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まじわり輪  作者: がおがおの
第一章 少年期
11/24

第十話 激突

最近忙しすぎて仕事が、書く時間が少ないですーーー


趣味で書いてるので、誤字とか気になる場所があるかもしれないですが!

イザトラは苛立ちながらルイドスの方へ向かってきた。

ルイドスは既に戦える状態ではない。


「ルイドス。また負けたなんてことは無いでしょうね」


僕は直ぐにルイドスの前に庇うように立った。

イザトラは僕の前で立ち止まり、鋭い目つきで睨んできたのだ。


「邪魔。どいてくれるかしら?それとも何、勝ち誇ってでもいるの?」

「見ればわかりませんか?もうルイドスは縁切れを起こしています」

「それはお前が決めることでは無い。ねぇ?ルイドス。まだ負けてないわよね」


イザトラは完全に狂っている。

しかしルイドスは縁切れを起こしているのにも関わらず、また立ち上がろうとしている。


「シエロ、、、ぼ、僕ともう一度戦え」

「ルイドス、、、もう縁も枯渇していてどうやって僕と勝負するのですか!!」

「うるせぇよ!僕と、、僕と戦えって言ってるんだよ!!!」

「ルイドス、、、」


今までルイドスの事をただのオカッパ眼鏡としか思っていなかったが、この時初めてルイドスに対して情が沸いた。

普段ならルイドスを守るなんてことはしないが、今は違う。

ルイドスは両親の期待に応えようとする為に、自分を犠牲にしているのだから。


「そうよルイドス。あなたはスカラルド家よ。こんなどこぞの田舎者に負けるなんて許されないのよ」

「シエロ頼む。もう一回だ」


ルイドスはそう言うと息を大きく切らしながら立ち上がった。

僕はチラッと横を見た時、ニナとリリア先生はいつでも僕たちを止めれる体勢で合った。

何かあれば二人が何とかしてくれるだろう。

そう思い僕はもう一度ルイドスと戦う事に決めた。


「ルイドス。僕は負ける気はありませんよ。いいですか?」

「僕だって同じだ。シエロ、お前に負けるわけが無いだろ」

「全くその状態でまだ偉そうに言えますね」


ルイドスは、残り僅かの縁を使い僕に向かって土の小さな塊を放ってきた。

僕はかわすこともせずルイドスに一発ウォーターボールを放ち飛ばした。

そのままルイドスは縁切れで倒れてしまった。


バタッ


僕はその瞬間にリリア先生を呼んだ。


「リリア先生!!!」


僕が声をかけた時には、リリア先生はルイドスの元へと動き出し治癒魔術をかけはじようとしていた。


「あーあーあーあーあぁーあぁ!!全くどんだけ私に恥をかかす気なのルイドス、お前は!!」


イザトラは僕に勝てなかったルイドスに対して物凄く怒っていた。

僕はそんなイザトラに対して怒りしか湧かなかった。


「何を言ってるんですか!?見てたでしょう、ルイドスがあなたの為に期待に応えようと最後まで戦ったところを!!」

「うるさいわねぇ。結局負けてたら何も期待に応えれていないのよ」

「さっきから何を言ってるんですか、、、」


イザトラの周辺の草や植物が、まるで生きているかのように動いている。


「まぁいいわ。このまま私も終わる気は一つもない。今私が直々に相手してやる」

「良いのですか?ここにはマーガレット家もいますが今回の事まずいんじゃないでしょうか?」

「そんな小娘とメイドごときに私がビビるとでも?」

「そうですか、、、」

「まずはその生意気な口を黙らせてやるわ」


来る!

イザトラからの容赦ない攻撃。

庭の草が刃となって僕の全方位から襲い掛かる。

僕はとっさにファイヤーボールを無詠唱で繰り出し、対処していくが攻撃速度は圧倒的にイザトラの方が上だ。

草の刃が僕のうなじに向けて襲ってくる。

やばい!間に合わない!


