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なみだ石の伝説第5回■(第1部)最終回この地球に取り残された。 癒される事のない寂しさ。 私は、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の自分の歴史を思った。

なみだ石の伝説第5回ー(第1部)最終回

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所(1980年作品-2021改稿)

●http://www.yamada-kikaku.com/

yamadakikaku2009-youtube


第5回ー(第1部)最終回


私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。

残滓が飛び散っていた。

滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。


私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。

手になみだ石をにぎりしめていた。


 リーラが私の側まで歩いてきた。


 しばらくだまって私をながめていた。


 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」

 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」


 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。


「きようならミユー」

 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。

「さようなら、リーラ」


 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。

 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。

もちろん規則違反だ。

私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。


 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。


 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。

涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。


 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。

 

光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。

緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。

そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。


もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。


残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。

別れの花火のようだった。


なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。

私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。

思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。


この地球に、、一人、、取り残されたのだ。


癒される事のない寂しさ。


私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、

過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。


私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。

時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。

場所の記憶がある。

それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として

子孫を、、

急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを

思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。


「リーラ」と、思わず叫んだ。

叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、

それが「なみだ石」に染み込んでいった。


私は思う。私の途切れ途切れの記憶をたどり、私の子孫を訪れねばなるまい。

そこには長い道のりが感じられた。


(完)

なみだ石の伝説第5回ー最終回(第1部了)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所(1980年作品-2021改稿)

●http://www.yamada-kikaku.com/

yamadakikaku2009-youtube


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