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異世界に転生したら全裸にされた  作者: 狐谷まどか
第9章 内政の季節が到来です
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閑話 王都への帰還 4

更新遅くなってしまい、申し訳ございません!

「計画はシンプルに行こうぜ。複雑な事をいきなりやろうとしても上手くはいかねえ」


 集まった俺たちを前に、ニシカ夫人は片眼をギロリとさせながらそう言って顔を見回した。

 場所は奴隷商会の応接間だ。

 腕組みをしたタークスワッキンガー将軍に冒険者たち、商会の従業員、俺とビビアンヌ。

 それからゴンザレスという名の鷹匠傭兵だ。


「黄色マントの連中は、市中伝令に魔法の伝書鳩を使っている。これはオレ様も詰所の裏手からハトが飛んでいくのを確認しているし、他の連中も周知の事だと思う」


 ドンとテーブルに手をついて見せたニシカ夫人は、そう言って広げられた市中地図のあちこちを示した。

 ブルカ領兵の詰所が配置されている場所で、そこにニシカ夫人の手によって丸がチェックで入れられている。


「連中の連絡網はわかりやすい。朝夕に定時連絡の伝令が政庁から詰所や各門に向かって走っているが、それとは別に、何か異変が起きた時は魔法の伝書鳩が飛ばされる。例えば街中で暴動が起きたり、あるいは秘密工作員の捕り物があったり」

 

 そうした場合には応援を集めるために、伝書鳩が飛ばされるわけである。


 これこれこの数の兵士をただちにどの場所に送り出せ。

 発展規模にあわせて複雑な市街地を形成したブルカでは、人間が伝令で走るよりも、頭上を飛び交う魔法の伝書鳩を使った方がより速い。

 人間であふれる大通りを軍馬で駆け走らせるのは危険極まりない行為であり、もしそれが行われる時は、それこそどこかで謀反が起きたときだろう。


「そこでオレたちは、現在人間の出入りが最も多く往来に紛れ込みやすい東門を使って脱出する事を考えているわけだが、」

「ま、待ってくれニシカ姐さん。東門は、それこそ前線に向かう兵士の往来が一番多い地域じゃないか」

「馬鹿野郎。だからこそオレたちはそこを通過するんだよ。あそこを通るのであれば、労働者や冒険者どもの出入りが多くても、目立ちゃしないんだよ」


 ニヤリとして見せたニシカ夫人は、そのままこの奴隷商会の大番頭を務めるゴブリンの男を見やった。

 無言で頷いてみせたスピーディーワンダーが、黙って奴隷に着用されるへそピアスをいくつか差し出す。


「市壁を越える事を考えたんだがよ。気付かれなきゃいいが、気づかれたら最後、どこまでも連中の追手がしつこくついてくる可能性がある。だから将軍サマにはコイツを着用してもらって、奴隷身分の労働力として戦場に向けて出発してもらう事にする」


 もちろん本物の奴隷になるわけではなく、カタチだけな。

 そんな風にニシカ夫人は面白がって言っている態度を見せたが、へそピアスと一緒に置かれた奴隷契約書の類は本物だ。

 しっかりと法規定にのっとっとた奴隷身分を表す記述があり、後はワッキンガー将軍が署名をすれば効力を有すものだった。


「つ、積荷を奴隷にして運び出すとか、どうかしているぜニシカの姐御」

「そうだよ、将軍さまそれでいいのかい?!」

「すでにへそピアスはスピーディーどのに付けてもらっているからな。問題はないぞ」

「そこかよ?!」


 サルワタの冒険者たちはニシカ夫人の提案におおいに驚いていたが、それよりもワッキンガー将軍が平然と服をめくって腹を見せたところに俺は衝撃を覚えた。


「聞けばカラメルネーゼ商会で、実際に戦場へ送り出す労働奴隷の発注がブルカ政庁からあったそうではないか。公正明大に言って、俺たちが奴隷たちに紛れ込んで戦場へ送り出されるのは理に適っている」

「公正明大かどうかではないぞ将軍、王都中央のお貴族さまが奴隷になったという事実が問題なのだ」

「王都に帰還してからでも、街を出てからでも、ヘソピアスを取ってしまえば何の問題もないのではないか」

「そうではあるが、貴族としての体面……」


 俺はその事を危惧して将軍に食い下がったが、彼は全く気にしていない様子で腕組みのまま俺を見返してきた。

 ニシカ夫人も「なあ面白い作戦だろう?」という顔を崩さず、作戦の続きを説明しようと身を乗り出したのだが、


「貴様が自分にとっておきの策があると言っていたのは、この事か?」

「そうだぜ。ついでに詰所間で飛び交っている伝書鳩から警備配置状況などを失敬すれば、どのタイミングがいいかもわかりやすい。騒ぎのタイミングならより警備も手薄なんじゃねえか?」

