第二十話 導かれし者たち
歩き始めてから四日が経っていた。
僕たちはひたすら歩いた。
魔物を狩り、休憩し、また歩く。
寄り道もほとんどせずひたすらに。
「セリナ、今どのくらい進んでますか?」
「そうね、十分の三ってところかしら」
道のりはまだまだ長かった。
現在は森の中を歩いている。
シルバさんの地図曰く、この森を一気に抜けると東の国の国境付近まで抜けられるらしい。
しかし問題があった。
「それにしてもこんなにも木々でいっぱいなのに、食べられそうな果実一つもなっていませんね」
そう、食料問題だった。
携帯食料の干し芋すら、昨日の夜で底をついてしまった。
お腹の虫が、情けない音を立てる。
「とりあえず今は探しながら前に進むわよ」
お互いにお腹は相当空いている。
水に関しては魔術で出せるので問題ないが、空腹だけはどうにもならない。
こういう時に兄の具現化の魔術があれば、肉などを生成できるのだろうか。
「それにしても静かですね。今まで色んな魔物がいたのに、この森には魔物どころか鳥や虫の鳴き声も聞こえません」
不気味なほど静かだ。
木々は青々と茂っているのに、生き物の気配が全くない。
まるでこの森だけが、時間の止まった世界のようだった。
「そうね、、、このままでは東の国に着くまでに餓死してしまうわ」
セリナの声にも、少しだけ不安が混じっていた。
しばらく歩いていると、木がなぎ倒されており、明らかに何者かによって荒らされた場所があった。
「これは酷いですね、、、」
「これは明らかに誰かの手によって荒らされたようにしか見えないわ」
そのなぎ倒された木を観察すると、深い爪痕が残っていた。
さらによく見ると地面に黒ずんだ血痕や、何かの臓器らしきものまで落ちていた。
腐臭が鼻を突く。
「なんでこの森が静かな理由が分かったかもしれません」
「私もこれを見て思ったわ」
「これは完全にお腹を空かせた何かが、この森の生物という生物を関係なしに襲っているんだと思います」
(血痕もまだ乾ききっていない)
生々しい爪痕、まだ新しい血の匂い。
つい最近、ここで何かが起きたのは間違いない。
「この森を早く抜けましょう。危険な匂いがします」
「そ、そうみたいね。急いでここを離れるわよ」
僕たちがその場を離れようとした時だった。
突然、背後から物凄く邪悪な気配を感じた。
背中が、いや、全身が凍り付く。
呼吸すら忘れてしまいそうなほどの圧倒的な殺気。
僕とセリナは声も出すことができなかった。
「この私が腹を空かせて、下級魔物を食い漁るとでも思っているのか?」
低く、重く、そして恐ろしい声が背後から響く。
その気配がどんどんと近づいてくる。
今すぐ離れたいのに足が動かない。
まるで見えない鎖で縛られているようだ。
「それとも貴様らも七柱の存命を支持する愚かな魔術師か?」
(七柱?存命を支持?意味が分からない、早くこの場から離れたい)
邪悪な気配はますます近くなる。
とにかく身体全身に縁を込めた。
汗が止まらない。額から頬へ、冷たい汗が流れ落ちる。
その邪悪で重たい気配は、僕の真後ろで止まった。
(動け動け動け!!!!)
僕はこの邪悪な気配について何も分からないが、とにかく身体の細胞一つ一つが敵だと認識していた。
生存本能が、全力で逃げろと叫んでいる。
僕は全力で振り返り、その勢いのまま魔術を放った。
「炎斬!」
ボゴォォォン
僕の魔術が何者かに直撃する。
その衝撃のおかげか、僕とセリナの身体も動けるようになった。
すぐに謎の気配から距離を取る。
僕たちはとにかく声を出すことができず、ただ目の前の煙の中から何が現れるのかだけに集中していた。
煙がゆっくりと晴れていく。
そこに立っていたのは――
ヒト型で全身が黒い光沢のある何かで覆われており、細くて禍々しい尻尾が生えていた。
その表面は、まるで濡れた黒曜石のように不気味な輝きを放っている。
顔には目鼻立ちがあるが、その全てが闇色に染まっており、表情を読み取ることができない。
ただ、時折赤く光る瞳だけが、僕たちを見据えていた。
(魔術師ではない!?魔物だと!?魔物がさっき喋っていたとでも言うのか!?)
