表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まじわり輪  作者: がおがおの
第二章 少年期編
16/24

第十五話 この世界の噂

「セレスティアは何処にいるのでしょうか!?」


父は少し真剣な顔をした。


「分からん」

「え?」

「セレスティアにそもそも会ったことある人は、ほとんどいないからな」

「もしかして雲の上に暮らしてるとかでしょうか?」

「否定はできんな」


(まじか)

今のは冗談のつもりだった。

でも存在しているのは嘘ではないと思うし、会ったことない人がほとんどなら、その可能性は捨てきれないということか。


「もしかして、おとぎ話に出る古龍族とかも存在するんでしょうか?」

「恐らくな。父さんが見たわけじゃないけど」

「俺も学校で聞いたことがある。この世には僕たちがまだ知らない、いや知ることができない存在が山ほどいるって」


(なんだ、その男の本能がそそる話は)


「聞かせてください、お兄様!」

「聞きたいか?」

「はい!」


稽古を辞め、僕は兄から話を聞いた。

どれもおとぎ話や神話に出るような話ばかりだった。


この世界には、六人の特定の分野に長けた『六皇神(ろくおうしん)』というものが存在するらしい。

剣士、武闘、魔法、竜、悪魔、神。

それぞれ、剣皇神、武皇神、魔皇神、竜皇神、魔皇神、神皇と呼ばれているらしい。

リリア先生が言っていた神級になっても、六皇神(ろくおうしん)というものは名乗れないとか。

さらにそれとは別に、『原初の七柱』と呼ばれるものがあるらしい。

「殲滅の魔女」「終焉を呼ぶ者」「銀の賢者」「万象の女王」「因果の断罪者」「星辰の支配者」「原初の古龍」

正直この辺りから理解ができなかったが、セレスティアもその中の一人だ。

(この世界って、思っていた以上に壮大なんだな、、、)

兄の話を聞いていると、自分がいかに小さな世界で生きていたかを思い知らされる。

でも同時に、ワクワクする気持ちも湧いてきた。

いつか僕も、そんな存在たちと出会うことがあるのだろうか。


あれから数日。

今日は家族そろって、サフラニアに出かけることになった。

そう言えば、セリカからサフラニアを案内してもらう約束をしていたが、家族で行く前に行くっても良いのだろうか?


「皆、準備は出来ましたか?」


皆、いつもよりお洒落な格好をしている。

特に母の気合いの入り方は、群を抜いている。


「母さん、とっても可愛いじゃないか!」

「そうかしら?」

「あぁ、そのコートもとってもお似合いだ」

「久しぶりに、あなたの口から可愛いって聞けて良かったわ」


なんだろう。

いつもは何も感じないけれど、今の会話はなんだか父が羨ましかった。

こんな美人な母と結婚できるなんて、幸せ者だ。

畜生!!

僕たちは馬車に乗り、サフラニアに向かった。


「お母さん、サフラニアに来るの久しぶりだわ」

「よし、まずは飯を食おう、飯を!」


兄はその話を聞くと、一歩前に出た。


「お父様、行きたい店があるのですが、お昼は俺に任せていただいてもよろしいでしょうか?」

「おっ!ソルのセンスが試される時だな」

「お母さんも、ソルの行きたいところがあるなら、そこに行くわ」


父も母も、兄の提案に乗った。


「シエロ、お前も良いか?」

「別に、どこでも構いません」


(すでに選択肢はないと思うが)


「では行きましょう。ここからそう遠くはありません」


僕たちは兄について歩き、十分程歩いたところで兄が止まった。


「こちらです!」


兄が案内したのは、肉料理をメインとするステーキハウスだった。


「ここはステーキハウスか?」


いつも父の狩りの影響で肉料理を食べている自分からすると、また肉かと思う部分はある。

兄は寮生活を始めてから、あまり肉を食べていないのか?


