壊しただけ
殺されたんだ。俺の父親はさ。俺が5歳のときに。
君は16歳まで父親がいたんだから十分だよね?
別に復讐のために生きていたわけじゃない。
ただ、18歳になる前にやっておかなければいけないこと?
そんな感じに思ってた。
母親はさ心が弱い人で、頑張って俺を育ててくれたけど壊れちゃったんだよ。
子供がいるのに壊れるなんて無責任だと思う?
俺は当然だと思ったね。
だってお父さんと愛し合って俺が生まれたんでしょ?
そんなに愛していた人が突然いなくなったんだ。しょうがないよね。
「ねえ、妹と姉どっちが大切?」
僕はサバイバルナイフを片手に足元に置いた彼女たちを見下ろす。
恐怖で震えている二人。
向かい側には重いソファーに括りつけられた彼女らの両親。
ウンンンーーー!!
ウガァアアァ!
何言っているか分からないよ?
ああ、そのタオルが邪魔なんだね。
母親の方はうるさいからそのままでいいや。
女性の叫び声って耳にコビリついて本当に嫌。
ねえ、どっちが大切なの?
「あれは交通事後だ!!」
「こんなことは止めて私たちを離せ!」
事後なら殺していいんだ。
僕もね、実は同じ交通事故を考えていた。
でもさ、僕とお母さんの気持ちをよく考えたらそれじゃあなーって。
ブツリ……。
「うがぁぁぁ!!!」
赤い水が彼の腿から零れてきた。
汚らしいな。
早く答えて?
どっちが大切?
ああ、彼女らの意見も聞きたい?
「「おとうさん!!」」
「足が!」「助けて!死にたくない!!」
妹さんの方は死にたくないみたいだよ?
あはは、そうだよね死にたくないよね。
おねえちゃんはどう?
正直な話をしようよ。
「妹を……テ」
うん?
「妹を……して」
ふふ。
「妹を殺して!!!」
「お姉ちゃん!!何言ってんの!?」
あははははは。
正直なお姉ちゃん大好きだよ。
ほんとうに君は良い子だね。
そうだよね、いつも愛情は妹が受け取って。良い成績、品行公正どれも素晴らしいのにいつも馬鹿な妹が両親の愛情を奪っていくんだろ?
でお父さん?痛みは慣れたでしょ?
どっちを殺したい?
「ふざけるな!」
スブーーゥ!
がぁぁぁ!!!
両方ころすよ?
「もう、止めてくれ……」
「助けて、助けて、助けて」「嫌、お父さん死にたくないよ!死にたくない!!」
ウンーーーーー!
アアアーーー!
何奥さんうるさいよ?
何か言いたいの?
「ミキを殺せばいいのよ!!」「ミキさえいればいいの!」
「「お母さん!!」」
二人の叫ぶ、歓喜する声は交差した。
あーあ、お姉ちゃんやっぱりいらないんだ。
ふふふ、かわいそーに。
お父さんもそれでいいの?
姉妹を視界に入れないように頷く。
卑怯者め
良いよ、両親がいらないって言うなら僕が開放してあげる。
ぶちぶちぶち!
「やあぁぁぁ!??」
さて、これで君は晴れて自由だ!
芋虫のように転がっているご両親や反吐が出るほど震えている妹さんとは違うね。
両手は解放したんだ。後は何とか出来るでしょ?
僕はまだやることがあるんだ。
ズシュ!
ブジュ!
「うがあ!!あがああ!!」
痛いよね。苦しいよね。
右足、左足、右手、左手
痛いよね。ふふふふふ。
ねえ、こんな僕の精神は正常だと思うかい?
異常だよねー。
ズシャああ!
裁判に鑑定に有利なように動かないといけないから、案外縛りがあるんだな。
ねえ、お姉ちゃん自由になったんだから僕の行動を止めていいんだよ?
首を振ってどうしたの?
ああ!君を殺せって言った両親だもんね!助けるわけないか!
あははは、本当に君は良い子だよ。僕は君の事なら好きになれそうだ。
鑑別所から出てくるまで待っていてくれるかな?
ああー、良かった。
じゃあ、君の手で捕まえてほしいから、そろそろ電話してくれないかなあ?
お父さん死んじゃうからさ。
顔を赤らめちゃって可愛いな。
僕はこうして、一軒の家庭をぶち壊した。
でも、僕は誰もころしていないよ?
なんたって、やさしいからね。
僕はただの傷害罪で実刑3年を求刑された。
まあ、妥当な数字。
そして今日ここから出ていく。
彼女は外で待っているはずだ。
あの日僕に感じた熱情を求めに……。
ハッピーエンド!