ドガァァァン


僕の背後で大きな爆発が起こった。

爆発の煙と共に見えたのはセリカとだった。

セリカが助けに介入してくれたのだ。


「シエロ大丈夫!?」

「セリカさん後ろ!!」


しかしそのセリカの背後からさらに草の刃が襲い掛かる。

ヤバイ。そう思った時僕とセリカはニナに担がれて、端へと非難した。


「お怪我はないですか?セリカお嬢様とシエロさん」

「えぇ大丈夫よありがとうニナ」

「ニナさん。ありがとうございます」


こんな時にこんなことを言うのは場違いだとは思うが、ニナに担がれた時とても良い匂いがした。

それは一度置いておこう。


「シエロさん。ここからは私が相手をします。今のうちにセリカお嬢様とリリア先生と一緒にここを出てください」

「ニナさん僕も戦えますよ」

「そうよニナ!私たちだって戦えるんだからね!」

「駄目です。相手は上級魔術師です。それもここ一体の植物の多さ、相手の土俵です」


確かに相手の土俵だし、攻撃をいなすので僕は精一杯だった。

だけどここで逃げてニナに最後の責任を押し付けたくは無い、が。


「何かゴソゴソ言ってみるみたいだけれど、全員逃がすつもりはないわ!」

「シエロさん早く!」

「セリカさん行きますよ!」

「ちょ、ちょっといいのシエロ」


今はニナの指示に従った方が良い。

三人でここを出て、マーガレット家のつてか何かを使って要請するんだ。

僕とセリカが先生の元へ走って向かおうとしたその時だった。


「地に根ざす緑の糸よ、天に向かい編み上がれ。生命の檻で敵を包め。蔦編檻(ヴァインケージ)


僕たちがいる庭全体を包むようにドーム状の檻が、イザトラが操る植物で形成された。

何処にも出口は無い完全な檻だ。

僕は直ぐにファイヤーボールで檻を攻撃するが燃える気配もない。


「無駄よ。この檻はそんじゃそこらの上級魔術師にすら壊すことは出来ないのよ。お前の魔術で壊せるわけないじゃない」


どうする?リリア先生はまだルイドスについている。

セリカと一緒になんとかしてこの檻を壊すか??


イザトラの攻撃が止まらない。

この空間の植物は全てイザトラの物だ、どこに居ても攻撃が飛んでくる。

飛んでくる無数の刃を、個々でいなしていく。

セリカ一人では捌ききれない分はなんとか僕がカバーするが、捌くのが限界で反撃が出来ない。


「このままじゃじり貧です。ニナさんセリカの事頼めますか?」

「シエロ君はどうするのですか?」

「僕がなんか時間を稼ぎます。その間にこの檻を何とか出来ますか?」

「少しタメが必要だけれど穴を開けることは出来ます、、、しかしその為にはイザトラの攻撃をこちらに向けないことが必要になります」


よし、ここは僕が何としてでもイザトラの攻撃をいなしていくんだ。

ニナが穴を開けた時に一気にみんなで脱出をする。

それしか方法は無い。


「分かりました。では僕がイザトラの攻撃を貰うのでニナさんお願いします」

「、、、そうですか分かりました。ですが無理はしないでくださいね」

「シエロ私はどうしたらいいのよ!」

「セリカさんは万が一そっちに攻撃が飛んで行ったときに、ニナさんを守ってあげてください」

「、、、分かったわ!!」


僕はそう言って前線へと出た。

倒さなくていい、時間を稼ぐだけでいいんだ。


「あら、勝てないと分かってやられに来たの?賢明な判断ね」

「そうやって言えば言う程、負けた時が辛くなりますよ」


イザトラの唇が歪む。庭に生える草花が、まるで彼女の感情に呼応するように微かに揺れた。


「いちいち勘に触る発言をするわね」


―――静寂。


風が止んだ。鳥の鳴き声も消えた。

僕の心臓の音だけが、やけに大きく響く。

ニナが縁を高めている。どれくらい時間を稼げばいいか聞いてなかったな。

でも、今はそれしか頼みの綱がない。


「なるほどね」


イザトラの声が、氷のように冷たい。


「あのメイドの溜め攻撃でこの檻を破壊。それまでお前が私の攻撃をいなすと、、、」


庭の植物たちがざわめき始める。まるで獲物を前にした獣のように。


「随分となめられたものねぇ!!!」


―――来る!