「実は学校の友達がここで働いていて、食べに来ると約束したものでして」

「素敵なお話ね。早速入りましょうか」


僕たちはそのままステーキハウスに入った。


「いらっしゃいま―――って、ソルじゃん!まじで来たのかよ!」

「まじでってなんだよ!うちの家族も連れてきたんだ。もてなし頼むぜ」

「任せておけ!店長に美味い肉用意させておくぜ!」


兄の陽気な友達の接客を受け、僕たちはステーキを食べた。

肉は確かに美味しかったが、いつも食べ慣れているせいか、そこまで特別感はなかった。

でも、家族みんなでこうして外食するのは久しぶりで、楽しい時間だった。


それからはショッピングをしたり、観光をしたり各々やりたいことをして楽しんだ。

僕はこれといってやりたいことは無かったが、古本を取り扱っているお店で見たことのない本を母に買ってもらった。

この本を買う時、母は少し不安な顔をしていた。

それもそのはず、その本は絵も何もなくただ文字が書いてあるだけで、内容も誰かの一日の出来事が書かれている。

どこの誰かも分からない奴の日記だ。

何故、僕がどこの誰かも分からない奴の日記を買ってもらったかと言うと、日記の内容が面白いと感じたからだ。

例えばこの日なんて『二月七日、今日はひどい夢を見た。目玉をほじくられ、舌までちぎられた夢だ。最悪だ』こんなしょうもない夢だけを書いている。

この作者がどんな一日を過ごしたのか、一日一ページ読もうと思った。


まぁこの本(日記)についてはまたどこかで語ろうじゃないか。

その後は太陽も沈み始めたので、家に帰った。

家に帰ってからは特に変わったことはしておらず、ご飯を食べて、学校の課題をして寝る。

そんな毎日を過ごし二週間。

今日は僕の七歳の誕生日だ。


誕生日だからと言っても、そこまで気分が高くなることもない。

毎年このイベントが来るからだ。

かといって家族から祝われて嬉しくないなんてことはない。

いつもより少し豪華なご飯を食べて、ケーキも食べる。

それから、母、父、兄から一つずつプレゼントをもらう。


「シエロ誕生日おめでとう。これはお母さんからです」

「ありがとうございます。お母様」


母のプレゼントは立派なリュックだった。


「旅に行くなら大きなリュックが必要でしょ?」

「お母様!こちらは大事に使います!」


母は覚えていてくれたんだ。

あの時さりげなく、『いつかリリア先生と旅に出る』と言った言葉を。


「母さん、シエロが旅に出るのはまだまだ先の話じゃないか?」

「いいのよ。こういうのは気持ちが大切なんですよ」

「気持ちにしても早すぎるがな、、、」


父がゴタゴタ話している隙に兄がプレゼントを渡してくれた。


「誕生日おめでとう。ようやく一人で起きられるようになったシエロにはこれがお似合いだ」

「あ、ありがとうございます」


やっぱり兄は一言余計だ。

次稽古する時に分からせてやろう。

兄からもらったのは部屋着だった。

裏起毛でこの寒い冬にはぴったりな部屋着だ。

まぁ普通に嬉しかった。


最後は父だ。

父のプレゼントは毎年微妙だ。

去年は鹿の角。その前の年なんて、酒瓶で作った椅子だった。

どうせ今年も似たようなものだろう。


「最後はお父さんからだ」


父から渡されたのは、一枚の紙だった。

その紙は何重にも折られており、どう見てもゴミにしか見えなかった。


「お、お父様、、、今年は何でしょうか、、、」


父に期待はしていなかった。

むしろ期待通りなのかもしれない。


「これは自分の部屋で一人で見てくれ。お前の為になる」

「僕の為ですか?」

「そうだ、立派な魔術師、、、いや男になるものだ」


立派な男!?

もしかして今年はとんでもない物をもらったのかもしれない!


