第十三話 初陣と星空の下で
やっぱり全部ルビろうかなー
僕たちはそのまま森の奥へと進んだ。
奥に進むにつれ、木の側面に鋭い爪痕などが残っている。
森の中も嘘みたいに静かだ。
「静かですね」
「そうですね。こんなに静かな森は、ダート・ハウンドの影響でしょうか」
「なんか気味が悪いわ」
しばらく歩いていると突然、右足が深く下に沈んだ。
ズポッ
「うわ!最悪だ!沼だ!」
最悪だ。靴の中まで泥まみれじゃないか。
ついてないな。
「なんで僕の歩いている所だけに、こんな沼があるんでしょうね」
「違うわ、シエロ、、、」
セリカが突然真剣な表情で答える。
「この辺り一帯が沼地だわ。違う、沼地に変化している」
セリカの言葉で、辺り一面が沼地に変わっていることに気が付いた。
これは明らかにおかしい。
これは恐らく、、
、
「皆さん、下から何か来ます!!」
リリア先生の掛け声とともに、灰色の毛並みの狼が足元の沼地から襲ってきた。
僕はすぐにウィンドブロウで後ろに下がり、かわした。
「セリカ!!」
「大丈夫よ!」
セリカも無事回避していた。
「シエロ、これって、、、」
「えぇ、恐らくこれが、、、」
「皆さん、良いですか。あれが今回の課題の魔物、ダート・ハウンドです」
あれがダート・ハウンド。
先生の言っていた通り、泥を纏っている。
見たところ、泥の中は自由に動ける感じか。
「数は見える限り七体。それ以上も潜んでいる可能性もあります」
リリア先生が冷静に状況を分析する。
「何かあっては困りますので、私はすぐに動けるようにしております。ですが、出来る限りお二人で対応してみてください」
ダート・ハウンドたちが、僕たちを囲むように配置を取り始めた。
そして、ダート・ハウンドが一気に僕たちに向かって走り出す。
「来ます!」
「任せなさい!」
僕の掛け声の元、セリカが目の前のダート・ハウンドに向かって飛び掛かる。
僕はセリカのサポートを行いつつ、他のダート・ハウンドを相手にする。
「アースシェイプ!」
こいつらは泥を活用して、移動、攻撃をしてくる。
であれば、その泥を利用する。
僕はアースシェイプでダート・ハウンドの動きを封じる。
「ナイスよシエロ。後は私に任せなさい!」
セリカは身動きが取れないダート・ハウンドを一撃で倒していく。
「エンショウ!!」
セリカの業火の拳が、ダート・ハウンドを鎮めていく。
意外とあっけなく終わった。
初めての実戦であったため気合いを入れていたが、リリア先生の言う通り僕たちにとっては楽勝だった。
「前より格段に威力が上がりましたね」
「まだまだ序の口よ!私が本気でやればもっと凄いんだから」
「それは頼もしいです」
僕は、リリア先生に終わったことを報告しようと振り返ろうとした時、何か違和感を感じた。
「セリカ!ちょっと待ってください」
「何よシエロ。あんた、もしかしてビビってお漏らしでもしたんじゃないでしょうね」
「違いますよ!」
「じゃあ何っていうのよ?」
おかしい。まだ地面が沼で覆われている。
先ほどの戦闘での残りがあるだけかもしれないけれど、何となくまだダート・ハウンドが潜んでいる気がする。
それに、リリア先生もまだ警戒を解いていない。
「良いですか、セリカ。まだこの沼の中にダート・ハウンドが潜んでいる可能性があります」
「本当!?だからまだ沼が広がっているのね」
「恐らく先ほどの戦闘で、僕たちが警戒を解かない限り襲ってくることはないと思います」
「じゃあこのまま警戒しながらここを出るの?」
多分それでは駄目だ。
このまま警戒してこの場を離れることは容易だろう。
しかし、今回の課題は群れの討伐。
まだ潜んでいるかもしれない以上、ここを離れるわけにはいかない。
「いえ、まだ潜んでいるかもしれないので、いなくなるまで離れるわけにはいきません」
「じゃあどうするのよ!私は沼の中を泳ぐとかは勘弁よ」
「流石にそれは僕でもしませんよ。セリカ、この沼地に大きな衝撃を与えていただいても良いですか?」
「衝撃?」
「はい、とっても大きな衝撃です」
そう言うとセリカは、ニヤリと笑った。
「大きな衝撃ね。任せなさい!」
そう言うとセリカは縁を右手に集中させ始めた。
縁がグングンと練られるにつれ、周りの木や沼が揺れ始める。
「凄い縁の練りだ、、、」
今までのセリカの縁はただ大きく荒々しい感じだったけれど今は違うように感じる。
縁の大きさは相変わらずだが、荒々しい感じが軽減しまるで粗削りな宝石の様だ。
