閑話 とあるおちんぎんのファンタジスタ 後
前回投稿パートの後半を加筆修正しました。
読者さまにおかれましては、度々ご不便をおかけしますorz
魔法使いがどうしてこれだけ希少価値だと言うとですね。
まあ一人前になるまでにお金がかかってしょうがないというのもあるんですけどね、お金だけじゃなくて時間もかかるっていうのが問題なんですよ。
「あのうマドゥーシャさん。魔法使いとして一人前になるには、どれぐらいかかるのでしょうか?」
「成人して十の齢からはじめたら、だいたい魔法使いとして使い物になるのが五年ぐらいですかね。わたしがだいたいそれぐらいかかりました」
カサンドラ奥さまの質問はもっともです!
ッヨイさまやアレクサンドロシアさまは、たぶん特別です。
あのニシカさんだって猟師になって冬を過ごした数だけワイバーンを仕留め続けてきたから今があるんですよ。
人生五十年とちょっとという世の中で、五年は貴重ですからねえ。おちんぎんどれだけ稼げるかな?
「今や辺境におけるアレクサンドロシアさまは飛ぶ鳥を落とす勢いです。ご領地の家系が火の車ならばいざしらず、これからサルワタやゴルゴライにはいろんな人材が集まってくると思うんですよ!」
ちょっと調子に乗って語気を強めたところ、もの凄い勢いで先輩に睨みつけられてしまいました。
や、やり過ぎてしまったかな……
「それ以上は出過ぎた真似ですよマドゥーシャ、少しは控えなさい」
「ヒッ……」
「いやよい。大変興味深い話なので、気にせず続けよ」
ところが同じ魔法使いであるアレクサンドロシアさまから思わぬ助け舟を出してくださいましたよ。
失礼いたしました、なんてペコペコと頭を下げる先輩もめずらしい。よしよし。
「そうです奥さまがた。この計画の素晴らしいところはですね、魔法というのは素養や才能に左右されずに、ある程度まではお勉強と訓練で学ぶ事ができる点なんですよ!」
「確かにわらわなどは、母親から軽く指南を受けただけですぐに使えるようになった。あとは努力次第であったからの」
「それです! まさにアレクサンドロシアさまはご家族に魔法使いがいるという環境に恵まれていたからこそ、強力な魔法を使うためのチャンスと経験があったわけです。魔法使いの育成をしたいと以前閣下も仰っていましたし、ここはわたしに投資をしてみませんか奥さま方!!」
今度は慎重に言葉を選びながらわたしがそう風呂敷を広げてみたところ、先輩はいくらか懐疑的な視線を向けておりましたけれども、同じ魔法使いのよしみでアレクサンドロシアさまなどは乗り気であるらしいですよ。
お兄ちゃんもやるべきだと言っていたのなら、一考の価値ありだな。ッヨイと相談せよなどと言っていますからチョロいものです。
けれどもこの計画が本当の意味で素晴らしいのはですね。
魔法私塾ってのは、まず入門希望者からべらぼうな額の入学金をせしめる事ができる点なんですよ!
その上でさらに倍以上のお月謝を弟子は師匠に払い続けるというシステムなんですよ!
弟子は師匠が卒業を認めるその日まで、ひたすらお月謝を払い続けないといけないんですよ!
まあ魔法使いになりたいと志すのはお金持ちの子女か、よほどの覚悟があって立身出世を目指す人間ぐらいなんですけれどねえ。
それでも数人お弟子を抱える事ができたならば、これはもう素晴らしい金づるですよ。
「サルワタ貴族のみなさまは、こうして盟主連合軍の諸侯のみなさんと顔が繋がっておりますからねえ。入門希望者をお貴族さまから広く求めるのは、難しくないとわたしは思うわけです」
もっともらしい事を付け加えておくと、産まれた時からお貴族さまのみなさんが今度は反応するんですよ。
魔法使いは宝石よりも貴重なんて言葉をアレクサンドロシアさまは言いましたけど、まさに
「確かにその考えは必要だわよアレクサンドロシア義姉さま! 領内の民を育成する事は高貴な身の上の務めですものっ」
「ふむ。わらわたちはこの戦争をいかに乗り切るかについて、ついつい近視眼的にモノを考えてしまう傾向があるからの。その先を見据え、戦争が終わった後も厚い人材の確保をするという考えにおいて、これは早い段階から投資をするべきなのかも知れぬな。どう思うマリアツンデレジア卿?」
「五年、十年先を見据えてという事ですのよね。わたしたちの子供たちの代を考えれば有用ですのよね……」
ご自分の領地をお持ちになっている奥さま方にとって、やはり優秀な人材育成は切実な課題なんですよ!