「ありがとうございます!早速部屋に戻って見てみます!」


僕はすぐに自分の部屋に戻った。


「あなた、またシエロに変なものを渡したんじゃないでしょうね?」

「今回は力作だ!きっとシエロも喜ぶさ!」


僕は早速父からもらった紙を広げた。

その紙には父の字で埋め尽くされていた。

どれどれ、、、これが立派な男になる為、、、、


「ゲッ、、、」


僕はすぐにその紙を切り刻み捨てた。

僕はその日からしばらく父を無視した。

たまに魔術で嫌がらせもしてやった。

因みにあの紙に書かれていたのは、セリカへの恋の進め方と、若い時の遊び方が()()で書かれていた。


それから数週間。

父のことも許し、休みが明け学校が始まった。

久しぶりの学校は少し楽しみだった。


「おはようシエロ!」

「おはようございます。セリカ」


久しぶりにセリカと会った。

少し見ないうちに髪が長くなっている気がする。


「シエロこれあげる!」

「これは何でしょうか?」


セリカは少し頬を赤くし、慣れない手つきで茶色い布に包まれた袋を渡してきた。


「シエロ誕生日だったでしょ?だから、その、、、当日渡せなかったから今渡してるのよ!」


嬉しい。

セリカが僕の為にプレゼントを用意してくれたのだ。

誕生日の日に手紙では言葉をもらっていたが、まさかプレゼントまでもらえるとは思わなかった。


「い、いいのでしょうか!」

「だから渡してるんでしょ!早く受け取りなさいよ!」

「ありがとうございます!」


セリカからプレゼントを受け取ると僕はすぐに開けた。

中からは黒色の革で作られた、かっこいい手袋が入っていた。

それも凄く良い革だと見ただけで分かる。


「こんなに素敵な物、ありがとうセリカ!!」


僕はすぐにその手袋を身に着けた。

かっこいい。

手袋を身に着けるだけで、一気に見た目に高級感が出た。

流石マーガレット家だ、用意する物のレベルが違う。


「どうですか!似合っていますか!?」


セリカは少し恥ずかしそうだったが、嬉しさが勝っているのか凄く満足そうな顔をしている。


「に、似合ってるんじゃない?」

「流石セリカですね、物選びのセンスが良いです」

「当たり前じゃないの!それ私が作ったんだから!」


まさか、この手袋をセリカが作ったと言うのか。

しかも本革の手袋だ。

僕が以前作ったぬいぐるみですら難しかった。

セリカにここまでのセンスがあるとは思いもしなかった。


「これセリカさんが作ったのですか!凄すぎますよ!」

「この前先生に渡してたぬいぐるみを見て、笑いそうになったのよ!だから私が本物の裁縫を見せてあげたかっただけよ!」


兄と似て一言多いが、流石にこのクオリティの物をもらうと反論は出来なかった。


「セリカありがとう!寒い時は常にこれを使いますね!」

「ちゃんと使いなさいよ!」


僕は今日一日とても機嫌が良かった。

休み時間の時に後ろからセリカに飛びかかられたりしても、広い心を持って許せた。


それからは特に変わらずに、学校に行き帰ってきて魔術の稽古をしての繰り返し。

休みも明けたことによってセリカもちょくちょく家に来て、また一緒に稽古をした。

最近は自国王家候補で家が騒がしいらしく、来る回数は前よりは減っていた。


そんな日々を過ごしているうちに、季節は巡り、僕たちは八歳になった。

セリカの家の事情はより複雑になり、彼女が家に来ることはさらに少なくなった。

それでも学校では相変わらず元気で、僕との魔術の腕比べも続いていた。

