第十九話 縁の性質
僕はセリナの家で一晩過ごさせてもらった。
東の国へ向かう初日の朝はとても早かった。
この島から出る船は一日に四回しか出ず、朝一を逃すと次は昼前になってしまう。
「シエロもう出られるわよ!」
セリナは昨日支度を済ませている分、すぐに出発できる状態だった。
僕も昨日のうちに少しでも準備をしておけば良かったな。
「もう少しで終わります!」
僕は急いで支度を終わらせて、外で待っているセリナの元へ向かった。
「お待たせしました」
僕が外に出ると、シルバさんが見送りに来ていた。
「身体の方はもう大丈夫か?」
「シルバさん!身体の方はまだ完全ではありませんが、何故か痛みが一気に引いたんですよね」
今思えば背中の骨も折れているはずなのに、痛みを感じない。
所々に負った火傷も引いていた。
「ほっほ、それは良かったの」
「もしかしてシルバさんが僕に何か凄い治療を!?」
「知る必要はない。ほれ、船が出る時間が迫っておるぞ」
「ほら行くわよシエロ!」
きっとシルバさんが何かしてくれたんだろう。
僕は心の中で感謝した。
「じっじ行ってくるね!またすぐに戻ってくるから!」
「シルバさん、短い期間でしたがお世話になりました。セリナさんを必ずお守りいたします」
「二人ともくれぐれも気をつけるんじゃ」
シルバさんはそう言うと深くお辞儀をした。
その姿には、まるで本当の祖父が孫を送り出すような温かさがあった。
「あんたが私を守るんじゃなくて、私があんたのことを守るんだからね!」
僕はそのままセリナに引っ張られながら、船乗り場まで向かった。
船のサイズはとても大きいとは言えなかった。
島の規模を考えれば当然で、十人ほどが乗れる程度の小さな船だった。
僕たちは舟券を渡して乗船した。
「そう言えばシルバさんから、セリナさんのご両親が東の国にいるかもしれないって聞きました」
「あっ、そうなの。もしかして私が探そうとしているのも?」
「は、はい、、、」
「そうなのね。両親に情は湧かないって言ってたくせに探してるっておかしな話よね」
やっぱりどんな環境でも親というものは、頭のどこかに必ず存在するんだろうな。
今頃僕の家族はどうしているだろうか。
早く僕が戻って安心させないと。
「でもね、情が湧かないってのも嘘じゃないの。だってママとパパの顔も知らないんだもん」
「セリナさんのご両親はいつから居なくなったのですか?」
「じっじが言うには私が一歳の時だって言ってたわ」
本当に物心が付く前から居なくなったのか。
必ずご両親を見つけて、なんで居なくなったかも聞かないといけない。
「それは大変でしたね。必ずご両親を見つけましょう」
「それより先にあんたの家族と友達の安否確認するわよ!」
「ありがとうございます。必ず両方の目標を達成させましょう」
それから僕たちはしばらく船に揺られていた。
校外学習の暇つぶしと思い、前に買った何処の誰かも分からない日記を持ってきていた。
常に鞄に入れていたから一緒に付いてきたのだ。
(そう言えば最近読んでいなかったな)
僕は少し遡りながらその日記を読み返すことに決めた。
四月八日、今日は星が良く見える。とても綺麗だ。
四月九日、今日は魔術の練習を沢山行った。他人の家の窓ガラスを割ってしまった。急いで逃げたのでバレずに済んだ。
(ハッ、相変わらずつまらない日記だ)
だが読んでいると一つ、目に止まる日記の内容があった。
五月十日、隣国に隕石が落ちた。たまたま仕事で隣国に行っていた父が巻き込まれた。何故神様はこんな残酷な事をするのだろうか。
(まさか、この人も少し形は違うが僕と似た状況になっているじゃないか)
