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まじわり輪  作者: がおがおの
第二章 少年期編
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第二十一話 真相(前半)

辺りを見渡すと、建物が崩壊し、道路もまともに歩ける状態ではなかった。

あの災害から二週間以上は経っているというのに、まだまだ復旧は追いついていなかった。


(ニヒル村の辺りじゃなさそうだ)


見覚えのある景色ではなかった。


(他の学校のみんなは、無事なのだろうか)


ルージュナやルイドス。

メルやガルベットは。

考えれば考えるほど、不安が膨らんでいく。


「おい、止まるな」


グイルの声に、僕ははっと我に返った。


「す、すみません」


僕は慌ててベンジャンたちに着いていく。


しかし――


歩き始めて一分も経たないうちに、全員が立ち止まった。


「ここだ」


ベンジャンが、短く告げる。


(ここ、、、?)


僕は辺りを見渡した。

だけど、特別何か拠点らしき建物は見当たらない。

あるのは、崩れた瓦礫の山と、地面にポツンとある下水路の蓋だけだった。


(え、まさか、、、)


ふと、違和感に気づく。

周りの建物は全て崩壊しているのに、この下水路の蓋だけが異様に綺麗に形を保っている。


(ま、まさかこの下水の中、、、とは言わないよな、、、)


僕の顔が、自然と引きつる。

それを見たフィオナが、クスッと笑いながら声をかけてきた。


「そのまさかよ!私たちの拠点は、この下水路蓋の下にあるの」


(やっぱりですよね、、、そんな予感はしてました)


「でも安心して、坊やが思っている下水の汚いイメージは無いわ」

「べ、別に僕はそんな事を、、、」


(思いっきり思ってました)


そんな僕の心の声を知ってか知らずか、ベンジャンが下水路の蓋に手をかけた。

縁が、蓋に注ぎ込まれていく。


ジジジ、、、


蓋が光り始める。


そして――


ガコン


重い音を立てて、蓋が開いた。


(げっ、、、)


虹色に輝くワープゲートになっていた。

渦を巻くように光が回転し、その奥は何も見えない。

まるで異次元への入口のようだ。


(またワープするのか、、、)


正直、ワープする時のあの浮遊感というか、内臓が引っ張られるような感覚は慣れない。

気持ち悪さが蘇ってくる。


「さあ、入るぞ」


ベンジャンが先に飛び込む。

続いてグイルとフィオナも、躊躇なく中へ。

僕は、ゲートの前で立ち尽くしていた。


(また、あの感覚を味わうのか、、、)


でも、、、


(母と父が、この先にいるかもしれない)


僕はそう思いゲートへと飛び込んだ。


ゴォォォォン


視界が虹色に染まる。

浮遊感。

重力が消える感覚。


(うっ、、、やっぱり気持ち悪い、、、)


胃が浮き上がり、三半規管がグルグルと回る。

そして、気づいた時は目の前の光景が変わっている。


「毎回この気持ち悪くなるの何か対処法は無いのでしょうか?」


僕がそんなつぶやきを言い顔を上げるとそこは――


誰もが、いや、男があこがれる秘密基地のような空間だった。


「え、、、ここが、下水の中、、、?」


いや、違う。 壁は石造りだが、汚れ一つなく綺麗に磨かれている。

天井には魔道具らしきランプが吊るされ、暖色の明かりが部屋全体を優しく照らしていた。

広さは、学校の教室を二つ分ほど繋げたくらいだろうか。 決して宮殿のように広くはないが、生活するには十分すぎる空間だ。


部屋の中央には、使い込まれた大きな木のテーブルと、革張りのソファ。 壁際には本棚が並び、大量の書物や書類が綺麗に整えられている。


「へへっ、驚いた? 外見はただの下水だけど、中はちゃんと生活できるようになってるのよ」


フィオナさんが得意げに笑う。

空調も効いているのか、空気は地上よりも澄んでいて、どこかハーブのような良い香りがした。


(凄い、、、下水にこんな場所があったなんて)


ここなら確かに、外の危険から身を隠せる。


「おい、いつまで呆けている。ついてこい」


ベンジャンがスタスタと奥へ歩き出す。

その先には、いくつかの扉が並んでいた。


すると、全身緑の恐竜のような着ぐるみを被った女性が、奥の扉からひょこひょこと現れた。


「あっ!隊長!それにフィオナ姉さんにベロ!お帰り〜」

「おい、そろそろその呼び方やめろ」

「良いじゃん!俺この呼び方好きだし」

「チッ、好きにしろ」


グイルはそう吐き捨てると、ソファーの方へと移動していった。


「ただいま、ユーノ」

「フィオナ姉さん!例の魔女と男の子は見つかったの?」

「えぇ、魔女はいなかったけれど、坊やならそこにいるわ」


するとユーノは僕の方をじっと見つめ、何故か笑った。


「グハッハッハッハッハッ!確かに隊長が目を付けるのも納得だ!」


(か、彼女は一体何者なのだろうか、、、それと魔女って?)