父の狩りに同行することも増え、僕の実力は着実に向上していた。


九歳になる頃には、リリア先生からもらった杖もかなり使いこなせるようになった。

勿論、リリア先生が見ればまだまだ未熟だと思うだろうが。

父と一緒に森に入ることも日常となり、今の僕の実力では杖を一振りすれば大抵の魔物は倒せるようになっていた。

ただ昔戦ったアルビオンブレイザー程の魔物とは遭遇していない。


そして時は流れ、春。

僕もセリカも十歳になった。

学年も三つも上がり四年生になった。

僕はいつも通りに学校に向かい、新しい四年生の教室に着席した。


「おっはようシエロ!」

「おはようセリカ」

「また同じクラスね!」

「そうですね」


学年が上がるたびにクラス替えが行われる。

セリカとは四年連続一緒だ。


「チッ、またお前らと一緒かよ」

「ルイドス何よその言い方!私と同じクラスなんだからもっと喜びなさい!」

「あら、またあなたと一緒ですか。シエロ・アルランド」

「お、おはよう。ルージュナさん」


そう、ルイドスとルージュナもまた四年連続同じクラスなのだ。

ルイドスとはあの事件以来、一枚見えない壁を挟んでるみたいだった。

そして―――


「はい、皆さん席に座ってください。朝の会を始めます」


そう、リリア先生の後任リント先生もずっと僕の担任だった。

始めはスカラルト家の差し金だと思っていたけれど、本当にただの学校の先生だった。


「では、えーと、、、今日から四年生、つまり低学年を卒業したということで、いよいよ魔物を相手にする実践授業が始まります」


先生がそう言うと、教室の中は不安になる声とやる気で満ち溢れている声の二つに分かれていた。

勿論セリカは、、、


「やっと授業で魔物と戦えるのね!どんな魔物でも私の拳で一撃よ!」


やる気で満ち溢れていた。


「静かにしてくださーい。魔物と言っても学校が管理している個体なので、そんなに怖がらなくても大丈夫だと思います。それと、君たちはまだ四年生なのでスライムなど初級魔物としか戦えません」


まぁそうだろうな。

普段から山に入って魔物を狩ったりしている身とすれば、学校で管理されている初級魔物なんて相手にならないだろう。

当然セリカや他の手慣れた子も同じだろう。


「それと、知っていると思いますが、来月に一泊二日の合宿もあるのでお父さん、お母さんにも念のため伝えておいてください」


教室内は合宿で大盛り上がりだ。

四年生になると、初の校外授業として合宿が行われる。

勿論授業の一環だが、僕たち子どもにとってはちょっとした旅行なのだ。


「以上。朝の会を終わりまーす。各自授業の準備をしておいてください」

「ねぇシエロ!合宿楽しみね!」

「そうですね!皆さんと校外に出ることなんて滅多にありませんから」


午前中は座学を受け、午後からは遂に授業で初めて魔物と戦う。

軽く僕の凄さをみんなに再確認させるとしますか。

僕たちは校舎から少し離れた、岩で囲まれた場所へと移動した。


「よぉしお前たち良く聞け。対魔物の授業を担当するブリジット・サンダーストライクだ」


げっ、、、あの先生って入学式の時に怖かった女の先生だ。

てかサンダーストライクって、本当にそのまんまの名前だな。


「既に知っている人はいると思うが、私は他の先生みたいに優しくはない!既に年齢に比例していない実力を発揮している者が数名いると聞いているが、そんなことどうでもいい。私がどれだけ熱心に授業を受けているかを判断する。以上」