すると僕が読んでいる日記が気になったのか、セリナが後ろから覗き込んできた。
「シエロ、それ何読んでるの?」
僕はなんとなく読まれたくなくて、とっさにその日記を隠した。
「こ、これは僕の日記でして、、、」
「なんで日記隠すのよ?」
「日記読まれるのって恥ずかしいじゃないですか、、、」
そう聞くとセリナは案外あっさりと諦めてくれた。
「そう、じゃあ見ないであげるわ」
「あ、ありがとうございます」
「私も日記書こうかしら!」
「いいじゃないですか!」
そう言うとセリナは自分の鞄を漁り始め、大きな紙とペンを取り出した。
「日記を書くにしては大きな紙ですね」
「私は暇な時に絵をよく描くのよ。今はこの紙しか無いの」
絵を描くことが好きなのか。
将来は芸術家にでもなるのかな。
「普段はどんな絵を描いてるんですか?」
「別に大したことないわよ。外の景色を見てそれを模写するくらいかしら」
「凄く素敵じゃないですか!」
「今度シエロの似顔絵を描いてあげるわ!」
「カッコよく描いてくださいね?」
僕はセリナと話しているうちに、少しだけ気持ちが楽になったというか、ずっと早く家に戻らないとという焦りが薄れていった。
なんやかんやセリナと話していると、南の国の本島の船着場に到着した。
(まずはここまで戻って来れた)
僕が校外学習で行った祥雲の平地とは真反対な光景だった。
隕石が落ちた形跡もなく、白い外壁にオレンジ色の屋根が綺麗に並んでおり、街も賑わっていた。
港町特有の潮の香りと、市場から漂う魚の匂いが混じり合っている。
「セリナさん、ここからどうやって東の国に向かうのでしょうか?」
ここまで来たものの、東の国まで向かう道のりは分からない。
「その前に腹ごしらえよ!」
「えぇ!?いきなりご飯ですか?僕はなるべく早く向かいたいのですが、、、」
早く家に帰って状況を確認したい。
家族の顔を見るまで、この胸の奥の不安は消えないだろう。
「あんた馬鹿ね。あんた一人で東の国までの道のりわかるわけ?」
「そ、それは、、、」
「だったら私についてきなさい!それにこの先いつ、まともなご飯が食べられるか分からないからね!」
セリナの言っていることは間違ってはいなかった。
確かに今急いだところで何か状況が変わるわけでもないし、セリナがいないと東の国にも行けない。
今はセリナについて行くしかなかった。
「分かりました。まずはご飯を食べましょう」
「私はお肉が食べたいからステーキ屋さんに行くわよ!」
そう言えば僕はお金を持っていない。
ステーキとなると結構な金額になるだろう。
「すみませんセリナさん。そう言えば僕、お金を持っていません」
僕がそう言ってもセリナは特に驚く様子もなかった。
「お金なら問題ないわよ!じっじが沢山くれたから!」
「いいんでしょうか、僕まで、、、」
「じっじがシエロの分までって言ってたわ!」
シルバさんありがとうございます。
必ずセリナのご両親も見つけてみせます。
「ありがとうございます。それではステーキ屋さんに向かいましょう!」
そうして、僕とセリナはお腹いっぱいにステーキを食べた。
とても高い値段ではなかったが、久しぶりに旨味成分しか含まないような肉を食べた瞬間、食欲が止まらず結構な量を食べてしまった。
すみませんシルバさん。
それから鞄に入るくらいのサイズのガラス瓶に入った水を数本買っておいた。
さらにセリナ曰く、少し砂漠地帯や色んなところを歩き回るとのことなので、風通しも良く動きやすい格好に着替えた。
「よし!行くわよシエロ!」
そう言うとセリナは大きな紙を広げて持った。
「セリナさん、それは地図ですか?」
「そうよ!じっじがくれたの!なるべく安全で歩きやすい道の地図を!」
