プロローグ
白銀の髪を靡かせ、広い訓練場で動く少年、ライル=ヴァースは片手剣を振るい、鍛錬に励んでいた。
その様子に屋敷を行き交う使用人達が視線を向けるが、それは使える主に向けるものではなく、憐れみが篭ったものだった。
ライルは元々体力がある方ではないため、疲れてその場に女の子座りで座り込んだ。
しかし、片手剣は手放さなかった。
「はぁー、つかれたー」
透き通ったソプラノの声でそう呟くライルは片手剣さえなければただの美少女である。
(だめだな、全然体力が持たないや…)
しばらくその場で座りこんでいるとそこに1人の男が剣を持ちやってきた。
「ライル、座り込んで休むとは情けないな。
お前がいくら鍛錬に励んだところでその貧相な身体で騎士になれるわけがないだろう、無駄な努力とはまさにこのことだぞ」
そう手に持っている剣をライルに向けて言ってくるのは、ザイル=ヴァース、ヴァース、男爵家4男であり、髪は赤く、肌は茶褐色、身長は街を歩くと頭1つ飛び出し、腕や足は太く、引き締まった身体は騎士になるための素質を十分に有していることがうかがえた。
(あぁ座って休んでないで早めに切り上げとくんだった…。)
「お、お言葉ですがお兄様、私は何としても騎士になりお父様に認めてもらいたいのです、そのために鍛錬に励んでいるのです…」
そう弱々しく反論するライルに舌打ちをし、ザイルは、
「俺の助言を受け入れないとはいい度胸だな。ならば模擬戦で現実というものを見せてやるまでだ。」
そう言い、ザイルはライルから距離を取るために大きく後ろに下がった。
「どうした、早くしろ」
そうザイルに急かされて、ライルもビクビクしながら立ち上がり後ろに下がって距離を取った。
「先手は譲ってやるよ、こいライル」
(本当にやる気なんだ…。痛ぶるつもりだ…。)
「あ、ありがとうございます。ではいきます。」
(先手必勝、アレを使えば勝機はある…!)
そう思い、ライルは一歩踏み出した。