「無詠唱でこの精度の斬撃を、よくあの状況で発動できたものだ」
僕の与えた斬撃は、無傷で終わっていた。
黒い表皮には傷一つついていない。
それどころか、僕の炎斬を受けた場所を、まるで感心するように撫でている。
「だが、所詮は生きのよい餓鬼の魔術」
その言葉と同時に、魔物の姿が掻き消えた。
「え、、、」
次の瞬間、僕の視界が激しく揺れた。
何が起きたのか理解する前に、身体が宙を舞っている。
ドガァァァン!!
背中から木に激突し、肺の空気が一気に押し出された。
痛みで意識が飛びそうになる。
「シエロ!」
セリナの叫び声が遠くに聞こえる。
目を開けると、魔物が僕の目の前に立っていた。
いつの間にか移動したのか、その速さを僕の目は捉えられなかった。
「面白い縁の性質だ」
魔物が僕の顔を覗き込む。
その赤い瞳が、僕の魂を見透かすように光っている。
魔物の尻尾が、鞭のようにしなる。
「シエロから離れなさい!」
セリナが戦斧を大きく変形させ、魔物に向かって突進する。
しかし――
パシン
魔物は片手でセリナの斧を受け止めた。
まるで子供の玩具を受け取るかのように、軽々と。
「なっ、、、」
セリナの顔が青ざめる。
彼女の全力の一撃が、片手で止められてしまった。
魔物が軽く手首を返す。
その動作だけで、セリナの身体が吹き飛ばされた。
「セリナ!」
僕は立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。
全身に激痛が走り、縁を練ることすらままならない。
「心配するな、殺しはせん」
魔物がゆっくりと僕に近づいてくる。
その足音が、死の宣告のように響く。
「お前はまだ、死ぬには惜しい才能を持っている。どうだ、お前もこちらに来い」
「な、何を言っているんだ。お前みたいな魔物についていくわけがないだろ」
(さっきからこいつは何を言っているんだよ)
「僕は今、お前に構っている暇なんてないんだ!」
「そうか、拒絶するか。ならば死ね」
目の前の謎の魔物は、腕を伸ばし僕の首根を狙う。
この瞬間、僕は死ぬ。そう確信した。
魔物の鋭い爪が、僕の首にかかろうとした――その時だった。
ドガァァァァン!!
魔物の腕に何かが着弾し、爆音と共に煙幕が舞い上がった。
僕は死んだと錯覚したが、魔物の手は僕に届いていなかった。
それどころか、目の前でその腕が肩口から吹き飛んでいたのだ。
「そいつは俺たちのモノだ。お前のような魔物にやられていいわけがないんだなぁこれが!」
聞いたことのない、間の抜けた声が聞こえた。
顔を上げると、長い舌をベロリと出し、耳が少し尖っているのが特徴の男が木の枝の上に立っていた。
その男は軽薄そうな笑みを浮かべている。
(誰だあれは。僕を助けてくれたのか?)