無数の緑の槍が、僕を中心に放射状に迫る。

空気を切り裂く音。死の匂い。


岩壁(ロックウォール)!」


土の壁が立ち上がる瞬間―――

ガシャン、ガシャン、ガシャン。

植物の槍が壁に突き刺さる音が、太鼓のように響いた。


しかしイザトラの攻撃は止まらない。

壁の向こうから、彼女の不気味な笑い声が漏れ聞こえる。


「これは防げるかしら」


イザトラの声が、今度は上から降ってくる。

見上げると、彼女が宙に浮いていた。両手を天に向け、何かを呼び出そうとしている。


「影に宿る緑の魂よ、幻想の中で息づけ」


詠唱が始まった瞬間、庭の空気が変わる。

草木たちがざわめき、うねり、まるで生きているかのように蠢き始めた。


「植物の記憶よ、獣の本能と融合せよ」


ゴゴゴゴゴ


地面が震える。

僕の足元で、何かが生まれようとしている。


緑陰幻想(リョクインゲンソウ)!」


大地が裂けた。

そこから現れたのは―――巨人だった。

蔦と樹木で編まれた、三メートルはある緑の化け物。

赤く光る目玉が、僕を見下ろしている。


「お前は今からこの魔物を相手にしながら、あのメイドを守らないといけない」


イザトラの声が、勝利を確信したように響く。


「降参なら今のうちよ」


巨人がゆっくりと拳を握る。

その音だけで、僕の心臓が跳ね上がった。


「今降参しても見逃してくれないでしょう」


僕はずっとイメージして縁を練っていた。

魔物が形成されていくときから、この魔物は一撃で倒す。そんなイメージを。

(火だ。植物には火が一番効く)

僕が火の魔術をもっと使いこなせれば、恐らくイザトラには余裕で勝てた。

だけど今はまだそんな技術は無い。

でも僕は気づいた。斬撃を発生させる仕組みを感覚でものにした。

どうしたら威力が上がるのか、何となく頭では理解している。

(斬撃に火を纏わせる。複合魔術なら、高火力を出せるはず)

縁の練りは完了した。

あとはタイミングだけ。


ドシン、ドシン、ドシン


巨人が歩いてくる。

一歩ごとに地面が揺れる。僕の心臓も一緒に跳ねた。

突然、巨人が駆け出した。


―――速い!


大きな腕が振り上げられ影が僕を覆った。

(怖い。かわしたい。逃げたい)

そんな気持ちがよぎる。

でも、今は我慢だ。

巨人の拳が、僕の顔の前まで迫る。

風圧で髪が舞った。


―――今だ!!


火斬(カザン)!!」


シャキィィンン


炎が走った。


バゴォォォン!


巨人の拳が、腕が、肩が、胴が、

一筋の火線によって、一瞬で切り裂かれていく。


「な、なんですって!?」


イザトラの驚愕の声。

巨人は崩れ落ち、炎に包まれて塵となって消えていった。


「はぁ、はぁ、はぁ、、、」


息が上がる。

あの精度の魔術は、かなりの集中を要するから疲れる。

煙が晴れていく。

巨人は跡形もなく消えていた。


「ば、馬鹿な...」


イザトラの呟きが聞こえる。

僕が顔を上げるとまさかの光景だった。

攻撃を防いで入るものの、彼女の肩までに、焦げ跡がついていた。

(まさか、僕の斬撃がイザトラまで...?)


