エピローグ
これにて閉幕
数年後の王宮夜会。
豪奢なシャンデリアの下、着飾った貴族たちが色とりどりのドレスを翻し、穏やかな音楽に乗せてステップを踏んでいる。
会場の隅では、かつて学園で共に学んだ令嬢たちが集まり、扇を手に談笑していた。
「――あら。あちらにいらっしゃるのは、アトキンソン侯爵夫人ではありませんか?」
中心にいた高位の令嬢の言葉に、残りの二人が視線を向けた。
人混みを割って現れたのは、アトキンソン侯爵ジョーエル。相変わらずの端麗な容姿に、余裕のある微笑みを浮かべている。
そしてその腕には、一人の女性が寄り添うように抱えられていた。
レニー・ピアース――いや、今はレニー・アトキンソン。
彼女の姿を見た瞬間、令嬢たちの間に一瞬の沈黙が流れた。
「……随分とお変わりになりましたわね、彼女」
一人が小さく呟く。
かつて学園で、誰彼構わず噛み付いていたあの激しさは、今の彼女からは微塵も感じられない。
淡い灰色のドレスに身を包んだレニーは、驚くほど痩せ細り、その肌は陶器のように血の気がなかった。そして何より、その瞳には光が一切宿っていない。
ジョーエルは、愛おしそうにレニーの腰を抱き寄せ、彼女の乱れてもいない髪を優しく撫でた。
「皆様、ごきげんよう。レニーは…少し体が弱くてね。今日も無理をさせたくはなかったのだが、どうしても皆様にご挨拶したいと言うから、連れてきたんだよ」
ジョーエルの言葉に、レニーは微かに唇を動かしたが、声は出なかった。
ジョーエルが彼女を見つめる瞳は、恐ろしいほどに情熱的で、執着に満ちている。けれど、その腕に囚われているレニーの姿は、まるで精巧に作られた人形のようだった。
ジョーエルが他の貴族に挨拶を求められ、わずかに席を外した隙。
かつてレニーに、キャメロンとロザンヌの仲を伝えた令嬢たちが、心配そうに彼女を囲んだ。
「レニーさん……本当に大丈夫なの? 噂では、貴女は侯爵家の別荘から一歩も出してもらえず、ジョーエル様に厳重に管理されているって…」
「ええ…。お顔立ちも、以前とは別人のよう。レニーさん、貴女、本当に彼に愛されているの…? 大切にされているのなら、どうしてそんなに虚ろな目をされているのですか?」
令嬢の問いかけに、レニーはゆっくりと、まるで油の切れた機械のように首を動かし、彼女たちを見上げた。
かつては、他人の不幸を自分のことのように嘆き、過呼吸になりながら「正解」を求めていた瞳。
今はただ、底なしの暗闇が広がっている。
レニーは、遠くで自分を監視するように見つめているジョーエルと視線を合わせ、それから、かつての自分と同じように「同情」を向けてくる令嬢たちに、力のない微笑みを向けて言った。
「愛が無い関係なんて、誰が決めたのですか?」
このプロットを思いついた瞬間、絶対書かねばならないと思いました
形にできて良かったです
終わってから思いましたが、レニーの求めてたテンプレートな愛ってどれに分類されるんでしょうね?
ちなみに「愛の8種類」はギリシャ時代から言われていたようで…
レニーは現代なら複雑性PTSDと診断されてると思います
そして共感性がめちゃくちゃ高く、育ちのせいで自他境界があいまいです
でも他人を否定しまくるのは傲慢なのでね、たぶんそれは性格
◇◇◇重い話を読んだ後はギャグで整えてください。◇◇◇
「あなたに用はありません!~どこかに素敵な老紳士は落ちていませんか?~」
https://ncode.syosetu.com/n5656lr/
連載中です。軽く読めますのでどうぞよしなに~
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
↓
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします!
面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです!
なにとぞよろしくお願いいたします!




