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間に合ったからこその選択肢


 ブルービアン大公領。

 そこは国内で首都に次ぐ第二位の都市であり、この非常事態にあっても華やかさと平穏を保っている。


 大公領であるからこそ街が豊かということも間違いないし、天下泰平の時代から多くの『信頼できる出自の実力者』が大勢集まってきたことも間違いではない。


 だが最たる理由は、この地を治める大公、アレス・ブルービアンが最高ランクの千里眼を持っていることであろう。


 災害が始まって当初こそ、広大な領地には多くの黒の泉が沸き上がっていた。だがアレス大公がそれを速やかに発見し、優秀な兵士たちを派遣。各地へ被害が出る前に黒の泉をすべて破壊させたのである。

 そのあとも周辺の領地に兵を派遣し、速やかにモンスターを掃討させ続けた。


 多くの傑物を抱える大公であるが、最高の傑物は大公本人である。

 英雄英傑たちは口々に語り、各地の領主たちは神のごとく崇めていた。

 結果として大公領の人々は、予言通りに黒の泉が湧いたことを迷信と考えるほどである。


 多くの地がモンスターによる災害に焼かれる中、平和ボケを維持している大公領。

 フレイヤー一行がその城にたどり着いたとき、あきれるよりもまず安堵していた。


 世界中が戦火に焼かれ、この世のどこにも平穏など残っていないのかもしれないと疑っていた。

 そんな中、繁栄を維持している街があるというのは過酷な旅を経てきた一行にとって間違いなく救いだった。


 危機の臭いがない街で、ようやく休める。

 誰も助けを求めていないし、感謝してこないし、モンスターが襲ってくることもない。


 フレイヤー一行は街に入って一日目に、まず心身を休めてほしいと言われて最高級の宿に一泊した。


 最高級の宿は本当に最高級だった。

 壊されて復旧中とか、大量の避難民がひしめいているとか、略奪されて金品が奪い去られたあととか、食料が届いていなくて従業員も飢えているとか、そんなことはなかった。

 最高級の宿は、最高級のクオリティを維持していた。


 一行はその一泊ですっかりリラックスしていた。

 夜中に目が覚めることはないし、なかなか寝付けないということもなかったし、なんなら全員寝坊して互いに大笑いしてしまったほどである。


 まだ任務は残っているのに、もうすっかりことが終わった気分にすらなっていた。

 フレイヤーですら、もう数日休みたいと思っていたほど、快適な時間だった。


 とはいえ、これだけ歓待してくれた大公が、直接会いたいと言ってきたのである。

 これに応じないわけにはいかなかった。フレイヤーたちは大公の城へ入っていった。


 皇帝の城と比べても遜色のない、大公の城。

 その内部に入っていく一行は、リラックスしたままであった。


「今更だけど、姫様が皇帝の娘なんだなって思いましたよ。オイラも侯爵の息子になりましたけど、ここまでの城にははいったことねえもん」

「オレも皇帝の一族なのだけど、忘れてないかしら!? オレもウルフドッグなのよ!」

「わりい、わりい。はははは!」


 大公の城の中は、意外なほど人が少なかった。

 案内をしてくれる人物も厳粛な雰囲気ではなく、せいぜい観光案内のガイドさんていどであった。


 面倒な手続きやボディチェックはない。

 もはや大公の城に入っているというよりも、城を観光しているかのようであった。


「大公閣下は懐が深いわねえ。いくらアタシたちの身元がはっきりしているからって、こんなに素通ししてくださるなんて。皇帝陛下も一緒なのかしら?」

「いいや。さすがにボクの父はこんなに緩くないよ。実の娘でも、遠くから帰ってくればボディチェックぐらい受けるさ。大公閣下は最高ランクの心眼もお持ちだというし、一目見るまでもなく分かっているんだろうね」


