う世界。
その世界のある高名な占い師は予言した。
『もうすぐ戦いの運命を左右する者が現れる。その者は漆黒の髪に琥珀の瞳、そして漆黒と金色で紡がれた衣服を身に纏っているであろう』
その予言は今現在、抗争している2つの国の王、更には兵士や民にまで広がった。
それぞれの国の王は国にその者を探すよう御触れを出した。
人々は予言に一致する者を探し始めたが、一向に見つかる気配は無く諦めるものが続出していた。
各国に漂う諦めの空気の中、1人の女性は執拗に探し続けていた。
高名な占い師はその女性にだけ、予言の続きを聞かせていたのだ。
『―――お主とその者は共に新たな歴史を創るだろう』
唯その言葉のみを信じて、彼女は馬を走らせる。
馬の蹄は急な山の坂道をもろともせずに爽快に駆け抜ける。
頂上に着くと、彼女は手綱を引き馬を止めてからスタッと飛び降りる。
空は既に白んできている。
山の頂上は風が強く吹いており、彼女の美しい茶色の長い髪も風に吹かれてサラサラと揺れていた。
「本当に見つかるのだろうか…。…いや、見つけるしかないのだな。この戦いを終わらせる為に…」
昇ってくる朝日を見つつ、彼女は急に掌に拳をポンと当てた。
「よし、まずはこの近くの温泉に入ろう」
彼女はフンフーンと機嫌良く馬を引きながら林の奥に入っていった。
これは、彼女ともう1人の青年の描く物語である。
初めまして。
秋月と申します。
今回は初の小説投稿となります。
まだまだ、未熟者ですがこれからよろしくお願いします。