「シエロいつでも行けるわ!」
「そのまま沼にドカーンと一発お願いします!」
「任せないさい!」
セリカは大きく腕を振り上げそのまま勢いよく沼に衝撃を与えた。
「打嘆!!」
ドッガァァァン
セリカの一殴りは、森全体を揺らすほどの物凄く大きな衝撃が起こった。
そしてその衝撃によって沼に潜んでいた、三体のダート・ハウンドが飛び跳ねるように姿を現す。
「炎斬」
僕はそのままダート・ハウンドを二つに斬り倒した。
全て倒したおかげで、地面にあった沼も引いていく。
「やったねシエロ!」
「セリカさんこそあんな衝撃を起こせるとが思ってもいませんでした。随分縁の扱いがお上手になられたのですね!」
「シエロこそ前使ってた技よりも一段と精度が上がってるじゃないの」
久しぶりに魔術を使ったが、イメージ力アップの課題のおかげかダート・ハウンドを倒すイメージが一瞬で構築された。
「お疲れ様でした。お二人ともお見事です!」
リリア先生が木の上から降りてくる。
「先生!見た!私のパンチ!」
「えぇ、見ていましたよ。最後の打嘆の勢いはとても驚きました」
「まぁね!あのくらい余裕よ!」
セリカは褒めてもらえて、とても嬉しそうだ。
「そしてシエロ君も、最後の判断と炎を纏う斬撃、とても素晴らしかったです!」
「ありがとうございます!!!」
最後の技は、以前使用した火斬をより精度を増した炎斬。
上手く出来て良かった。
「特にシエロ君が違和感に気が付き、最後まで警戒していたのが良かったです」
セリカが僕の方を、ムスッとした顔で見てくる。
「あのままお二人が気を抜いて沼から出ようとすれば、恐らくダート・ハウンドが襲い掛かっていたでしょう」
「そうなっていれば私が出て、課題は失敗となっていました」
正直、違和感を感じてはいたが、リリア先生が警戒を解いていない縁を感じたのが大きかった。
まぁ、それは言わないでおこう。
「ということは先生!」
「はい、合格です!」
「やったー、やったわ!」
ふぅー、良かった。
これで少しは兄に追いついたかな。
「では、ダート・ハウンドの群れもいなくなりましたし、帰りましょうか!」
僕たちはリリア先生に続き、来た道を折り返した。
しかし、最後のセリカのあの打嘆という技は凄かった。
重力を押しつぶしている感じがした。
「セリカの最後のあの技、とても凄かったのですが、あれはどういった技なのでしょうか?」
「あれはね、重力の力を使って押している感じ?」
セリカは言葉で説明するのが難しいのか、身体を使って説明を始める。
「こー、何て言うの!手でこうして、、、それでここを、、、」
うん。さっぱり分からん。
まぁ重力で一気に加速して押し出すパンチみたいなものだろう。
「とりあえず、あの技ならシエロも一発よ!」
「それは困りますね、、、ハハハ、、、」
「セリカさんもシエロ君も今日は頑張りましたので、帰ったらちょっとしたパーティーでも開きましょうか!」
「パーティー!?」
パーティーか!
リリア先生からのパーティーのご招待をいただけるとは、これは嬉しい限りだ。
「良いですね!パーティー!」
「では帰りにお店に寄って、何か買って帰りましょうか!」
「楽しみだわ、パーティー!早く帰るわよ、シエロ!」
セリカは一番乗りで走り出す。
「セリカ、危ないですよ。まだ魔物がいるかもしれませんよ」
って言って聞いて止まるはずもないか。
僕とリリア先生は、走っていくセリカを見ながら苦笑いした。
その時だった。
先ほどまで静寂だった森が一気に、鳴き始めた。
鳥や虫、小さな魔物まで突然騒ぎ出したのだ。
セリカも異変に気付き、すぐに戻ってきた。
ちょっとー、何よこれ!急に色んな生き物が暴れ出したわよ!
なんだこれは、、、
分からないけれど、何か凄く変な感じがする。
まるで―――何かから逃げているような。
「皆さん、私のそばから離れないでください」
リリア先生の声に、今まで聞いたことのない緊張が混じっていた。
僕とセリカは、リリア先生にぐっと身体を寄せる。
するとリリア先生が、先ほど歩いてきた道の方角を見て何かを感じ取った。
「後ろから―――何か来ます」
リリア先生が杖を構える。
その手が、微かに震えているのが見えた。
僕とセリカも、音が騒がしい方に視線を向ける。
ドシン、ドシン、ドシン、、、
音がどんどん近くなる。
地面が振動している。
姿はまだ見えないが、確実に大きな何かが。
その時だった。
ボゴォォォン!!