 なにより一行の心中を軽くしていたのは、フレイヤー一行全員で歩いていることである。

 男爵、子爵の子息や在野の武人、賢人。

 フレイヤーの仲間というだけで大公に会えるはずもない身分の者も、全員一緒であった。


 これでまじめな話、大事な話をするわけがない。

 なにかパーティーでも催して、今後も頑張ってくださいねと送ってくださるだけだろう。


 この平和な街の雰囲気で、平和ボケを取り戻していた一行は、大公アレス・ブルービアンの前にたどり着いた。


 そこは礼拝堂のように、天井が高く、ステンドグラスなどで外の光が入ってくる空間であった。


 男子としては背が低いアレス大公は、華奢な体格を露出の少ない服で包んでいる。

 特徴的なのは、両眼をしっかりと包帯で隠していることだろう。

 あまりにもしっかりと巻きすぎて、額まで隠れてしまっている。


 そんな彼とは対照的に、大公の妻である女騎士は重装甲に身を包んでいた。

 今にも戦いが始まりそうな雰囲気を持っており、彼女一人だけで場が緊張するほどである。


 とはいえ、大公の妻が護衛を兼ねているのなら、なんらおかしなことではない。

 警戒されて当然だよな、と誰もが納得して黙っている。


「皆様、よくぞここまでたどり着いてくださいました。昨日はよく休めたようで何よりです。一週間(・・・)……やはり時間に余裕があるのはいいことですね」


 アレス大公は高い声を発した。


「私の心眼によると、皆さんは歓迎パーティーをお望みの様ですが、それは後で準備させていただきます。今は私の話を聞いていただけると幸いです」


 顔の上半分を隠しているのでわかりにくいのだが、それでもさすがは最高の千里眼の持ち主。

 この場に集まっている者の気持ちなど分かっている様子である。


「皆さんはこの国に伝わる建国神話の一説……二千年後に恐怖の魔法使いが復活し、世界をモンスターで埋め尽くす、という警告はご存じですね?」


 フレイヤーを含めて、学徒兵たちは入学式に聞いていることだった。

 もうすぐその二千年目であるという事も含めて、識者であれば知っている者がほとんどである。


「その恐怖の魔法使いが本当に復活すると思っている方はいらっしゃいますか? いらっしゃらないようですね」


 話を聞いてもらう、というのは本当に話を聞くだけであるらしい。

 彼は話を進めていった。


「無理もないことでしょう。黒の泉は確かに伝説通りに現れましたが、世界を埋め尽くすほどではありません。むしろ黒の泉が実際に存在したからこそ、災害の擬人化……大きな嵐の災害を風の神が怒ったと記したようなものだと考えるのが自然です」