「どこで無詠唱でその魔術を覚えたのか知らないけれど」


イザトラの声が震えている。

怒りか、それとも恐怖か。


「私の身体に傷をつけたこと」


ゴゴゴゴゴ


また地面が震えた。

今度は庭全体が、まるで生きているかのように蠢いている。


「後悔しろこのクソガァキィ!!!!!!」


イザトラが空中から急降下してくる。

その背後で、無数の植物の槍が編隊を組んで追従している。

(まずい!)

まだイザトラ本人をいなす魔術のイメージが出来ていない!

縁の回復も間に合わない!

(ニナ、まだなのか!)

その時だった。


バゴォォォン!


爆音と共に、檻の壁に大きな穴が開いた。


「シエロ!穴が開いたわよ!!」


セリカの声!


「セリカお嬢様、先に外へ!私はシエロさんを迎えに!」


ニナの声も聞こえる。

しかし、イザトラはもう目の前まで迫っていた。

とにかく僕は穴の方へと向かって全速力で走った。

足音が地面を叩く。

(もう少し、もう少しで!)


「逃がすわけ無いでしょうがぁ!!!」


イザトラの怒声が背後から迫る。


緑繞縛鎖(リョクジョウバクサ)!!!」


ザザザザザ

足元で草が蠢く音。

次の瞬間、僕の足首に何かが絡みついた。


「うわあ!」


転倒する。

同時に、セリカとニナの悲鳴も聞こえた。

庭の草が蛇のように僕たち三人を縛り上げていく。

腕が、足が、胴体が身動きが取れない。


「しまった!」


なんとか拘束を解こうと力を込めるが、草の縄は僕が暴れるたびにより強く締め付けてくる。


「くそっ、ここまで来たのに!!」

「全く手間かけさせてくれるわ」


イザトラがゆっくりと僕たちに近づいてくる。

その顔には、勝利を確信した笑みが浮かんでいた。


「だけどもうお終いよ!」


僕は必死にリリア先生の方を見た。

先生は、ルイドスの治癒を終えたところだった。


「先生!助けてください!」

「あら、ルイドスの治癒を終えたのね。ちょうどいいわ」


イザトラがリリア先生に向かって言う。


「あなたも加勢しなさい。この拘束も時間が経てばあのメイドが解いてくると思うから、メイドからやって頂戴」


まさか!

リリア先生は何も言わずに、こちらに向かって歩いてくる。

徐々に先生の縁が膨れ上がっていく。

でも、その縁には殺気があった。


「良い縁ね。流石特級ってだけはあるわ。でもあの手前の餓鬼は私がやるから残しておくのよ」

「リリア先生!」


僕は叫んだ。


「僕たちを助けてください!あいつの言うことをこれ以上聞く理由があるのでしょうか!?」


でも、リリア先生は僕をスルーして、ニナの方へと歩いて行く。

(なんでだ、なんでなんだよ)

なんとか拘束を解こうと抵抗するが、イザトラがさらに強く縛り上げてくる。

草の縄が食い込んで痛い。

そして、リリア先生がニナの目の前まで来た。


「さぁやってしまいなさい!その二人を片付けたら今日の事は許してあげるわ」

「先生!!ニナに手を出さないで!!お願い!!!」


セリカが必死に叫ぶ。

でも、リリア先生は止まらない。

先生が杖を空に掲げる。


静寂。


その瞬間、空から巨大な風の塊が―――


「やめろォォォ!!」


僕の叫びと同時に、風の塊がリリア先生とニナを巻き込むように落ちてきた。


ドガァァァン!!


爆音。

砂埃が舞い上がる。

視界が真っ白になった。


「ニナ!!」

「先生!!」


僕とセリカの声が重なる。


「随分と派手な魔術でやるわね。面白いじゃないの、さぁそのままそこの小娘もやって頂戴」


イザトラの声が聞こえるが、砂埃で何も見えない。

(どうなったんだ!?ニナ、先生!!)


