わけのわからない毛玉に魔法少女にされちゃいました。(美少女戦士⇒魔法少女)
俺は今困惑している。
周囲の人間からは、お前は分かりづらいとよく言われるが。
確かにあまり表情が動かないとは思う。
べつに意図してそうしているわけではなく、昔からこんな感じだった。
小さい頃はそれでよく構われたりしたけど、苛められたりしたことはない。
容姿はまあ普通?
かっこいいと女子からもてはやされたことはないが、何度か告白されたことはある。
現在高校2年。
友人も多いほうではないかと思うし、皆いいやつばかりだ。
時々喧嘩腰に絡んでくる奴もいるが、適当に相手しているうちになんだか懐いていることが多い。
理由は分からない。なので放っておく。友人が多いことはいいことだしな。
話は戻り
今俺の目の前に変な毛玉が降ってきた。
学校帰り、ふと空を見上げたらなんか見慣れない船のようなものが見えた気がした。
じっと見てみたが見えたのは一瞬で、そこには雲がしずかに流れているだけだった。
気のせいだったかなと、視線を戻そうとしたら何かがフワフワと降ってくるのが見えた。
今度は気のせいではなく、確実に俺のほうへと落ちてくるフワフワ。
そのまま視線を外すことなくそれを見ていたら、結果的に今現在俺の足元まで来て止まった。
白いフワフワ、俺はその毛玉をじっと見た。
なんか、かすかに動いているような気がする。
しっぽのようなものが付いていて、ふわふわと揺れているようにも見える。
もしかして生き物?と思ったが、生き物が空から降ってくるわけないし。
とりあえず、気になるので指で軽くつついてみた。
ぱちっ
つついた瞬間、白い毛玉の中心に黒いビー玉みたいなものが二つ現れる。
これは、目だろうか・・・っていうか、目だろう。
なんか瞬きしてるっぽい。
うん。なんか気持ち悪いし、見なかったことにしよう。
俺は決意すると何事もなかったようにその場を離れようとした。
「ちょっと待つにゃあ!!人間!」
なんか、呼び止められたような気がする。
いや・・・空耳だろう。
今日は陽気がいいからな。
「おいにゃ!!うちを無視するにゃ!」
先程までいた場所からいつの間にか俺の目の前へと移動している毛玉。
語尾が〝にゃ″なのが気になるところだ。
にゃんこなのか?これは・・・
じっと見つめると、毛玉はパチパチと瞬きをしてふわふわ漂いだす。
「そんにゃに、じっと見つめられたら照れるにゃ。」
「そうか。じゃあ俺は帰るとしよう。」
もじもじ?する毛玉を無視し、再び歩き出すが毛玉も慌てたように俺の後をついて来る。
「待つにゃ!これはにゃにかの縁、うちはお前に決めたにゃ!」
突然よくわからないことを言う毛玉。
一体何を決めたというのか。
気にはなったが、なんだかめんどくさそうな予感がしたのでスルーだ。
「こらっ!人間、無視するにゃ。うちはこの星を守る女神に仕えている天使にゃ!!」
天使・・・?
天使・・・??
ふっ
「お前失礼だにゃ」
俺の中の天使像とあまりにも違っていたために、つい鼻で笑ってしまった。
毛玉は毛を逆立て威嚇してくる。しっぽがせわしなく揺れているのがかわいいと思えなくもない。
「さっきお前が見た船は天使たちのパトロール用の船にゃ。いつもの日課でパトロールしていたら、この星には居ないはずの悪魔の気配を察知したにゃ!!にゃにを企んでいるのかはわからにゃいが、よくにゃいことであるのは間違いにゃい!捕まえようとしたけど、奴めさかにゃ屋の前を通ったにゃ!」
・・・・おさかなに目を奪われているうちに逃げられたと。
にゃんこか!!
「敵もにゃかにゃか手ごわいにゃ!うちらの習性を熟知しているにゃ。」
いや、もっと集中しようぜ。
こんなうっかりにゃんこに守られてる地球大丈夫か!?
魚>地球
やばすぎるだろう・・地球。
不憫な目でにゃんこを見ていると、にゃんこは何やら興奮してふわふわしている。
「そこで、敵にまだ知られていない地球人を対悪魔戦闘員としてスカウトすることにしたにゃ!!」
今日の陽気じゃ頭にお花が咲いちゃっても不思議じゃない。
たとえそれが人外だとしても、そうかわらないだろう。
「おい!!そんな目で見るにゃ!!うちは本気にゃ!」
「ははは。俺がでかい毛玉くっつけてる人間だと思われるから離れてくれないか?」
「ほんと失礼にゃ!!こうなったら実力行使にゃ!!」
突然毛玉が俺のほうに向けて光を放つ。
キラキラとした強い光が俺の身体にまとわりついたかと思うと、次の瞬間浮遊感に襲われる。
全身に纏わりつく違和感。
きつい光に閉じていた眼をゆっくりと開く。
なんか・・・・股がすーすーするんだが。
ちらりと下へ視線を向けると、ほっそりとした白い脚。
俺は制服のズボンを着用していたはずだが・・・
なぜ?