 彼の話を聞いて、フレイヤーを含めて全員が「それはそうだろう」と賛同していた。


 伝説通りに黒の泉は実在した。

 多くのモンスターが湧き続けている。


 彼らはいくつも破壊してきたし、それから湧いたモンスターも大量に倒してきた。


 だからこそ思うのだ。

 こんなことを一個人ができるわけがないと。


 モンスターと戦い、レベルが上がり、ランクが上がっていき、アビリティが増える者もいる。


 だがだからこそ個人の限界も見えてきた。

 恐怖の魔法使いなんてものが存在するとは思えない。

 一人の人間が黒の泉を生み出しているとは思えないのだ。


「皆さんは正常な人間です。どうか自信を持ってください」


 話の流れからすると意外だったが、アレスはそんな心証を全肯定していた。


「初代皇帝の残した石碑に何と書いてあったとしても、それをいちいち真に受けて、それを前提に行動する方が間違っているのです」


 一同、何が何だかわからない。

 論旨がわからないのだ。


 と、思ったところで「もしかして終末教団の話かな?」と連想した。


 終末が本気で来ると思って、自暴自棄になって各地を荒らしている輩である。


 それを討伐しろ、という依頼であろうか。


「違います」


 思っただけなのに否定された。

 この調子だとついうっかり失礼なことを考えることもでき無そうだった。


「ご安心ください。私は寛大です。この場で貴方たちが下世話なことを考えたとしても、それをいちいち咎めません。妻は怒るかも知れませんが」


「私は怒る!」


「だそうです」


 じゃあ駄目じゃねえか。

 大公夫人を怒らせたら、フレイヤーやマルデルですら危うい。

 みんなで下品な考えをしないようにする、という面倒な状態になっていた。


 だがそれも、ほんの一瞬で吹き飛ぶ。


「本題に入りますね。もうすぐ恐怖の魔法使いが完全に復活し、この世をモンスターで埋め尽くします。伝説通りに、ほぼすべての人間が死に絶えるでしょう」


 アレスは自分の顔を覆っていた包帯をとった。


 そこには三つの(・・・)眼窩(・・)があった。

 通常の眼窩二つに加えて、額にも眼窩が空いていた。

 そしてその眼窩には、眼球ではなく紫色の光がとどまっている。

 三つの紫の光は、呼吸、脈動、波形のように動き、一定の秩序をもってうごめいていた。



「我が第三アビリティ天啓の力、未来予知によるものです。信じていただきたいですね」



 大公がどうとか以前に、人間に見えなくなった。

 話の内容よりも、彼の異形に息を呑んでいた。


「あ、ええ~~ごほん。大公閣下、お初にお目見えして光栄ですわ。貴方の姪に当たるもの、マルデル・ウルフドッグです。質問を声に出してよろしいでしょうか」

「ええ、どうぞ」


 アレスは包帯を締め直しながら答える。


「では……正直に申し上げて、オレは貴方の言葉を信じられません。ですが……その少なくとも、黒の泉が現れることは予知されていたと?」

「ええ、もちろんです」

「ではなぜ、警告などを出さなかったのですか?」

「その理由はさっき言った通りです。誰も信じないからです」


 マルデルの言葉に対しての返答は、すでにされたあとであった。

 

「この場にいらっしゃるヒマラヤ殿ならわかるでしょう。私たちのような索敵アビリティ保持者は、なによりも証明が難しいのだと」

「おっしゃる通りでございます。我らは見ればわかりますが、見えない者にどう説明するか、どう受け入れてもらえるかが至難。そして……同種にも、悪意を持って語る者もおります。であれば、疑われるのはむしろ正常と喜ぶべきこと」


 理屈はわからないでもなかった。

 だが庶民出身者たちは露骨に顔を歪める。

 彼は大公である。その気になれば、あの凄惨な被害をある程度緩和できたはずではないか。


 それをどうせ無駄だから、と言って放置したことは憤らずにいられない。


「オイラもいいですかね。コー・スレックシュ……あ、コーです。侯爵家令息じゃなくて、コー個人としての話っス。アンタはこんなでっかい街の大公様なのに、何とかしようと思わなかったって言うんですか!?」


「今が最善を尽くした結果です」


「誰も話を信じなくても、アンタの権力でもっといろいろできたはずだろうが!」


 コーの怒りに、他の庶民出身者も同調する。

 これには大公の妻が剣を抜きかけるが、それを大公は制した。


「おっしゃりたいことはわかっています。つまり、もっと税金を重くして、もっと徴兵して、もっと庶民への補償を削って、もっと軍備を増強していればよかったのですね?」


「~~~……すんませんでした」


 真実を語ろうと、適当な口実を作ろうと、実際に予算を動かすとなれば周囲の承認が必要である。

 側近に話を通しても、内容次第では実際に動く者たちから反感を買うこともあるだろう。


 その点は大公だろうが男爵だろうが変わらない。


「ではこれ以上、この時点では質問もないようなので話を続けさせていただきます。恐怖の魔法使いは遠からず復活しますが、対抗する手段がないわけではありません」


 アレスは室内にあった仕掛けを、誰にも見えないように動かした。

 すると部屋の床で大きな音、時計のような駆動音が続き、巨大なケースがせりあがってきた。



「これこそ過去三回にわたって恐怖の魔法使いを封じた武器……独裁(どくさい)聖剣(せいけん)グラディウスです」



 聖剣と呼んでいる割に、禍々しいオーラを放つ黄金の剣であった。

 デザインとしては実用品というよりも、権威を示すための豪華な、宝石や繊細な貴金属細工の施された美術品である。

 しかし禍々しいオーラは、圧倒的に力を放っている。


「グラディウスは恐怖の魔法使いの第二アビリティ『武装作成』により生み出された剣。その能力はモンスターが増えれば増えるほど強くなる、というシンプルなもの。これがあれば国土のすべてをモンスターで埋め尽くされたとしても、むしろその分だけ強くなり、モンスターの群れに守られた恐怖の魔法使いをすらたやすく封じられるのです」