ご領主さまも御台さまも、ラメエお嬢さまもティーカップをテーブルに置いて議論を始めています。
閣下はそういう意味で人材発掘というか、ヘッドハンティングにはご熱心な方ですよねえ。たまたまなのか、女性ばかりお集めになるという助兵衛さんですけどね。ふふふっ。
そう言う姿を身近で見ていれば、自分たちもかくあらんとお考えになっていた奥さま方の心に、わたしの提案は届いたと思ったのですが……
「そのう。その魔法私塾をはじめるとなれば、わたしの様な者でも習い事をできるのでしょか?」
「もちろんですよカサンドラ奥さま。家族のみなさんであれば入会金も大幅割引キャンペーンです!」
「聞きましたよう。前線視察でも火打石が無くても燃やしたり、水源の無い場所で水を出して見せたり」
「はいはいその通りですタンヌダルク奥さま。魔法使いならそんな事も朝飯前、おちんぎんのうちですからね!
「つまり魔法塾に入門すれば義姉さんやダルク義姉さん、ぼくでもそういう事ができるようになるんだね、マドゥーシャ? シューターさんをめろめろにする魔法を教えて欲しいな」
「それはもう弟子になられた奥さま方の努力次第ですけれど、熱心に続けていればできる様になりますとも! たぶん、きっと!」
これはもう奥さま方の御心はガッチリと掴んだも同然。
上機嫌にお貴族さまみたく小指を立ててティーカップを口元に運んだところですよ、
「……マドゥーシャ。お前は仮にも正妻であらせられるカサンドラ奥さまから、お金を取るつもりなのですか?」
「ぶはっゴホっ。と、とんでもありません。今なら入会金の大幅割引キャンペーンに続き、キャッシュバックサービスもやっておりますので実質無料ですよ!」
「くれぐれも浅ましい考えで、ご家中から金をむしり取ろうなどと考えては許しませんよ。お前はあくまでもご主人さまにとって献身的な奴隷妻である事を求められているのですよ」
「ど、奴隷妻?! もちろんです。ご奉仕大好きぃ……」
なるほどこれでわたしたち三人は弟子入り確定ですね。
よかったですねマドゥーシャさん、などと本物のお貴族さまだけにできる微笑を浮かべたカサンドラ奥さまが恐ろしかったですよ……
◆
利益にならない弟子がいくら増えたところで意味がありませんから、家族の奥さまたち相手の勧誘活動は止めておきたいものですねぇ。
本当は盟主連合軍のツテを使って奥さま友達に手習い程度に参加してもらうのが一番よいのですけど、これなら体験教室みたいに教える方も学ぶ方も楽ですし?
けれどもまあ、アレクサンドロシアさまやマリアツンデレジアさまがその気になった以上は、本腰を入れて魔法私塾をやるしかありません。
「その計画、ただちに内容を書面に纏めてわらわに提出せよ。ッヨイともよく相談して、領内一円から志願者を募集するとしよう。よいな?」
「かしこまりです! つきましては戦争奴隷の中に魔法使いがいたと思うんですけど、数名ほど教師としてこちらに融通していただければ幸甚ですっ」
「よい、お兄ちゃんとカラメルネーゼに相談して自由にせよ」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
アレクサンドロシアさまの鶴の一声で、閣下の許可を待たずに決定したわけです。
戦争が無い時の片手間で、冬の内に下準備をする。
後はシューター閣下におねだりをして、魔法使いの戦争奴隷を教師としてこき使うわけですよ。
わたしは奥様さまたちの魔法の体験教室をする他は、お金の勘定をしているだけでガッポガッポ。
ウシシ、わたし考えたでしょう。
愛人から成り上がるための七つのメゾットに書かれていた原理原則を、しっかりと実践するのみです!