僕がそんな疑問を抱いている間に、フィオナが次の言葉を続けた。


「それとユーノ、もう一人いるの」


フィオナは担いでいたセリナをそっと下ろした。


「色々あってね、この子も診てもらいたいの」

「ここに入れたっていう事は隊長が認めてるって事だから、いいよ!」

「ありがとう、ユーノ」


そう言うとユーノは、下水路蓋の下に出てきたワープゲートと同じものを、セリナの真下に出現させた。


(もしかして先ほどのワープも、あの子の魔術だったのか!?)


「じゃあ俺、この子診てくるね。隊長たちが救った人はこの奥の扉にいるから、隊長、後はお任せです!」

「あぁ、分かった。ありがとう、ユーノ」


そう言うとセリナと共に、ユーノはワープゲートの中に消えていった。


「あ、あの!」


(ちゃんとお礼を言いたかったのに……今度会った時に言おう)


僕が心の中でそう決めた時、フィオナがぽつりと呟いた。


「本当にユーノは凄いわね。この拠点もユーノのおかげで存在してるし」


(やっぱりこの拠点も、あのユーノって子が魔術で拡張してるんだな)


「フィオナ、雑談は後だ」


ベンジャンの一言で、空気がピシリと引き締まる。


「そうね、隊長。今はこの坊やの家族を見せないとね」


そうだ。

僕はここに、家族の安否を確認しに来たのだ。

この拠点に浮かれている暇はない。


ベンジャンはユーノが指し示した扉の前まで歩いた。

僕はその後ろを、ただ黙って着いていった。

心臓の音だけが、やけに大きく響いている。


「この先に、お前の両親がいる」


ベンジャンが振り返ることなく、静かに告げた。


「まずは顔を見せて、安心させてやれ」


やっと――やっと家族に会える。

僕の手が震えた。

恐怖なのか、期待なのか、自分でも分からない。


僕はドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開けた。


軋む音が、静寂の中で響く。


そこにいたのは――


ベッドで横になっている母と、その横でずっと母の手を握って座っている父だった。


「――――っ」


息が、止まった。


母の表情は暗く。

父は、俯いたまま微動だにしない。

その背中は、どこか小さく見えた。


僕は母と父の姿を確認した瞬間、自然と涙があふれ、全力で駆け寄った。


「お、お母様!お父様!」


僕の声に気が付いた母と父が、顔を上げた。


「シエロ!!」


父が泣きながら僕に飛びついてきた。

いつもなら酒臭く、離れてほしいと思っていたが、この時だけは父の温もりを体感した。


「お父様!」

「シエロ、よく帰ってきた。本当に、よく帰ってきた、、、」


父の涙が、僕の服に落ちる。

僕の肩を濡らしていく。

僕は涙でにじんだ目で、母の方を見た。


すると――


母の左足が、異様に短かった。

包帯がぐるぐると巻かれ、その先は何もない。


「お、お母様、、、あ、足が、、、」


僕はすぐに母の元まで駆け寄った。


「シエロ、お帰り。怪我はない?」


母は、いつもと変わらない優しい声で尋ねてくる。


「僕は大丈夫です!ですがお母様の左足が……!」


母の左足は、膝から下が無かった。


「お母さんは大丈夫よ。ちょっと飛んできた瓦礫にやられちゃって。でもあのベンジャンさんて方たちが助けてくれたの」


母は笑顔を作ろうとしているが、その顔には疲労の色が濃く滲んでいた。


「お母様のポーションや魔術じゃ治らないんですか!?」


僕は必死に訴えた。

治癒魔術なら、母が一番得意なはずなのに。


「ポーションは全部吹き飛んでいってしまったわ。それに、お母さんの治癒力じゃ無くなった足の再生は出来ないみたい」


身体の部位再生の治癒魔術は、神童級のヒーラーでさえ難しいと言われている。


「シエロ、もう少し近寄って」

「はい、お母様」


僕が母に近寄ると、すぐに抱きしめられた。

久しぶりに嗅いだ母の匂いに、涙が止まらなかった。


(お母様、、、)


僕は悔しかった。

僕が六年生の校外学習に行かなければ、今より良い運命だったのかもしれない。


(お母様の足、、、兄の生成魔術で義足なら、、、)


僕はここで、一つ忘れていたことに気がついた。


(兄の魔術、、、兄は、、、)