今はぎりぎり尻が隠れるくらいのミニスカート。
ひらひらと風に漂い、うっかりしてると中が丸見え状態だ。
次に手を見てみるが、同じようにほっそりとしている。
そして恐る恐る胸へと視線を下す。
でかっ!!
なにこれ!?
俺メロン詰めた覚えないんだけど!?
自分の身体に起きた突然変異に静かに動揺する。
「お前、あんまり驚かないのにゃ?つまらにゃいにゃ。」
「いや、精一杯驚いているつもりなんだけどな。」
「まったくそうは見えないにゃ。とりあえず、お前には女神の加護を与えたにゃ。この身体は悪魔からの攻撃も時々跳ね返す程の力を持つにゃ!」
「いや、時々って!?絶対ではないのか!?」
「贅沢言うにゃ!!おそらく2割の確率にゃ!」
「女神の加護すくなっ!!それほとんど守られてないだろう!?」
「女神さまはツンデレにゃw」
「いや、意味わからん!お前ら地球守る気ないな!?」
なんせ、お魚に目を奪われちゃって敵を取り逃がすくらいなんだから。
「油断したにゃ。敵も頭がいいにゃ。」
いや、敵もびっくりだろうよ!
「それより、お前はこれから地球を守る戦士になるにゃ!」
「っていうか、俺男なのになんで女になってんの??胸が邪魔なんだが・・・」
改めて自分の身体を見てみると、呆れるほどに薄着??
これって戦闘服??にしては露出度高くないか??
胸とか半分でてるし、腰回りのひらひらは風に煽られれば尻が見えるだろうし。
なんか武器とかもなくない??
「どうせ、破けるにゃ。でも修復能力は一流にゃ!次に変身した時は元通りにゃ!」
「破けるの前提!?エロゲーか!!つか、元に戻せ!!」
「一度貰った加護は女神様しか外せにゃいにゃ。」
「滅びろ!!」
「さあ、地球人覚悟を決めるにゃ!!敵を倒せば元の姿に戻れるにゃ!!」
「知るか!!つか、悪魔なんて見えん!!」
普段の自分とは思えないくらいに感情が出ていると思う!
道路にあるミラーに映った美少女が自分だとは信じがたい・・・が、現実だ。
俺は美少女を彼女にしたいと思ったことはあっても、自分がなりたいと思ったことはない!
「ふざけるな!早く元に戻せっつの!!」
「嘘じゃにゃいにゃ!!悪魔を倒したそのエナジーで、肉体が元に戻る仕組みにゃ!こうしている間にもたくさんの悪魔が地球に侵略してきているに違いにゃいにゃ!!」
毛玉は真剣に言っているのだろうが、毛玉にしか見えない。
「じゃあ聞くが、その悪魔とやらはどうやって探すんだ!?なにかアイテムがあるのか??」
「そんにゃのうちが知るわけにゃいにゃ。お前が自然と感じるんじゃにゃいのかにゃ?」
「毟ってやる!!この悪魔め!!」
毛玉を鷲掴み、その毛を思いっきり引っ張る。
「いたたたたたたっ!!やめるにゃー無礼者!!女神さまに言いつけてやるにゃ!!」
「それは好都合だな。俺には地球を守る程の正義感はないから、不適任だと伝えろ!」
ポイッと毛玉を放り投げる。
「お、覚えてろにゃー!!」
「悪人の定番の名台詞だな・・・」
あの毛玉が女神とやらに言えば、すぐに元に戻るだろう。
どこからどう見ても、公共の場でコスプレをしている残念な美少女。
俺・・・なにやってんだろ・・・
時々通る人が俺を生暖かい目で見るけど、無心で空を見上げる。
シャッター音なんてしてない。気のせいだ。
この零れ落ちそうなメロンを注視されていても気にしない。
これは俺のじゃないから。
幻だ!!
幻覚なんだ。
しばらく無心で空を見上げ続けていたら、再び毛玉が降ってきた。
「女神さまはお昼寝中だったにゃ。」
「・・・・・」
俺は無言で毛玉を鷲掴み、ギューギュー毛を引っ張ってやった。
「ひどいにゃ!痛いにゃ!うちじゃにゃくて、悪魔にその熱い気持ちをぶつけるにゃ!!」
なにやら毛玉が喚いているが、俺は地球人なのでにゃんこ語は理解不能だ。
これから俺はどうやって生活していけばいいんだ・・・
毛玉を毟りながらぼんやりとそんなことを思った。
お目汚し失礼いたしました。閲覧ありがとうございます。