シルバさんは本当に凄いな。
あの時「私がいないと東の国に行けないでしょ」とか言っていたが、セリナもシルバさんのその地図がなければ行けないじゃないか。
「とりあえずこの街から抜けるわ!私についてきなさい!」
僕はそんなセリナの後ろを歩いて付いて行った。
数時間歩いていると、建物も減り街から抜けたようだ。
地面も舗装された道から、獣道のような道に変わり始めた。
シルバさんの地図のおかげで魔物にも出会わずに、安全に進んでいる。
「ちゃんと街から抜けられましたね」
「当たり前よ!誰が先頭にいると思っているのよ!」
大口を叩いているけれど、ちゃんと役割をこなすから嫌な気持ちにもならない。
むしろ頼もしささえ感じる。
「セリナさん、ありがとうございます」
「その、、、そのさん付けるのやめなさい!」
「さん付けですか?一応歳も上ですし、、、」
「一つだけじゃない!それにシエロなら呼び捨てでも問題ないわ!」
なんだかこの会話をするのは初めてではない気がする。
セリカともこんな会話をしたっけな。
胸の奥がキュッと締め付けられる。
「で、では今からセリナと、、、呼ばせていただきます」
「い、いいわよ」
少しだけ気まずい時間が続いてしまったが、気がつくとあたり一面が白い砂で広がっている砂漠地帯まで来ていた。
南の国は自然が豊かで有名な国だが、こういう場所もあるんだな。
「いつの間にか砂漠地帯になっていますね」
「そうね。この砂はビーチの砂浜の延長線みたいなものよ。大きすぎる砂浜って思っておけばいいわ」
なるほど。だから普通の砂漠の砂と違って白く、所々に貝殻も落ちているわけか。
風が吹くたびに、砂が舞い上がって幻想的な光景を作り出している。
「でもあれですね、こんな場所を歩いているのは僕たちだけみたいですね」
「当たり前じゃない!今は国の警備隊も少ないし、いつ魔物に襲われるかなんて分からないもの。それに私たちが歩いている道は正規のルートじゃないからね」
なんだかあれだな。
シルバさんの地図が優秀なのは分かるんだけれど、あまりにも順調すぎる。
何かこの後大きなことが起こりそうな予感がする。
いかんいかん、僕の予感は何故かいつも当たる。
こんなことを考えてはいけない。
安全に東の国に着くのが一番だ。
しかし僕の予感はしっかりと当たった。
突然、白い砂浜全体が揺れ始めた。
「シエロ!」
僕とセリナは背中を互いに合わせた。
「セリナ、一体これは、、、」
「分からないわ!だけどこの揺れ、どんどん私たちに近づいてきてるわ!」
その揺れは僕たちに向かうようにどんどん近づいてくる。
地面を伝わる振動が足の裏から伝わり、心臓の鼓動と重なって不安を煽る。
そしてその揺れは僕たちの足元に到達した。
「シエロ!下よ!」
セリナの叫びと同時に僕たちの足元から、砂色の細長い流線型の身体をした魔物が大きな牙を付けた口を開け、僕たちを飲み込もうと襲い掛かってきた。
僕たちはその攻撃をギリギリでかわした。
「シエロ大丈夫!?」
「はい!セリナも無事ですか!」
「えぇ問題ないわ!それよりシエロ、こいつは何!?」
砂色の細長い流線型の身体、大きく裂けた口に鋭い牙がびっしり。
それに体側面にヒレ状の器官。
間違いない。本で読んだ時の記憶が間違っていなければこいつは――
「こいつは砂漠の鮫、デザートレイス。上級魔物です」
デザートレイスは砂煙を巻き上げて僕の視界を遮り、身体をくねらせながらセリナに突進する。
「まずは私から狙うなんて。私の方が弱く見えたのかしら」
突進してくるデザートレイスに躊躇なく、真正面で立ち向かうセリナ。
セリナは腰に添えていた小さな斧を手に取る。
(あんな小さな斧で立ち向かうのか!?)