ブリジット先生の厳しい挨拶が終わった後は、いよいよ実践授業だ。


「まず最初に、お前たちの実力を把握する。一人ずつ前に出て、あそこのスライムを相手にしろ」


ブリジット先生が指差した先には、ぷるぷると震える青いスライムが檻の中にいた。


「ただし!」


先生の声が一段と大きくなる。


「魔術は初級のみ。それ以上の魔術を使った者は即座に減点だ。私が見たいのはお前たちの基礎力と判断力だ」


なるほど。

普段使っている中級以上は使えないというわけか。

しかし、そんな問題は無い。

普段から基礎の練習をしている為、初級魔術でも簡単に倒せるだろう。


「では、出席番号順に前へ出ろ」


先生が名簿を確認する。きっと最初の方の子は緊張でガチガチだろう。セリカはどうするつもりだろうか。

先生の言葉を無視して、最大火力とか出さなければ良いのだが。

出席順でどんどん始まっていく。

皆ファイアボールやウィンドブロウなどでスライムを攻撃していく。

流石にスライムは皆余裕で倒していく。


「次、前へ出ろ」


いよいよ僕の出番だ。

さてどの魔術を使おうか。

どの魔術を使えばあの強面の先生を満足させられるだろうか。

僕はそんなことを考えながら縁を練る。

僕は何となくウィンドブロウを発動した。


僕の目の前にいたスライムは、跡形もなく消えた。

スライムの破片も残さずに、削り取った。

普段からリリア先生からいただいた杖を使って練習している分、初級魔術でさえ初級の枠をはみ出した威力になっていた。

周りの生徒からは「やりすぎだ」とか「初級魔術以外使った」など色々飛び交った。


「ただの初級魔術なのに随分皆騒がしいわね」

「自分でも結構な威力が出てびっくりしました。セリカも気をつけてください。自分が思っている以上に成長しているみたいです」


ブリジット先生は特に何も言わなかった。

そのまま次々とみんなが魔術を発動していく。


「はい次、前へ出ろ」


次はセリカだった。

僕は少し離れた場所で見ていた。

少し心配だ。

セリカが大技を出したりしないか。

未来が見える魔術があれば今すぐ使いたい。


「やっと私の番ね!」


セリカは右腕を回しながらスライムに近づく。

セリカは右こぶしを腰に持っていき、そのまま縁を練る。

その縁の量は僕以上に大きい。


「みんな見てなさい。これが私のパンチよ!」


おいおいおいおい、本当に大技を出すんじゃないだろうな!

セリカが溜めた縁を拳に宿す。


そして――


「どりゃぁぁぁぁ!!」


バァゴォォォン


なんとセリカは魔術を使わずに、純粋な拳だけでスライムを破壊した。


「へっへーん!皆見た!私のパンチ!」


周りからは歓声が上がる。

セリカも満足げな表情だ。


だが――


ブリジット先生がゆっくりとセリカに近づいてくる。


コツンコツン


「あっ!先生!どう?凄かったでしょ!あんな奴魔術なしでも一撃よ!」

「セリカ・マーガレット」


ブリジット先生の目つきがさらに鋭くなる。


「減点だ」

「えっ!?」

「私が見たいのは初級魔術を使ってお前たちの基礎力と判断力と言ったはずだ」


セリカはこの授業での肝心なことを忘れていたのだ。


「で、でも先生凄かったのは本当でしょ!」

「もう一度言おう。私が見たいのは初級魔術を使ってお前たちの基礎力と判断力だ」


ブリジット先生の声も低く重い声に変わる。

確かにブリジット先生の言っていることは正しい。

これでセリカのプライドが傷つかなければ良いのだが。


「だが、あのスライムを前にして魔術を使わずに倒せると思った判断だけは評価してやろう」


ブリジット先生はセリカの判断能力については評価したようだ。

最悪の評価は免れたが、セリカはあまり納得がいっていないようだった。

それから全員の初めの実戦課題を終えた。


「お疲れセリカ」

「、、、」

「まぁまぁまだ始まったばかりじゃないですか!セリカならここから巻き返せますよ」

「う、うん」


(相当落ち込んでいるな。やっぱりセリカみたいなプライドの高い人は、一つの失態で落ち込んでしまうのだろう)