しかし、考えている暇はなかった。
魔物は一瞬で、吹き飛んだ腕を再生させたのだ。
傷口が蠢き、黒い何かが溢れ出して、みるみるうちに元通りの形を作り上げていく。
「今の技、結構自信あったんだけどなぁ。この魔物、結構生意気な強さしてるぜ」
魔物は僕から、木の枝の上にいる男に視線を移した。
その赤い瞳に、初めて敵意が宿る。
その一瞬の隙だった。
音もなく、僕の目の前に女性が現れた。
長いピンクの髪に、どこか冷たい印象を与える整った顔立ち。
その女性は、いつの間にかセリナを片手で抱えていた。
魔物は再度僕の方へ視線を戻し、また長い腕を伸ばしてきた。
「悪いけど、あなたの相手なんて私はしないよ」
僕の目の前に来た女性は、魔物の攻撃を細い糸を何重にも交差させたような四角い盾で防ぐ。
キィンという金属音が響く。
そして僕とセリナを軽々と両腕に抱え、一瞬でその場を離脱した。
速すぎる。僕には何が起こっているのか全く分からなかった。
風景が流れ、気がつけば数百メートルは離れた場所にいた。
しかし、魔物も黙ってはいない。
「貴様らが何者かは知らんが、貴様らだけでこの私を倒せると思っているのか?」
魔物はそう言うと全身から黒い影のようなオーラを噴出させ、何かを仕掛けようとしていた。
その黒いオーラは周囲の木々を瞬く間に枯らし、地面を腐食させていく。
生命を食らう闇のようだった。
その時、魔物の真上、空中にもう一人の男が立っていた。
両手を胸の前で組み、まるで祈るような姿勢で浮遊している。
「悪いが、俺たちも今お前と戦う予定はない。今日はこのままお開きにさせてもらう」
その男は両手を胸の前に伸ばし、詠唱を唱え始めた。
「人間ごときがこの私を襲っておいて、逃げられると思っているのか?」
互いの縁がぶつかり合う。
それは凄まじく、イザトラ戦でのリリア先生以来の、身体全身が奮い立つような感覚だった。
いや、それ以上だ。
空気そのものが震え、呼吸するだけで胸が痛い。
「九天に轟く雷鳴よ、我が掌に集い、一筋の閃光となれ。臨界・界雷、貫け」
男の両手で構えた三角の輪の中に、黄金に輝く稲妻がビリビリと音を鳴らし溜められていく。
その光は周囲を照らし、影すら消し去るほどの輝きだった。
対して魔物も全身から出した黒い影を両手に集め、凄まじいエネルギーを凝縮させる。
周囲の空間が歪んで見えるほどの密度だ。
光と闇、二つの力が今まさにぶつかろうとしている。
「まずは貴様から殺してやる」
魔物は両手に溜めたエネルギーを男に向かって放つ。
黒い光線が空気を引き裂き、螺旋を描きながら迫る。
その威力は、簡単に国を一つ滅ぼせるほど。
しかし男も負けてはいなかった。
両手に溜められた稲妻は、およそ二億ボルト。
自然発生する雷の倍の威力である。
「天帝の轟雷」
男が放った稲妻のエネルギー。
そして魔物が放った、影のエネルギーがぶつかる。
その瞬間――
世界が白く染まった。
バァァァァゴォォォォン!!