音の鳴る方から、勢いよく火のブレスがこちらに向かって飛んできた。
「風纏聖域!」
リリア先生の魔法で僕たちは守られた。
しかし、状況を整理している暇はなかった。
ドガァァァン!!
気が付くと目の前に、白い毛並みで大きな身体のゴリラのような魔物が飛び込んできた。
その巨体から放たれる威圧感に、僕の身体が硬直する。
でかい、、、でかすぎる!
僕は間一髪で、その攻撃を回避した。
「セリカ!リリア先生!」
「こちらは大丈夫です。シエロ君も無事ですか!?」
セリカはリリア先生に守られながら、攻撃を回避していた。
「僕も、なんとか、、、」
しかし、一体こいつは何なんだ。
白いゴリラ?ゴリラにしてはデカすぎるだろ!
それに、さっきの火のブレスはこいつからか!?
ブレスに当たった場所は、跡形もなく燃えて黒い塵となっていた。
やばい、、、今までとは格が違う。
「リリア先生、一体こいつは、、、」
「シエロ君」
リリア先生の声が、いつも以上に震えているように感じた。
「私が隙を作りますので、どうにかしてセリカさんと逃げてください」
「え、、、?」
「この魔物は、、、」
リリア先生が魔物を見つめながら、震え声で告げる。
「白焔巨猿、アルビオンブレイザー。特級魔物です」
特級。
その瞬間、僕の血が凍りついた。
通りで、今までとは比べ物にならない威圧を感じるわけだ。
アルビオンブレイザーが、僕たちを見下ろしながら低く唸る。
その眼光は、まるで獲物を品定めしているようだった。
しかし、僕とセリカはブレスで出来た歪で分断されている。
セリカと合流するには、この歪を渡るしかない。
「セリカ!隙を見て後ろに下がれますか!」
「で、出来るに決まってるわよ!」
駄目だ。
セリカの足が完全に震えている。
声は強がっているが、身体は正直だった。
僕がセリカと合流するしかなさそうだ。
アルビオンブレイザーが僕に向けて攻撃を仕掛けてくる。
僕の目の前に、大きな手の平が迫る。
早い!
身体の割に動きが俊敏で、避けられない!
「嵐牙一閃!」
嵐のような鋭い風が、アルビオンブレイザーの右腕を吹き飛ばす。
「リリア先生!」
「あなたの相手は私です!」
リリア先生がアルビオンブレイザーの前まで駆け寄る。
「シエロ君、今のうちに!」
「は、はい!」
僕は急いでセリカの元へ向かう。
右腕を失ったアルビオンブレイザーは、怒りで満ちていた。
突然、大きな雄叫びをしながらドラミングを始める。
グウォォォォア!!
「なんだこの音は!」
その音は耳をふさいでいても、鼓膜まで重い音が響く。
音を塞ぐことで精一杯で、身動きが取れない。
頭が、、、割れそうだ、、、
そして、ドラミングと雄叫びが止む。
「何だったんだ、今のは、、、」
とにかく僕は、セリカの元まで駆け足で向かった。
「シエロ!」
「セリカ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫に決まってるじゃない!」
多分セリカ自身は戦うのが好きなタイプだと思うが、あの魔物は自分では歯が立たないと分かっているんだ。
だから、あの好奇心旺盛なセリカでさえ小さくなってしまっている。
ここはリリア先生に任せるしかない。
「とりあえず、ここから離れましょう」
「先生一人にしても良いの?」
「あの魔物は僕たちじゃ相手になりません。それに、セリカを無事に帰さないとまずいので」
僕がセリカの手を引こうとした時、
森のあちこちから、白い毛並みの小さなアルビオンブレイザーの群れが現れた。
なんだ、こいつら急に現れて。
さっきの雄叫びで仲間を呼んだんだ。
クソッ、ここは僕たちだけで乗り越えるしかなさそうだ。
小さなアルビオンブレイザーが僕たちを囲む。
数は五体。
リリア先生の手は借りられない。
「セリカ、良いですか。僕がこいつらを引き受けます。その間にこの場から離れて、救援を呼んでください」
「な、何言ってるのよ!私もやれるわ!」
「セリカに何かあれば、、、」
「私だって先生と稽古したのよ!自分の身は自分で守らないといけないでしょ!」
セリカはそう言うと、前に飛び出した。
「ちょっと!」
セリカは目の前にいる小さなアルビオンブレイザーに攻撃を仕掛ける。