「……これは、恐怖の魔法使いが生み出した剣だというのですか!?」


「はい。もともと恐怖の魔法使いが自分の身を守るために生み出しましたが、六千年前の英雄が奪い取り、自らの武器として使用。結果恐怖の魔法使いを封じることができたそうです」


 まさに論より証拠。

 こんな禍々しい、そこにあるだけで強大さがわかる武器がこの世にあること。

 それが伝説の証明に思えた。


「この剣はもともと恐怖の魔法使いの物。だからこそ、恐怖の魔法使いを封じることこそできますが、殺すことはできませんでした。いまだに恐怖の魔法使いは生きているのです」


「~~……あの、すんません。ソレは超強い武器なんですよね? だったら、それを今使えばいいじゃないですか」


「そうしたいのはやまやまですが、まだ条件が整っていないのです」


 大公は自分の顔をフレイヤーの方に向けた。


「先ほども言いましたが、この剣はもともと恐怖の魔法使いのためのもの。他の人間では、本来使うことができません。それを無理やり何とかするのが、貴方や貴方の兄がこれから獲得するであろう第三アビリティ『転生』。変身の上位アビリティであり、本人だけではなく武装すらも取り込んで強化できると言います」


「では、ボクが第三アビリティに覚醒すればいいのですね?」


「そうすれば世界は救われるでしょう」


 場の雰囲気が和らいだ。

 恐怖の魔法使いが実在するとか、これからもっと黒の泉が増えるとか聞かされていたが、それを解決する方法がここに揃っている。

 何の問題もないではないかと気が緩んでいた。


 しかしヒマラヤだけは、その心眼で大公やその妻を見ていた。

 どう見ても『これで解決だ、やったね』という雰囲気ではない。

 なんなら、妻の方は『能天気な輩だ、斬ってやろうか』と剣呑ですらある。


「大公閣下……なにか問題があるのですか?」


 息を呑みつつ問う。


「はい。まず一週間後、この剣を奪い返すためにグレーター(・・・・)ドラゴン(・・・・)が下僕を率いて攻め込んできます」


 さらっと予言されたドラゴンの上位種の襲撃。

 だがこれにも、そこまで緊張はなかった。


「偉大なるアタシたちなら勝てるでしょ。姫様が覚醒しなくても、アタシは少し前に変身のアビリティに覚醒したしね!」


 ワワの言葉通りであった。

 ドラゴンの上位種が来るとしても、この場の全員と大公領の兵力があれば勝算はあるだろう。


「はい。貴方達と私の戦力が合わされば、グレータードラゴンに勝てます。犠牲が出る可能性もありますが、出ない可能性の方が高いぐらいです」


 大公が太鼓判を押したことで、より一層空気は緩んだ。

 だがここからが、本当の本題であった。


「ですが、この剣を守り切れる可能性は半々。恐怖の魔法使いに奪い返される可能性もあります。それがどれだけ恐ろしいか、わからないわけではないでしょう」


 ただでさえ世界を埋め尽くすほどのモンスターが敵だというのに、それを無視して本丸を倒そうにも『モンスターが増えるほど強くなる剣』を相手が持っていれば勝ち目はない。

 独裁聖剣グラディウスを奪い返されれば、恐怖の魔法使いを倒すことは一気に難しくなる。


「だからこそ、私たちの取るべき作戦は三つ。『可能性に賭けてこの剣を守る』上手く行けば世界は救われるでしょう。次に『この剣を折る』私は貴方たちが間に合わなければ、そうするつもりでした。楽に勝つことはできませんが、最悪の事態は避けられます。多くの犠牲を伴いますが、それでも恐怖の魔法使いを殺す(・・)ことはできるでしょう」

 

