1-2 編入生として
学園の寮棟を抜け、広い講堂へと足を運ぶリアナ・ノワールことリアナ・ヴェイルは
肩にちょこんと座るモモンガ型上位使い魔、モルと共に歩く。
編入生としての初日、彼女は高校1年生として自己紹介をすることになっていた。
講堂にはすでに多くの生徒が座っており、教師の軽やかな声が響く。
「本日からこのクラスに編入生がきます。
どうぞ、中へ入ってきてください。」
肩のモルが小さく目を輝かせて囁く。
「堂々としてね、リアナ」
そういってモルはリアナの鞄の中へ隠れた。
モルは決して学園の者に姿をバレてはならない。
上位使い魔は1級魔術師しか契約できないからだ。
リアナはモルが隠れたことをしっかりと確認してから教室へはいる。
教卓の前に立ち
「この度編入してきました、リアナ・ヴェイルです。よろしくお願いします。」
リアナの声は落ち着き払っており、まったく動揺の色はない。
この場にいる生徒が興味津々にリアナを見つめる。
リアナはなかなかの美貌を持つため皆気になるのは当然のことだろう。
背筋を伸ばし、視線を前方に据える。
その姿は、華やかでありながら冷静さを失わない―周囲の注目を集めるのに十分だった。
自己紹介の間、リアナの目は生徒たちを観察する。
どの生徒が魔力の強さを誇示しているか、杖の扱いに慣れていない者はいるか、他人に目立たぬよう潜在的な力を抑えている者はいるか……
一見平凡な編入生の姿の裏で、リアナの頭の中は完全に情報収集モードだ。
リアナが今考えていることが悟られないほど平然とした顔で行っている。
「リアナさん、よろしくお願いします!」
周囲の生徒たちが声をかける。
彼女は軽く微笑み、短く頷く。
「よろしくね」
自己紹介が終わりリアナが席に座ると、当たり前のように授業が始まろうとしている。
講堂の壁には、過去の優秀な卒業生や魔術大会の記録が飾られ、学園の伝統と威厳を伝えていた。
リアナは冷静にひとつひとつを目に焼き付ける。
魔術管理局からの任務は、ここで何が行われているかを観察すること。
異常な魔術濫用の兆候、規律違反、危険な兆候―それらを見逃さないために、彼女の目は常に動き続けていた。
教室に入る前にモルが言っていた言葉を思い出す。
「まずは顔と名前を覚えられることが大事だ」と。
リアナは心の中で計画を組み立てる。
授業、演習、休み時間の観察―二年間の潜入生活は、ここから始まる。
午前の授業が始まり、リアナは授業の内容をほぼ聞かず任務について頭で考えていた。
その時、隣の席から声がかかる。
「あ、あの...」
リアナは少し驚きつつも顔には出さず
「はい、どうしましたか?」
と優しく微笑んだ
隣の席には女子生徒が座っていた。
茶髪で素朴な女の子だ。
見るからに魔力は150相当もっている。
魔力150―それは2級魔術師と同格の魔力を表している。
リアナは少し警戒した。
隣の席の女の子は少しオロオロしながら
「は、はじめまして...
わ、わた、わたし、ミア・リュネットと申します、
こ、こここ、これか、これからよろしく、お、お願いします...!」
ミア・リュネットはすごく緊張しながら話す。
噛み噛みだしオロオロしている。
「ミアっていうのね、よろしく。
私はリアナ。気軽にリアナって呼んでちょうだい。」
とリアナは微笑んだ
ミアはすごく笑顔になりながら
「よ、よろしく、リアナ」
顔が赤く染まっている。照れているのだろう。
そんなミアを見ながらリアナは微笑んだ。
こうして午前の授業を乗り切り昼休み。
リアナに話しかける生徒は多数いるがリアナは微笑み、少し話したあと会話を自分から終える。
そうしてやっとリアナに話しかける人が居なくなった時、ミアが話しかけてきた。
「あ、あの...!
よければ、だけど...い、一緒に、ご、ごごご飯...たべない?」
噛み噛みだがリアナを昼食に誘った。
リアナは微笑みながら
「喜んで」
と答えた。
リアナはまだミアのことが分からない。
だからこそ一緒に昼食をとることを決断した。
ミアはそんなことも知らずに
「ありがとう、!」
と嬉しそうに笑った。




