表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食べ物で遊んではいけません。  作者: 九重センジ
第一章・デニス王国
3/14

こちらデニス王国商店街

俺が高原から見下ろしていたデニス王国は、交易が盛んな国であった。

何でも、他の国では行われていない「自由取引政策」というのが行われているためらしい。ぶっちゃけて言えば、織田信長の楽市楽座と似たような感じだ。


そんなワケで、俺はビザなしパスなし検査なしで入国できた。正に隣町に行くような感覚。わぁい便利便利。


入国してみると、さすがは交易の街と言うべきか人の髪色も顔つきも多種多様だ。ついでに言えば猫が二足歩行してるア○ルーっぽいいのとか、緑色のやたらゴツい鬼とかもいる。ってかあれモンスターだよねどう見ても。

で、その鬼に声をかけられた。


「そこの兄ちゃん!ちょっと見ていかないかい?」


…うん、店に入ることにしよう。

べ、別に「断ったら殺されそう」なんて考えてない。そんな事これっぽっちも考えてないから!!


「こ、ここは何の店ですか?」

「兄ちゃん、ビビってんのか?俺ごときを怖がってるようじゃ、世の中渡っていけねぇぜ!あ、ちなみにうちは雑貨屋な!」


ガハハと笑いながら俺の肩を叩く鬼の店主。あの、痛いです。


「すみません…」

「いーんだ、気にすんな。俺も来たばっかりの頃はみんなにビビられたよ」

「おじちゃん白魔石ちょうだーい!」

「はいよ、25ピーリな」

「ありがとー!」


ほくほく顔で駆けていく少女を眺めながら、鬼店主が語る。


「俺も今じゃすっかりここの一員だ。あの娘も常連だしな」

「へぇー…」

「それにしても兄ちゃん見かけない顔だな。どっから来たんだ?」

「日本、です」

「聞いた事ねぇな…。もしかして『影の大地』の出身か?」

「影の大地?」

「そう。西の方に海を隔てて大陸があるんだが、そこの開拓が全く進んでなくてな。人が住んでるらしいって噂は聞いたんだがその土地の事をだーれも知らないんだ。だから交流もなけりゃ戦争もない」

「開拓に行った人は?」

「誰も帰ってきてねえよ。情報は全部遠目に島を見た船乗り達の証言さ。今回の遠征も、誰も帰ってこねえだろうな…。

ま、それは置いといてだ。兄ちゃんこれからどこ行くんだい?」

「あるものを探して旅してます」

「旅かぁ…そだ、これなんかどうだい?」


そう言って鬼の店主は、一冊の本を取り出してきた。辞典のごとき厚さ、そして重さだ。


「これは…?」

「『旅人のためのサバイバル辞典』だぁよ。これが旅人や行商人に好評で」「くださいっ!」

「お、おう…100ピーリだぞ」


パンフレットで言語知識を学んだ際に一緒に覚えたのだが、この世界では鉄貨、銀貨、金貨が使われている。鉄貨1枚で1ピーリ、銀貨1枚で100ピーリ、そして金貨一枚で10000ピーリだ。

銅はこの世界では貴重なため、金よりも高価なのだそうだ。


「あと…旅のオトモならこれだ。『麻痺杖(スタンタクト)』。あらかじめ魔力が込めてあって、モンスターに遭った時にこいつを使えば、ほんの少し動きを止められる。その代わり一回使い捨てだけどな」

「それも買います」

「まいど、5ピーリな」


魔法の使えない俺にとって自衛手段の有無は死活問題。異世界に骨を埋めるのも悪くはないが、こっちに来て数日で死亡なんて事態は避けたい。


購入後店を見て回った俺の目に、古びたネックレスが留まった。


「なになに…『真紅の契りコントラクト・クリムゾン』?」

「そいつはとある客が『私にはもう必要ない』って売ってくれたんだが、店に並べても誰も手を伸ばそうとしねえ…いや、誰もこいつに気づきすらしねえんだ。ウチにネックレス買いにきたやつも含めてな」

「………。」

「もしかしたらこのネックレス、お前に縁があるのかもしれねえな」

「…買います。いくらですか?」

「50ピーリ。安くしとくぞ」

「ありがとうございます。では、俺はこれで」

「おう、いつでもらっしゃい!」


転成直後は真上にあったはずの太陽は、赤くなり始めていた。

傾いた陽を浴びながら、俺はある計画を立てた。


王宮で稼ごう。その金を使い情報を集めるのだ。宮廷お抱えの料理人(?)にでもなれば一定の金銭が手に入る。旅はできなくなるが、この国(デニス)は人の出入りが激しいから情報を集めるのは容易いだろう。必要に迫られた時は仕事を辞めれば良い。本来の予想とは違うが、怪物退治だけがノウじゃない。


「カゼノタミだ!」

「カゼノタミが来たぞ!」

「急いで家の中に入れ!」


何だ…?何が起きている…?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