でも、らしくないな。

いつもなら「当たり前よ!」なんて言っているのに。


「セリカどうかしましたか?」

「え?何もないわよ!早く次の課題で挽回したいわ!」


嘘が下手くそだ。

だがまぁ、僕が深掘りする必要はない。

それから少し休憩をし、すぐに次の課題が与えられた。


「次は三人一組で協力をして、ゴブリンを倒してもらう。組む相手はこちらで指定する」


次は協力戦か。

スライムと同級ではあるが、スライムよりも攻撃的だ。

恐らくこれも一人で倒すのではなく、協力することが求められるんだろう。


「この課題で私が見たいのは、協力性だ。自分だけが目立ちたいとかそういう考えがある者には分かるな?」


ブリジット先生は複数名に視線を送った。

勿論セリカも含まれていたが、首を横に振り不貞腐れていた。


「それでは組み分けを発表する」


組み分けでは先ほどのスライムの課題の結果で分けられていた。

恐らく実力があるものが固まらないように振り分けられていた。

僕とセリカも違う組になった。


「よろしくなシエロ!」

「よろしくお願いいたします。シエロ君」


僕の組は委員長をしているメルといつも元気なガルベットだ。

正直二人ともあまり話したことはない。


「よろしくお願いします」


自己紹介をしていると早速第二の課題が始まった。

まずはルージュナの組からだ。


「皆さん準備は良いですか?私にしっかり続くのよ。オッホホホホホ」


ルージュナはいきなりゴブリンに火の縄のような魔術で拘束した。


「今ですわお二人とも」


ゴブリンがルージュナの魔術で身動きを取れない間に残りの二名が止めを刺した。

ルージュナの火魔術は僕よりも精度が良い。

次はルイドスの組だ。

こちらも同様、ルイドスが土魔術でゴブリンを宙に浮かせ、その隙に二人が仕留める。

二組とも、綺麗な協力性を見せた。


「やっぱりあの二組はすげーな!」

「まぁこの課題のありきたりなやり方ですがね」

「い、意外と委員長って冷たいこと言うよな」


確かにルージュナやルイドスがやっていることは、模範解答みたいなものだろう。

実際僕もゴブリンの足を切り落として、その隙に二人が攻撃をするやり方を行おうと思っていた。


「じゃあ俺たちはどうするんだ?」

「そうですね、私が考えるには協力性+速さ+三人が各自違う形でサポートをするというのが良いですね」

「なるほどな!シエロはなんかいい方法あるか?」

「そうですね、まずは皆さんの得意な魔術を教えてください」


そうして僕たちが次の課題について話し合っていると、次はセリカの組だった。

セリカの気合の入った声ですぐに気がついた。


「よっしゃ行くわよ皆!」


第一の減点が嘘かのようにセリカは元気を取り戻していた。

さて、セリカは協力性を見出せるのか。

先生の合図の元すぐにセリカが動く。


「では、始めろ」

「オリャァァァ」


バァゴォォォン


(おいおい大丈夫なのか?また一人で倒したりしないだろうな)