その衝撃は、この大地全体を震え上がらせた。
二つのエネルギーが衝突した場所から大きな爆発が起こり、辺り一面を吹き飛ばす。
木々が根こそぎ抜け、地面が抉れ、空気そのものが悲鳴を上げているようだった。
衝撃により起こった煙幕の中、魔物は逃がすまいとすぐに男に襲い掛かるが――
「なっ、、、」
男は既にその場所には居なかった。
残されたのは、焼け焦げた空気だけ。
「まぁ良い。今回は久しぶりに身体を動かしに来ただけだ。だが、思わぬ収穫もあった」
魔物は僕たちが逃げた方角を見つめる。
その赤い瞳に、何か企むような光が宿った。
「あの少年の杖、、、そしてあの縁の性質。これはあのお方にも報告すべきだ」
魔物はそう呟くと、影の中に溶けるように消えていった。
残されたのは、焼け焦げた大地と、引き裂かれた森だけだった。
僕とセリナは、森から抜けた開けた場所まで運ばれていた。
木々の隙間から差し込む光が、地面に斑模様を描いている。
先ほどまでの死の気配が嘘のように、穏やかな風が吹いていた。
「よしっと、もう大丈夫みたいね」
そう言うと、ピンク髪の女性は僕とセリナをゆっくりと地面に下ろした。
「坊や、大丈夫かい?」
女性が僕の顔を覗き込む。
その瞳には、どこか母性的な優しさがあった。
「だ、大丈夫です。あ、ありがとうございます」
僕は息を整えながら答えた。
全身がまだ震えている。
あの魔物の圧倒的な力。
今でも背筋が凍る。
ふと、横を見る。
セリナはまだ目を覚ましていなかった。
地面に横たわったまま、微動だにしない。
(……まさか)
また、目の前で――
仲良くしてくれた人が、死んでしまったのではないかと思ってしまった。
「セリナは、、、無事なんでしょうか!?」
声が裏返る。
女性は僕の肩にそっと手を置いた。
「大丈夫よ。回復ポーションを与えておいたから、すぐに目を覚ますわ」
その言葉を聞いて、僕は心の底からホッとした。
膝から力が抜けて、その場にへたり込みそうになる。
(良かった、、、セリナは無事なんだ)
すると――
ガサガサ
茂みを掻き分ける音が鳴った。
長い舌と鋭い耳が特徴的な男と、短髪で白い髪の男が、遅れてこちらへやって来た。
後者は、あの凄まじい雷撃を放った人物だ。
「二人は無事か?」
白髪の男が、落ち着いた声で尋ねる。
「えぇ、二人とも無事よ、隊長。一人は回復ポーション与えてるから問題ないわ」
ピンク髪の女性、フィオナが答える。
すると、長い舌の男がベロリと舌を出しながら不満そうに言った。
「貴重なポーションを使ってまで、この少女を助ける必要あったのかよぉ」
「うるさいわね。隊長が決めた事よ! それにあんたに使うポーションなんて一つも無いからね」
フィオナが鋭く睨む。
長い舌の男、グイルは、ふてくされたように視線を逸らした。
(ところで、一体この人たちは何者なんだ?)
僕は三人を順番に見た。
(僕たちを助けてくれたという事は、味方、、、なのか?)
でも、分からない。
あの魔物と対等に渡り合える実力。
それに、この不思議な雰囲気。
とても普通の冒険者には見えなかった。
「あ、あのすみません、、、」
僕が恐る恐る声をかけた、その瞬間。
「あ、そうだったわね。自己紹介がまだね」
フィオナがパンッと手を叩いた。
「私の名前はフィオナ・ペタルハートよ」
彼女は軽く髪を払いながら、笑顔で続ける。
「で、この見ての通りベロベロ長い舌がグイル・ババベルよ」
「チッ」
グイルは何故か、僕の方を見て舌打ちをした。
(な、何か気に障ることでもしたのか、、、?)
「で、最後にベンジャン・フランクリン。うちの隊長よ」
白髪の男、ベンジャンが、僕をじっと見つめる。
その瞳には、何かを見透かすような鋭さがあった。
「す、すみません」
僕は思わず一歩後ろに下がった。
「まだ状況が飲み込めてないのですが、、、一体あなたたちは、、、」
すると、ベンジャンがゆっくりと口を開いた。
「話は後だ、シエロ・アルランド」
え?
僕の思考が止まる。
(なっ、、、どうして僕の名前を!?)
(今思えばこの人達どこかで見たことあるような、、、)
名乗ってもいない。
それなのに、この人は僕の名前を知っている。
でも、謎の違和感もある。
「まずは俺たちのアジトに向かう」
ベンジャンは僕の動揺を無視して、淡々と告げた。
(なんなんだ、この人たちは)
僕を無視して、話をどんどん進めていく。
まるで全てが決まっているかのように。
「あの!すみません!!」
声を大にして叫んだ。
三人とも、一斉に僕に視線を向ける。
その視線が、少しだけ重い。
でも、ここで黙っていたら駄目だ。
「助けていただいたのは、心から感謝しております」
僕は拳を握りしめた。
「ですが――僕たちは東の国に戻らないといけません」
息を吸う。
「なので、あなたたちについていくことは出来ません」
言い切った。
風が、木の葉を揺らす音だけが響く。
するとベンジャンが、ゆっくりと僕に近づいてきた。
一歩、また一歩。
その足音が、心臓の鼓動と重なる。
(怖い、、、)
正直、ちびりそうなほど怖かった。
(だけど、ここで漏らすわけにはいかない!)