そして、、、


砂埃が晴れた時、そこにいたはずのニナとリリア先生の姿が消えていた。


「なっ!どこに消えたのよあの魔術師は!?」


イザトラの困惑の声が響く中、僕は呆然としていた。

消えた?二人とも?


するとセリカの死角から物凄い速さでニナが現れたのだ。


「ニナ!?」

「少し粗いやり方で申し訳ございませんセリカお嬢様」


そうニナが言うと、拳に縁を溜めこみセリカが拘束されている植物を対象にその拳をぶつけた。


ドゴォォォン


セリカの拘束は解け、そのままニナが僕の拘束を解こうとこっちに向かってくる。

ニナさん前から思っていたけれど、見た目のわりにかなりパワフルな戦闘スタイルなんだな。


「ど、どう言う事よ!あのメイドはやったのでは無いの!?てか魔術師は何処に行ったのよ!」


ニナが僕の拘束を解こうと駆け寄ってくる。


「そうはさせないわ!!」


イザトラの怒声が響く。


「その餓鬼だけでも私が止めを刺す!!!」


彼女の両手に緑の光が集まり始める。

死の匂いがした。

(やばい、間に合わない!)


その時だった。


シュウウウウ...


イザトラの魔術が、まるで霧のように消えていく。


「な、何!?」


イザトラが困惑の声を上げる。


「私の魔術が消えた...?こ、これは一体!?」


風が変わった。

今度は優しく、でも圧倒的な存在感を持った風が。


「私の教え子に手を出すのは許しません」


その声は空から降ってきた。

僕たちは一斉に空を見上げる。

そこにいたのは―――リリア先生だった。

白銀の髪が風になびいている。

ローブが静かに揺れている。

そして何より、先生の周りを取り巻く縁が、

今まで見たことのないくらい落ち着いていて、でも何処か威厳に満ちていた。

まるで嵐の前の静寂のような、恐ろしいほどの静けさ。


「き、貴様ぁぁぁ!!」


イザトラの絶叫が庭に響く。

リリア先生は無言で、ゆっくりと杖をイザトラに向けた。

戦いの空気が、一変した。


「私に杖を向けるかこの役立たずがぁ!」


イザトラの声が震えている。


「もう私があなたに従う理由が無くなりました」


リリア先生の声は、氷のように冷たかった。


「私に!いや、スカラルド家に逆らうとお前が庇おうとしていたそこの餓鬼の人生がどうなるか位分かっているわよね!?」


リリア先生は僕たちの方に一瞬視線を向けた。

その瞳には、何か決意のようなものが宿っていた。


「もう私が庇わなくても、あの子は大丈夫だと判断しました」

「何を抜かしたことを言っているのかしら?」

「ここからは、、、」


リリア先生が杖を構え直す。


「一人の教師として生徒を守る為に、私の意志であなたに反撃をします」


その瞬間、空気が変わった。

リリア先生の縁が、今度は本気の殺気を帯びて膨れ上がる。


「き、貴様ァーーー!!」


イザトラは怒りに身を任せて詠唱を始めた。

それは、上級魔術師の本気の一撃。


「遥か天空に眠る巨樹よ、今こそ目覚めて地に墜ちよ!」


ゴゴゴゴゴゴゴ


空が暗くなった。

リリア先生の頭上で、何かが生まれようとしている。


「その重き身をもって敵を砕け!!」


メキメキメキメキ


巨大な樹が空中に現れ始める。

幹の太さだけでも家一軒分はある。

それがスカラルド邸の敷地よりも大きく成長していく。


「こんな大技を発動したら、この家もなくなり、スカラルド家に大きな損害をもたらしますよ」


リリア先生の警告も、イザトラには届かない。


「うるさいわねぇ!もう今ここでお前たちを私の手でやらないと気が済まないのよ!!」

「そうですか...仕方がありませんね」


イザトラの大技を前にしても、リリア先生は冷静だった。