「騒ぎ、だと? この前の工作員捕り物の様なタイミングか?」


 そうだとうなずいてニシカ夫人は市街地図の一点を示す。


「スピード野郎が言うには、団体さんの労働奴隷ともなれば顔なんかイチイチ確認してられなくて、大切なのは管理者と書類の方になるんだってな?」

「はい、通常ですと奴隷商人が移動の際は奴隷の数、奴隷の所有者、奴隷の現場監督責任者が何者であるかの書類が非常に重要になってきます」

「すると、書類さえしっかりとしていれば、案外あっさりと通過しやすいんだな」

「そうですね。この場合ですと特にご領主さまからの命令で労働奴隷を派遣する仕事を請け負ったという事になりますので、恐らくは東門を出入りする軍勢と同様に、案外スムーズに移動する事が出来るかと思います」


 今回は十数名をカラメルネーゼ商会から送り出す予定なので、その中にタークスワッキンガー将軍そのひとを紛れ込ませておくのも難しくないという事だ。


「近頃は頻繁にアジトの摘発やらがあるので、タイミングを合わせるのは難しくないんじゃねえか?」

「た、確かにそれはそうだが。公正明大に言って宮廷の仲間を見殺しにするのは後ろめたい行為なのではないかと……」

「馬鹿野郎!」


 ニシカ夫人の説明に、ここにきて難色を示したワッキンガー将軍である。

 しきりにブルカ市中へと密行している宮廷の工作員たちは、王国ブルカ兵団の残党をどうにか助け出そうとしているのか、活動を活発化させて犠牲を強いられている。

 将軍はそれを見過ごすのはどうかと考えて、ともすれば自分から連絡を取るべきではないかと考えているのだろう。


 すると怒りを露わにしたニシカ夫人が、激しく巨乳を揺さぶってテーブルを叩いた。


「いいか。公正明大に言って今手前ぇがやらなくちゃなんねえ事は、王都に戻って現状をつぶさに報告する事じゃねえのか。ん?」

「そ、そうだ。しかし、」

「しかしもヘチマもねえんだよ! お前ぇが密偵ひとりの命のためにワッキン自身に何かあってみろ、そうしたら市中で今も潜伏している王国兵団のお仲間はどうなるんだ? いつか来る援軍のために隠れ潜んでいるんだろうぜ。公正明大にその事も手前ぇは受け止めるのが、将軍サマってもんだろう!」


 怒声を張り上げてそう喚き散らしたニシカ夫人に一同が恐れおののいた。

 飛龍殺しの鱗割きという通り名ではないが、ワイバーンの咆哮これほどではないというぐらいに居合わせた人間は委縮していた。

 将軍は、ぐぬぬとか公正明大とかブツブツ言っているがそれ以上反論しなかった。


「よしじゃあゴンザに質問だ。あんたの相棒はイヌワシの親戚と言ったな、街での狩は得意な方か?」

「街は森と違って視界が開けている。可能だ」

「特定の伝書鳩を狙って捕まえる様に指示を出すことは可能だったりするか? いやオレの旦那が飼っているバジリスクのペットはそういう事が理解できるんでな」


 ニシカ夫人の質問に、いちいち「可能だ」と返事をしているところを見ると。

 鷹匠傭兵のゴンザレスが飼っているオオイヌワシというのは、どうやら魔法の猛禽なのかも知れない。


「ところでバジリスクというのは、あのバジリスクの事か?」

「そうだぜ。あかちゃんの時に、バジリスク討伐で捕まえて育てているんだよ旦那が。こいつが寝小便をするようじょに懐いていてるんだ――」


 ワッキンガー将軍は腹を決めたらしく、ビビアンヌに手伝ってもないながら奴隷契約書に血判のサインを記したらしい。

 冒険者たちはバジリスクという単語に驚く鷹匠を見てニヤニヤしている。実際にニシカ夫人が討伐した事を知っているから余裕があるのだろう。


「よし、伝書鳩は確実な通信手段じゃねえからこそ、定時連絡の伝令も飛ばしているはずだ。しばらくはバレねえだろう。何度か鳩をかっさらって情報を盗み見して、次の捕り物が予定されているタイミングで、門を出る事にしようぜ」


 計画の説明をしていたニシカ夫人がパンパンと手を叩くと、そのタイミングで豊かすぎる胸がよく揺れた。

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