デザートレイスは大きな口を開けセリナに飛び掛かる。
セリナは身体強化を発動させデザートレイスをかわし、上空に飛び上がる。
そして手に持っていた小さな斧に縁を込めると、斧は見る見るうちに大きな戦斧に変形した。
そしてそのまま一振り。
「おりゃぁぁぁぁ!!」
ドガァァァァン
セリナの一振りによって、デザートレイスは真っ二つに斬れた。
白い砂に青い血が飛び散る。
「私を狙ったことを後悔しなさい!」
僕はセリナの戦闘スタイルに見入っていた。
武器を変形させる魔術なのか、それとも特殊な魔道具なのか。
どちらにしても、その実力は本物だった。
しかしそんな時間はなかった。
デザートレイスは一匹ではなく複数存在していた。
先ほどのセリナの実力を見たせいなのか、二体のデザートレイスが僕に襲い掛かってきたのだ。
「シエロ、下よ!」
僕を挟むように下から同時に襲い掛かる。
左右から迫る二つの巨大な口。
逃げ場は無かった。
僕はとっさに地形創造で自分ごと上に飛ばす土台を作り上げ、間一髪で回避する。
デザートレイスの攻撃によって、土の土台は粉々に砕かれ僕は下に落下する。
僕を援護しようとセリナが走って向かってくるが、デザートレイスがセリナに砂煙をまき散らし行動を鈍らせる。
(まずい、このまま落ちれば僕はこいつらの餌になってしまう)
僕は杖を握り直し、縁を練る。
空中で体勢を整えながら、下にいるデザートレイスに狙いを定めた。
「炎斬!」
炎を纏った斬撃がデザートレイスを捉え、焦げた肉の匂いと共に青い血が砂に飛び散る。
しかしもう一体のデザートレイスは仕留めきれなかった。
砂に潜り、再度僕たちの死角をつき襲って来ようとしている。
セリナは砂煙を払い、僕の元へ走ってくる。
「まだ後一体、砂の中に潜んでいます!注意してください!」
僕の声を聞くとセリナはその場で立ち止まり、警戒態勢に入る。
戦斧を構え直し、足音を殺して周囲を見回している。
デザートレイスは砂の中で僕たちの周りを回るように泳いでいる。
泳ぎがどんどんと速くなり、濃い砂煙が舞い上がる。
視界が悪くなる前に、僕はすぐに風を起こしその砂煙を薙ぎ払った。
その瞬間――セリナの背後からデザートレイスが飛び出してきた。
巨大な口を開け、牙を剥き出しにして。
「セリナ、後ろです!」
「任せなさい!」
セリナは振り返ることなく、戦斧を下から上へと振り上げた。
完璧なタイミングで、デザートレイスの下顎を捉える。
「おりゃぁぁぁぁ!」
ガキィン!
鈍い音と共に、デザートレイスの顎が砕け散る。
青い血が噴水のように舞い上がった。
デザートレイスは勝てないことを察したのか、背中を向け砂に潜り逃げようとしていた。
しかしそれを見逃すセリナではなかった。
砂の中に潜ろうとするデザートレイスの尻尾を、戦斧で思い切り叩き上げる。
ドガァン!
デザートレイスは大きな悲鳴を放ちながら、高く宙に飛び上がる。
その浮いたデザートレイスを、僕が待ち構えていた。
「旋風斬!」
複数の風の刃が交差し、デザートレイスを網目状に切り刻む。
宙で青色の血しぶきが花火のように散り、やがて砂の上に肉片となって降り注いだ。
静寂が戻る。
僕とセリナは息を整えながら、互いの無事を確認した。
「シエロ!あんたやるわね!あの斬撃を無詠唱で発動できるの!?」
セリナは砂を蹴り上げながら僕の元へと駆けてきた。
「セリナこそ、その小さな斧は魔道具でしょうか?」
「これはただの斧よ!」
セリナは小さな斧を再び手に持ち、縁を込めて大きくした。
斧の刃が陽光を反射してきらめく。
「私の得意な魔術、変幻自在。対象の物に縁を込めることによって、サイズの大小を変えることが可能なの。私の縁の性質上、この魔術が一番発揮できるってじっじに言われたわ」
縁の性質?