セリカは強烈なパンチを地面に放つ。

放ったパンチは地面を割り、ゴブリンの足場をなくす。

このまま放置してもゴブリンは下に落ちて倒せるだろう。

しかしそれではセリカの単独撃破となる。


「今よみんな!」


セリカの合図と共に二人が、ウィンドブロウを唱え下に落ちるゴブリンを上に巻き戻す。

上に上がってきたゴブリンをセリカが再度上からたたき落とし終了。

正直言ってセリカの単独撃破に近いが、セリカはとても満足そうだった。


「皆やったわ!上出来よ!」


ブリジット先生はセリカを見ているが今回は何も言わなかった。

そして遂に僕たちの出番がやってきた。


「よし、準備は良いか?」

「ガルベット君しくじらないでくださいね」

「委員長、俺の信頼なさすぎない?」


僕の組は相変わらずこの調子だ。


「よし皆さん作戦通りに協力して素早く終わらせましょう」


ブリジット先生の合図で僕たちの課題が始まる。


「では、始めろ」


まずはメルが僕たちに身体強化魔術を付与する。

何気に初めて身体強化魔術を受けたが、身体が軽くなんでもできそうな感じがした。

ゴブリンが僕たちに向かって突撃してくる。


「ガルベットさん!」

「任せろ!」


カキィィン


ガルベットがゴブリンの攻撃を受ける。


「ありがとうございます。ガルベットさん」


その隙に僕がゴブリンを仕留める。

協力しつつ素早く終わらせ、一人一人の役割がしっかりしている。

これが委員長の作戦だ。


「ナイスー!やっぱお前の魔術すげー精度良いな」

「お疲れ様です。ガルベットさんもゴブリンの引きつけ流石でした」

「お疲れ様」

「お、委員長お疲れー。どうだ俺の防御は!?」

「私の強化魔術をかければゴブリンぐらい、痛くも何ともないでしょう」


相変わらずメルはガルベットには冷たい。


「お疲れ様ですメルさん。メルさんの作戦上手くいきましたね」

「シエロ君こそお疲れ様です。ラストはお見事でした」

「委員長ー俺も褒めてくれていいんだぜー」


こうして僕たちの第二課題は終了した。

縁を多く使った生徒もいたため、少し長めの休憩が与えられた。


「お疲れシエロ」

「お疲れ様ですセリカ」

「シエロの組凄かったわね、あれはシエロの作戦?」

「いえ、ここにいらっしゃる学級委員長のメルさんの作戦です」


僕はセリカにメルの作戦を伝えた。


「凄いわね委員長!!なんというかとても綺麗な戦闘だったわ!」

「セリカさんありがとうございます。セリカさんは相変わらず派手なやり方でしたね」

「まぁね!それが私の流儀だから!」


セリカのエネルギッシュさにメルは少し引いていた。

そんなこんなで雑談をしながら休憩をしていると、ブリジット先生が戻ってきた。

ブリジット先生が戻ってくるだけでその場の空気は少しピリッとする。


「全員集合だ」


ブリジット先生の合図とともに、みんなが集まる。


「みんな初めての対魔物の授業ご苦労だった。まだまだ基礎も出来ていないものから、少し縁の扱いがあるやつなどいたが、これからはもっとしんどい授業が待っている」


その言葉を聞いてセリカはワクワクしていた。

学校の授業ではどこまで強い魔物と戦えるのだろうか?


「今回の授業でお前たちの実力もはっきりと分かった」


相変わらずブリジット先生の話し方は威圧感があるな。

ここでブリジット先生の声のトーンが一段と低くなる。


「お前たちも知っていると思うが、四年生から校外学習がある。基本的には全員参加だ」


ここでブリジット先生が一度息を整える。


「だが、参加しなくても良いものも数人存在する」


どういうことだ?参加したくない、ではなく参加しなくても良い?

それは休んでも良いということなのだろうか?

ここでセリカが質問をする。


「先生!参加しなくても良いってどういうこと!?」

「今先生が話している途中だセリカ・マーガレット」

「何よ、、、聞いただけじゃない」


セリカは再び拗ねモードに入ってしまった。

まぁブリジット先生も言い方ってものがあるがな。


「参加しなくても良いのは()()()()()()()()()


四年生の?つまり他の学年の合宿に参加できるということなのか?


「既に勘づいている者もいると思うが、四年生の校外学習で身につけるものを既に身についている者には、五年生、六年生のどちらかに参加してもらう」


六年生まで行けるのか!?

ブリジット先生の発言で少しざわつく。


「期待して聞いている者もいるが、六年生はおろか五年生の合宿に飛んで行けるものは年に一人二人だ」


何故かセリカは自分が行くのが当たり前かのように自信満々の顔をしている。

それはルイドスやルージュナも同じだ。

そしてガルベットまでも自信満々の表情をしていた。


「既に校外学習まで一か月を切っているため、明日自分たちがどの校外合宿に行くのかを知らせる」


僕は別に他の学年に友達もいないし、他の学年の校外学習に行きたいとは思わない。

皆誰が行くかで盛り上がっているが、一人で行くことになれば結構辛い気がする。


「今日は今回の授業のレポートを提出して終了とする。終わったものから速やかに帰宅をし、終わるまで帰宅することは許さん。以上」


そうしてブリジット先生の締めの言葉とともに、レポートに取りかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