ちょっとだけ、強く言葉を発したんだ。
意地でも、逃げるわけにはいかない。
ベンジャンが、僕の目の前で立ち止まった。
そして――
「シエロ・アルランド」
低く、重い声が響いた。
「お前の親は、俺たちの拠点に居る」
は?
思考が、一瞬止まった。
「そ、それは、、、一体どういう事でしょうか?」
声が震える。
心臓が激しく打っている。
(どうして、母と父がこの人たちの所に?)
ベンジャンは表情一つ変えずに答えた。
「そのままだ」
それ以上、何も言わない。
ただ僕を見つめている。
(本当にこの人たちの拠点に、母や父が居るのか?)
もしそうなら――すぐにでも向かいたい。
でも。
(嘘だったら?)
この人たちを、信じても良いのか?
葛藤が、胸の中で渦巻く。
「、、、お母様たちは、無事なのでしょうか?」
僕は震える声で尋ねた。
ベンジャンは、僕の目をじっと見つめたまま答える。
「それは、自分の目で確かめろ」
(知りたいなら、ついて来いという事か)
僕は唇を噛んだ。
選択肢なんて、初めから無かったのかもしれない。
それに――
横を見れば、セリナがまだ目を覚ましていない。
このまま逃げるわけにもいかない。
僕は深く息を吸い、覚悟を決めた。
「分かりました」
顔を上げる。
「あなたたちの拠点についていきます」
ベンジャンの口元が、僅かに綻んだ。
「賢明な判断だ」
「ですが、、、」
僕は続けた。
「一つ、約束してください」
「約束?」
「拠点について、家族を確認出来たら、、、」
僕はベンジャンの目を真っ直ぐ見た。
「あなたたちについてや、先ほどの魔物について、色々教えてください」
少しの沈黙。
ベンジャンは、小さく頷いた。
「勿論だ」
その言葉を聞いて、僕は少しだけ安心した。
すると、ベンジャンは懐から何かを取り出した。
それは小さな、青白く光る球体だった。
見た目はルージュナが持っていた瞬移宝鏡とは全く違う。
だが、放たれる縁の質は似ている。
(これも、転移系の魔道具、、、?)
ベンジャンがその球体に縁を込める。
ジィィィン
球体が震え、淡い光を放ち始めた。
光は地面に伝わり、僕たちを囲うように魔法陣が浮かび上がる。
幾何学的な模様が、足元で複雑に絡み合いながら輝いている。
「因みにだが、、、」
ベンジャンが、魔法陣を見下ろしながら言った。
「俺たちの拠点は、東の国にある」
「え?」
僕の声が、間抜けに響いた。
考える暇は、与えられなかった。
次の瞬間――
ゴォォォォン
魔法陣が激しく輝き、僕の視界は白い光に包まれた。
浮遊感。
重力が消える。
身体が、どこか遠くへ引っ張られていく。
(また、この感覚、、、!)
あの時、杖に触れた時と同じ。
世界が歪み、音が遠のき。
そして――
気がつけば、景色が一変していた。
足元に、確かな地面の感触が戻る。
僕は慌てて周囲を見回した。
そこは――
見覚えのある、焼け焦げた大地だった。
崩れた建物。
黒く染まった地面。
まだくすぶる、焦げた木の残骸。
(ここは、、、東の国、、、)
間違いない。
あの隕石災害の、爪痕だ。