聞いたことがない。
縁の性質云々というより、縁は縁で皆同じではないのか。
「縁の性質ですか?」
「そうよ!みんな生まれつき縁の性質が違うの。全く同じ性質の縁は生まれないのよ」
ということは僕と兄も同じ縁を持っているわけではなかったのか。
兄の縁具現化と僕の斬撃、確かに全然違う分野だ。
「だからあんたの縁はその斬撃系が一番合ってるから、無詠唱でも発動できるんじゃない?」
「い、一応斬撃系以外でも無詠唱で唱えることはできるんですけどね、、、」
でも初めて斬撃の魔術を使った時も、特にイメージもせずにとっさに発動して成功した。
もしかしたらセリナの言う通り、僕の縁は斬撃系が向いているのかもしれない。
「はぁ!?あんた斬撃以外も無詠唱で発動できるの!?」
「え、えぇ、一応今のところは全て、、、」
「あんた中々やるみたいね」
セリナは僕の実力を見直したのか、魔術の面では大きな口を叩くことは少なくなった。
それからしばらく歩きながら、縁の性質の話の続きをした。
基本属性については性質関係なく扱えるらしい。
かといってリリア先生みたいに高いレベルで扱えるかは別の話だが。
東の国に近づくにつれて、魔物と遭遇する確率が上がった。
初級や中級魔物を相手に試しに、僕はセリナの変幻自在を、セリナは僕の斬撃魔術をイメージして発動しようと試みたが、どちらも上手くいかなかった。
やはり縁の性質というものは確実に存在するらしい。
「結構歩きましたね」
「そうね、地図を見る限りこれでやっと十分の一くらい進んだわ」
(え、まだ十分の一!?)
僕たちは魔物との戦闘などで、ペースは良いとは言えなかったがそれでも白浜の砂漠地帯は抜けた。
それでも東の国までは、まだまだ長い道のりだった。
「魔物も少なくなってきたし、この辺で休むわよ!」
「分かりました!」
僕たちは大きな木の下で火を焚き休むことに決めた。
日も沈み辺りも薄暗くなっていた。
ご飯は、シルバさんからもらった干し芋と途中で倒した魔物の肉を試しに焼いたもの。
魔物の肉は青白く、何とも食欲をそそらない色をしている。
「本当にこの肉食べられるんですかね、、、」
「でも見た目は悪くないわね」
「セリナからどうぞ」
「そう?じゃあ遠慮なくいただくわ」
そう言ってセリナは焼けた魔物の肉を手に取り、躊躇なくかぶりついた。
(まじか、、、セリナはあれだな。怖いもの知らずだ)
「どうですか?食べられそうでしょうか?」
セリナはもぐもぐと噛みしめ、ゴクリと飲み込んだ。
少しの間沈黙が続く。
僕は固唾を飲んでその反応を待った。
「セ、セリナ、、、?」
すると突然両手を上げセリナが立ち上がった。
「美味しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃー!」
その声は静かな大地に響き渡った。
木に止まっていた鳥たちが一斉に飛び立つほどの大声だった。
「シエロ!早くあんたも食べなさい!この肉めちゃくちゃ美味しいわよ!」
「本当ですか!?」
まだ少し抵抗はあるが僕もお腹が空いているので、大きくかぶりついた。
噛むと少し獣臭い感じはするが、ちゃんと肉肉しい味がして美味しかった。
父が狩ってくる猪の肉にも似ている。
「本当ですね!これは美味しいですね!」
「でしょ!今日はこれを食べて明日に備えるわよ!」
「はい!」
それから僕たちはご飯を食べ終え、土魔術で壁を作り囲んだ。
外からの風や魔物の視線を遮るための簡易的な砦だ。
鞄を枕代わりにし、横になって寝た。
そして、次の日。
寝心地は最悪で、あまり寝付けなかった。
起き上がれば、首や腰がとても痛かった。
地面の固さと寒さで、何度も目が覚めた。
まだセリナはぐっすり寝ていた。
(凄いな、よくこんな環境で爆睡できるな)
僕は起き上がり、朝日を前に身体を伸ばした。
身体のあらゆるところからバキバキと音が鳴る。
冷たい朝の空気が肺に入り込んで、少しずつ意識がはっきりしてくる。
するとセリナも起きてきた。
「おはよーシエロ」
「おはようございますセリナ!」
「あんた朝から元気ね」
「早く家族の顔を見たいんです。きっと僕のことも心配していると思うので」
(母、父、兄、すぐにそちらに向かうのでどうか無事でいてください)
心の中で何度も祈った。
その祈りが届くことを信じて。
「そうね、私もゆっくりし過ぎたわ。支度してすぐに出るわよ」
「あ、いえいえ!急かすつもりでは、、、」
「いいのよ。私があんたの立場だったらきっと同じこと思ってたわ」
セリナの言葉に、僕は少し救われた気がした。
それから僕たちは干し芋と水で簡単な朝食を済ませ、再び東の国へと歩き出した。