◆
「聞いていますか閣下!」
「ちゃんと聞いてるよ。これからのおちんぎんについてだろ……?」
そわそわとした態度の閣下が、自分のお家であるにも関わらずゲストルームで周囲を気にしていると思ったら。
閣下は家族が寝静まる時間になってわたしを呼びつけたのです。
そうしていよいよ初夜を迎えるのかと思ったら、閣下は一向にわたしに手を出しませんからねぇ。
まさか女としての魅力が足りないのかと思えば何かタイミングを待っている様な感じでした。
まあ、そちらから来ないのなら、こちらからいきますよ!
「おちんぎんですけどね、おちんぎん。おちんぎんはこれから自分で儲けたぶんの中から、半分を頂ければいいなと思っているわけです」
「ある種のフィービジネスというわけか。自分では魔法を教えないくせに、上前をはねるにしては取り過ぎじゃないですかねえ」
まあそりゃ寝台の上で胡坐をかいた閣下が気の無さそうな返事をしたので、わたしは激怒しましたねぇ。
ちょっとわたしも緊張からかおちんぎんを連呼してしまいましたけれどね。
大切な事なのでこれからのわたしの遠大な計画と、おちんぎんについて説明をしておかなくちゃいけませんよ。
「閣下にこの身を終生捧げるという誓いをわたしは立てたんですよ! こうなれば後には引き下がれませんからねっ。稼げるところできっちり稼いで、おちんぎんを得るのはわたしの道理です。魔法使いの嫁はそんな安っぽい存在じゃないんですよ……閣下、聞いてます?」
「聞いてる聞いてる。しかしベローチュ辺りがそれを聞いたら、激高するんじゃないのかな。ん?」
「そ、そこでこのお金は閣下の懐に入るという体裁を取るのはどうですかね。妻のお金はこれつまり旦那さまのお金ですから、逆を返せば旦那さまのお金は妻のお金。うふふ、これなら先輩も難癖をつけてくる事はありませんよ」
何しろ先輩はご主人さま絶対主義者ですからねっ!
やっぱり気の無さそうなお顔をされて、閣下はヒラヒラと手招きをしましたよ。
こっちが真面目にお話をしているのに嫌な態度ですね……
プンプンと怒って見せたけれども、閣下は全然相手にしてくれません。
拗ねた顔のままで近くまで身を寄せたところ、意外にも閣下は気恥ずかしそうな顔をしてこんな言葉を口にしたのでした。
「……そんな事よりおちんぎん以外についてお話しておかないか。こいつを見てくれ、どう思う?」
「すごく、大きいですね」
何を言い出すかと胡乱な眼を向けてみると。
懐を探った閣下が取り出して見せたのは、燭台の灯が揺れる真夜中のゲストルームにありながら、その存在を主張してやまない大粒の宝石なのでした。
「ただの宝石じゃないですよね。装飾もついてるし……。あ、宝石の中に魔法陣が刻み込まれている?」
「うん、だからそれはそれなりの資産価値があるものだ。魔法発動体としての効力を持った宝珠なんだそうだ。きみのご注文通りいざという時の換金可能な価値があり、それでいて魔法発動体としても使える優れものという事で一つ」
「わたしのおちんぎん何か月ぶんでしょうか……?」
「おいおい、そういう事を聞くのはヤボというものじゃないか? 俺の故郷では、結婚を誓い合った相手に送る指輪は、おちんぎん三か月ぶんという事になっている」
「!!」
閣下の三か月ぶんのおちんぎんはこのサイズ!!!
「立派なおちんぎんですね!」
これが特別なご褒美としてわたしに下さるものなのですよ。でかい確信わたしのものです。
だからわたしはたまらず返してしまいました。
「もう頂いた以上はお返ししませんからね? 気が変わったと言って取り上げようとしても駄目ですよ。それよりわたし寒いんですけど。いつまでこの格好で過ごさなくちゃならないんですか。ひんっ……」
それじゃあファンタジックな夜を過ごさせてもらおうか、なんてエッチな発言をした閣下。わたしにガバリと飛びつくと、寝間着のローブを引っぺがされてしまいましたよっ。
まあこれもご恩に報いるためです、ファンタジックなご奉公をしましたけれども……。
ご恩と奉公(意味深)