「焔掌!」
セリカの打撃で、小さなアルビオンブレイザーが吹っ飛ぶ。
「どうよ!私のパンチ!」
セリカの技は確かに強力だった。
しかし、身体が小さくても、このアルビオンブレイザーも実力は上級である。
すぐに一人でいるセリカに、残りの四匹が襲い掛かった。
「セリカ!!」
セリカの一撃一撃は強力な近接技だが、複数体を相手にするのにはまだ向いていない。
僕はすぐにセリカの足元の地面を引き上げ、セリカを上に飛ばした。
そして、そのままセリカを襲った残りの四匹に斬撃を当てる。
一体一体に斬撃を当てていくのではなく、一筆書きのような刃で斬り刻む。
「炎斬!」
僕が放った斬撃は、イメージ通り四匹の小さなアルビオンブレイザーを一筆で斬った。
四匹の小さなアルビオンブレイザーは、塵となって消えていく。
僕はそのまま息を整えず、上に飛ばしたセリカを受けに行く。
「セリカ!」
「シエロ!」
僕はセリカを受け止め、地面に降りる。
「すみません。無茶なやり方で、、、」
「べ、別に問題はないわ」
なんとか、セリカを無事に守れたぞ。
「あ、ありがとう」
なんと!あのセリカが素直にお礼を言ってきた。
普段聞かない言葉だから、普通に嬉しかった。
しかし、油断は禁物だった。
初めにセリカが吹き飛ばした小さなアルビオンブレイザーが、まだ生きていたのだ。
僕たちは、ギリギリまで気づかなかった。
ブゥォォォン!
背後から火のブレスが飛んでくる。
僕は間一髪で気づき、セリカを守るように前に出る。
「セリカ、危ない!」
僕の無詠唱魔術でも間に合わず、火のブレスを喰らい吹き飛んだ。
「シエロ!」
セリカはすぐに反撃する。
「打嘆!」
小さなアルビオンブレイザーは吹き飛びはするが、仕留めきれない。
セリカも最初のダート・ハウンド戦で縁を使っている分、最大火力が出ない。
容赦なくセリカを襲う。
セリカは攻撃を避けるのに精一杯で、周りを見ていなかった。
小さなアルビオンブレイザーの攻撃を回避しようと、身体を後ろに下げようとした時、何かに当たる。
コツン
セリカの後ろには、ちょうど大きな木があり、後ろに下がれなかった。
「シエロー!!」
シャキィィィン
セリカを襲っていた小さなアルビオンブレイザーが、真っ二つに斬れる。
「た、助かった?」
「セリカ、怪我はありませんか!?」
「大丈夫よ。シエロこそ大丈夫なの!」
「はい、ギリギリで水の膜を張って、なんとか、、、」
グォォォォォン!!
突然、森全体にアルビオンブレイザーの鳴き声が響き渡る。
先ほど仲間を呼んだ雄叫びとは違った音だった。
僕とセリカは、すぐにリリア先生が戦っている場所へと向かう。
「シエロ!」
「はい、すぐに向かいましょう!」
僕たちが現場に到着した時には、既に勝負が決まっていた。
アルビオンブレイザーは両腕を失い、身体のあらゆるところから血が噴き出ており、両膝をついて白目を向いている。
リリア先生の身体には、返り血が付いている。
「リリア先生!」
リリア先生は僕たちに気づき、ニコッと微笑む。
「シエロ君、セリカさん、無事でしたか!」
「はい、なんとか」
「もうこの魔物死んだの?」
よく見ると、リリア先生の身体には傷が付いていない。
まさか自分と同等の階級の魔物を、無傷で勝ったというのか!
流石、僕のリリア先生だ!
「はい、息の根はしっかり止めました」
リリア先生が少し不思議そうな顔をする。
「ですが何故か、死体が崩落していかないんですよね」
「確かにおかしいですね。普通なら魔物は死ぬと、身体が崩壊していくのですが、、、」
「じゃあまだ生きてるってこと!?」
「いえ、それはあり得ません。先ほども内臓を破壊したり、あれこれしたので生きているはずはありません」
リリア先生って、見た目のわりに結構グロいことをするんだな。
「念のため最後に、この死体を細かく切り刻んでおきましょうか」
「切り刻む!?」
「はい!後から動かれても困りますので、念には念をです」
そう言うとリリア先生は、僕の方を見て微笑んだ。
「もしかして僕がやるのでしょうか?」
「勿論です。シエロ君の斬撃技は魅力的です!」
ふっふーん!リリア先生に言われたら仕方がないな!