ハッとする。

どうして忘れていたんだ。

違う、、、勝手に、居ると思い込んでいたんだ。


「お母様、お父様!」


僕は少し声を荒げた。


「お兄様は、何処に居るのでしょうか!?」


周りを見渡す。

しかし、兄の姿は一向に見当たらなかった。


父が少し表情を落として話す。


「実はソルと、まだ連絡がつかないんだ、、、」

「お父さん、大丈夫よ。ソルならちゃんと戻ってきますから」


そうだ、兄は優秀だ。

きっと今頃、人助けなどをしているだけだろう。


すると父が、声を震わせた。


「でも!あの災害からもう二週間以上は経ってるんだぞ!!手紙を送っても、あのソルから返答が無いんだぞ、、、」


父が声を上げる理由も、ちゃんと分かる。

分かっているが、今それを言ったところで何も変わらないことも事実。

こういう時の母は、本当に偉大だと思う。


「お父さん、大丈夫ですから。ほら、シエロもこっち来て」


母は僕と父を、両手で抱き寄せてくれた。


「私たちは家族です。どこに居ようが、血は繋がっています。ソルの事はお母さんも心配だけど、今は待つしかありません」


母の言葉に、父は大泣きしていた。

これが家族の愛というものだった。


すると、扉の方からセリナの声が聞こえた。


「シ、シエロ、、、?」


僕たち三人は、すぐに声のする方へ顔を向けた。


「セ、セリナ!もう大丈夫なんですね!!」


僕はすぐにセリナの元へ駆け寄った。


「え、う、うん、、、一体ここはどこなの?あの緑の恐竜は何者?」


目を覚まして、こんな場所に居たらそりゃ混乱するだろう。


「安心してください。緑の恐竜の方は僕もまだ分かっていませんが、ここはベンジャンさんの拠点です!」

「べ、ベンジャン、、、?」


あ、そうか。

セリナは意識を失っていて、まだ名前も知らなかったんだ。


「ベンジャンさんというのは、、、」


僕がセリナに説明しようとした、その時だった。


「セ、セリカさん、、、?」


父から、聞いたことも無い裏返った声が聞こえてきた。

それに母も続けて声をかけた。


「セリカさんも、シエロと一緒に無事だったのね」


(違うんだお母様、、、)


「でもあれだな、、、髪の毛といい、少し雰囲気が変わったな」


(違うんですお父様、、、)


「でも、その、、、ご両親についてはその、、、ご不運でしたね」


母と父は、完全にセリナをセリカと勘違いしている。

セリカだと思って話していると、心が苦しくなる。


「あの!お父様、お母様、聞いてください!」


僕は耐えられずに、大きな声を出してしまった。


(しまった、、、つい大きな声を、、、)


「すみません。取り乱してしまいました」

「ごめんねシエロ。シエロのお話、聞かせて」

「はい、お母様」

「実はその、、、この子はセリカではなくて、、、」


(どのように話そうか、、、ありのまま話しても理解するのに時間がかかるだろう。今、精神的にも体力的にもしんどいのに、難しい話をしても仕方がない。いや、こういう時こそありのままに話した方が良いのだろうか)


「一度、全員で集まって状況を整理しましょうか」


僕たちはリビングに集まった。

母には、車輪のついた療養椅子が用意されていた。

勿論、ベンジャンさんたちにも参加してもらった。


「まずは、僕から説明します――」


僕は校外学習から南の国(アウストラル)、そしてここに来るまでの流れを説明した。

セリカの事も、正直に話した。

それを聞いた時、母も父も泣き崩れていた。


「、、、以上になります」


僕の話を聞いたベンジャンさんは、眉間にしわを寄せているが、何を思っているのかはよく分からなかった。


すると父が涙を拭い、話した。


「シエロ、よく聞くんだぞ」

「はい」


その声は重く、緊張感が増した。


「実は、隕石の降った日、、、セリカさんのご両親も亡くなったんだ」

「えっ、、、」

「原因は隕石が屋敷に落下し、そのまま跡形もなく、、、」

「そ、そうでしたか、、、」


僕は何も言えなかった。

セリカだけではなく両親まで被害に遭っているとは想像しなかった。

気まずい雰囲気が流れる。

それを破ったのがセリナだった。


「シエロ、その、、、私に似ている友達の事は残念だったわね」

「はい、、、」


すると母がセリナに思い切った質問を投げかけた。


「セリナさん。まずは息子の面倒を見ていただきありがとうございます」

「私の方こそシエロには世話になったわ」

「その、、、セリナさんはセリカさんと本当に何も関係ないの?どうしても容姿や喋り方、それに名前まで類似し過ぎているというか、、、」


まずは誰もがその疑問を抱くだろう。

実際僕はセリカじゃないなんて思えなかったし。


「シエロにも何度も言ったけれど、マーガレット家とは何も関係は無いわ」

「そうなのね、、、なんだか不思議だわ」

「その、探している両親がここ(アズライト)に居るかもしれないってのも何か引っかかるな」


父がそう言うと、先ほどまで眉間にしわを寄せて何を考えているか分からなかったベンジャンが、突然話に割り込んできた。


「まさか、、、その可能性がある者が二人も現れたのか、、、」


その言葉を聞いた、フィオナやグイル、それにユーノが反応した。

僕たちには何のことかさっぱり分からなかった。


「もし隊長の言う事が本当ならまずいわね」

「フィオナさん、一体何の話でしょうか?」


僕が尋ねても、誰も答えない。

重苦しい沈黙が、部屋に落ちる。


「次は我々の番だ」


ベンジャンが息を整え、両手をテーブルの上にのせ話し始めた。


「まずはシエロ・アルランド。君との約束を果たそう」


ベンジャンは僕と交わした約束――先ほどの魔物やここについて。

それにあの隕石についてだった。










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