 難しい顔をして、一行は考えた。

 できればこの剣で恐怖の魔法使いを倒したいが、守り切れなければとんでもないことになる。

 この剣を折れば最悪の事態は回避できるが、多くの犠牲が出てしまう。


「三つ目。コレは最も犠牲が少なく、精神的な負担も小さいものです」


 もうこれでいいのではないか、という雰囲気で大公は最後の選択肢を明かした。


「今この場で、フレイヤーを強制的に覚醒させます。そうすればこれから来るグレータードラゴンもあっさり倒せますし、そのあとの被害も最小限で済みます」


「そんなことができるんだったら、さっきまでの話は何だったんだよ!」

「強制的に覚醒させるなんてできるんですか? できるんなら俺たちもお願いしたいんですけど……」

「伝説のアイテムとか儀式があるとか?」


「そんなものは必要ありません、今この場でも実現可能です」


 預言者は、まさしく『神の視点』で一番楽な提案をした。



「フレイヤー・ウルフドッグ。自分の仲間を皆殺しにしなさい。そうすれば第三アビリティに覚醒できます」



 場が、静まった。

 話しているのはフレイヤーと大公だけである。


「それで覚醒できるかどうかはともかく、それが一番楽とはどういうことですか!?」


「貴方は今までの旅で多くの犠牲を見てきましたね。それが今後はもっと悲惨になります。何千何万もの命があっさりと殺されていきます。貴方が今この場で覚醒すれば避けられる犠牲です」


 今この場で数十人を殺せば、確実に何千何万もの命が助かる。

 あまりにも重い言葉であった。


「他の方法はないのですか?」


「アビリティが増えるというのは、一定以上の強さに加えて人生観の破壊が必要です。これは人によって異なります。他人からすればどうでもいいことで覚醒する人もいれば、普通の人間が体験する苦労の、何十倍もの犠牲が必要なこともあります。まして強制的、事前に覚悟をしたうえでの人生観の破壊。貴方の場合は自分の仲間を全員殺す、ぐらいでなければ覚醒できませんよ」


 人生観は人それぞれである。


 自分の肉体的特徴が他者と比較して劣ることで自信が崩壊し、癇癪を起して覚醒することすらある。


 何時までも無力な子供のまま、無償の愛を受けたいという者もいるだろう。自分でそれはムリだと理解して行動に移せれば、アビリティを増やす前提を満たせる。

 兄や父を呪うあまり世界を憎む者もいるだろう。自分でそれが間違っていると納得できれば、アビリティを増やす前提を満たせる。

 自分の家族は安全な場所で生活していると楽観している者もいる。それが根底から、理不尽に粉砕されれば、アビリティを増やす前提を満たせる。


 現時点ですでに立派で高潔で、弱点がなく、自分のこともわかっている者はどうすればいいのか。

 全人類のために仲間を皆殺しにするぐらいのことをしなければ、人生観は破壊されない。


「もちろん、実際に犠牲が出た後では意味がありません。大きな犠牲を目の当たりにした後では、精神的なショックは軽くなりますからね。『目の前の仲間』と『あやふやな将来の犠牲』を天秤にかけている今だからこそ意味があります」


 本当に多くの犠牲が出るかどうかもわからないのに、仲間を皆殺しにするなんてできるわけがない。

 そう言いかけたときであった。


「仲間を殺さなかったとしても、別の角度から同等以上の精神的ショックを受けなければ『転生』の覚醒はできません。そのうえで決めてください。折らないのか、折るのか……仲間を殺すのか」


 どれを選んでも修羅の道であった。


 だが大公と大公の妻だけは、最終的な安全策を知っている。

 これだけは、さすがに教えることはできなかった。




(折らないという選択をし、奪い返されるという結果になった場合……まさに最悪の場合、イレギュラ殿を(・・・・・・・)強制的(・・・)()覚醒(・・)させる(・・・)しかなくなります。それだけは避けたいですね、色々な意味で)




 折るか、仲間を殺すか。

 結果を確定させるためにも、折らないという選択だけはしてほしくない二人であった。

書き溜めがなくなりましたので、またしばらく休みます。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
スキルの覚醒条件ってそうだったんですね…
人生観の破壊...例の3つ目が怪しいなぁ 実はブラッカーテの実子はクナオルで、自分は実子じゃないと知った。しかも現在の状況はすべて大公の指示によるものだった!とか、そんな感じ? アイデンティティーの崩…
ふぁっ!こんないいところで!殺生な いつも楽しく拝読しています これは原作では重大な分岐として選べるのか事実上折らない一択なのか気になるところ 次もまたお待ちしております
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