僕はそう言って、アルビオンブレイザーの死体を1mm角で切り刻んだ。
死体だから、案外簡単にイメージ通りに出来た。
「でも、どうしていきなりあんな魔物が現れたのでしょうか?」
「あくまで私の憶測ですが、あの時セリカさんが沼に放った衝撃で、アルビオンブレイザーを刺激してしまったのではないかと、、、」
「ですが、アルビオンブレイザーがこの森に潜んでいる情報は聞いたことがありません」
セリカは、その話を聞いて少し顔を下に向ける。
「ごめんなさい、、、私のせいで」
「そんなことありませんよ!セリカのあの技が無ければ、ダート・ハウンドは倒せなかったですし」
「そうですよ、セリカさん!それに今の話は憶測なので!」
僕たちは、すぐにセリカを慰めた。
セリカもずっと落ち込むタイプではないのだろう。
すぐに気を取り直した。
「では、少し邪魔が入りましたが、パーティーの買い出しに行きましょうか!」
「はい!」
「さっさとこの森を出ましょ!」
こうして僕たちの最後の課題は、無事終わった。
森を出て、ガルドさんにもダート・ハウンドの群れを討伐したことを伝えた。
どうやらセリカの与えた振動は、森の外にも伝わっていたらしい。
僕たちはそのまま市場へと向かった。
**謎の人影**
「なぁ、見たかあれ?」
「だから汚いんだって、そのベロ出す癖やめてよ」
「あの銀髪魔女、相当な手練れだったぞ」
「あんたとどっちが強い?」
「やってみねーと分からねーけど、まぁ俺だろうな」
「ふーん。で、隊長どうするの?」
「あの斬撃使いの子は、どこかの貴族か?」
「あの餓鬼気にしてどーすんだよ」
「私は見たことないわ。どこかの田舎者でしょ」
僕たちは市場で沢山の食べ物を買って帰った。
それに服が汚れてしまったため、新しい服もリリア先生に買ってもらった。
「ただいま帰りましたー!」
「シエロ!よく帰ってきたぞ!」
父が一番乗りで僕に抱きついてきた。
「お父様、お酒臭いです」
「お前が心配で、酒でも飲まないとやってられなかったんだよ!」
「シエロ、お帰り。それにリリアさんにセリカさんも!」
「お母様、皆無事で帰還しました」
母はそう言うと、リリア先生とセリカを一緒に抱きしめた。
「皆さんが無事帰ってこられて良かったです」
「セリカお嬢様、お帰りなさいませ」
「ニナ!」
ニナも僕の家で、セリカの帰りを待っていたみたいだ。
「ねぇニナ!私凄く頑張ったのよ!それに沢山ご飯も買ったから、パーティーするの!」
「セリカお嬢様が無事で、私は嬉しいです」
それから僕たちは小さな庭で火を焚き、パーティーを行った。
今日あった出来事や、父の要らない武勇伝など、沢山語り尽くした。
とてつもなく幸せな時間だった。
「あっ!今星が流れた!」
セリカが、星空満天の空に指をさす。
「そういえば、ここ最近流れ星がよく落ちるって」
「あ、またほら!」
「沢山願い事が叶えられますね」
「シエロは何願うの?」
「そうですね、、、」
リリア先生や可愛い女性と囲んで暮らすとか。
まぁそんなことは口には出さない。
「セリカ、願い事ってのは口に出したら叶わなくなるものですよ」
「そうなの?」
それから僕たちは星を眺め、優雅な時間を過ごした。
時刻も二十一時になり、セリカとニナは帰宅した。
「またねー、シエロ!」
「リリアさん、シエロ君。本日はセリカお嬢様をお守りいただき、ありがとうございます」
「いえ、僕もセリカさんに助けられましたので」
「またいつでも、セリカお嬢様と遊んでください」
「勿論です!」
こうして僕の長い一日の幕が閉じた。
楽しかった。
時は二月。
辺り一面は雪景色。
僕もあれから沢山鍛錬を行い、更に魔術の精度が上がった。
セリカも当たり前のように僕の家を訪れたり、時には一緒にご飯を食べたりもした。
なんやかんやリリア先生もまだ家にいた。
僕があれこれ知りたいって言っていたらこの時期まで来てしまった。
そして今日は、、、リリア先生が家から旅立つ日だ。
一章終わり!二章からは頑張る。
あざす!