むしろ、どこか悲しそうにさえ見えた。

そして、リリア先生の詠唱が始まる。


「疾る風よ、その怒りを纏え。螺旋を描き、獲物を穿つ牙となれ」


風が変わった。

今度は鋭く、研ぎ澄まされた刃のような風が。

イザトラの樹の生成が完了する。

リリア先生の詠唱も終わる。

僕は初めて目にしようとしていた。魔術師同士の、本気の大技のぶつかり合いを。

ニナが僕とセリカを抱えて、安全な場所まで一気に後退する。


「食らいなさい!!樹墜(ジュツイ)!」

巨樹が落下を始めた。

その影がリリア先生を覆う。


旋風の牙(サイクロン・ファング)!」


リリア先生の杖から、巨大な竜巻が立ち上がった。

いや、竜巻ではない。

それは確かに、牙を持った獣の形をしていた。

風で作られた、透明な巨獣が。

そして、、、


ガリガリガリガリ!!


風の獣が巨樹に噛みついた。

木屑が舞い散る。

樹皮が剥がれ、幹が削られ、枝が千切れていく。

まるで本物の獣が獲物を食い散らかすように。


ドガァァァン!!


衝撃波が襲った。

ニナに抑えられていなければ、僕たちは確実に吹き飛ばされていただろう。

煙が晴れた時、そこには何も残っていなかった。

イザトラの巨樹は、跡形もなく消え去っていた。

上級魔術師と特級魔術師の差が、残酷なまでに明らかになった瞬間だった。


イザトラは息を切らせ、自分の大技が一瞬にして無になった事実に顔をあげれなかった。

それに対してリリア先生はイザトラの前で、何一つ表情を変えないまま杖を向ける。


「あなたの好き勝手もこれでお終いです」

「クッ、、、、」


勝負はついた。

終わった。これで長い戦いは終わったのだ。

僕たちは直ぐにリリア先生の元へと駆け寄った。


「リリア先生!」

「先生!」

「シエロ君にセリカさん。お騒がせしてすみません」


やっとだ!やっと先生と普通に話す事が出来た!

そう思った時イザトラがゆっくりと立ち上がった。

先生との感動の再開をしてる言いていうのに!!!!


「これで終わったつもり?はぁはぁはぁ、、、私はまだ負けていない」

「本当にしつこいですね」


リリア先生はイザトラの額に杖を突きだす。


「やれよ、やってみなさいよ」


リリア先生の杖から緑色の光が出る。

その時だった。


「そこまでにしていただきたい。リリア・マートル風特級魔術師よ」


突然響いた声に、全員が振り返る。

そこにやってきたのはルイドスの父と、この家の医務係数名だった。


「あなたは、、、」


リリア先生が杖を下ろす。


「この度はうちのイザトラが、無礼な真似をした。心から詫びよう」


ルイドスの父が深々と頭を下げる。


「ちょ、あなた!?私は!」


イザトラが抗議しようとするが、


「少し黙っていろ」



冷たい一言で制された。

「...チッ」


イザトラは舌打ちをして、視線を逸らす。


「おい、そこで何をしている?さっさとルイドスを医務室に連れて行きなさい」


医務係がルイドスを担架に乗せて運んでいく。

ルイドスは意識を失ったまま、顔色が悪い。

(こいつが今回の黒幕だ)

僕はルイドスの父を睨んだ。

今頃謝って、それで許されるとでも思っているのか。


「それにマーガレット家のお嬢様、今回の事は多めに見ていただければ助かります」

「ふん!それよりシエロにも謝りなさい!」


セリカが腕を組んで言い放つ。


「少年よ、今回の事は本当にすまなかった」


ルイドスの父が僕の前で頭を下げる。


「以前ルイドスが君に負けた時、うちのイザトラが変な情を持ったのか、復讐するかのように多くの人を巻き込んでしまった」


クソ!本当は許したくない。

でも、こんな風に謝られたら、、、

(いや、違う。今回の一番の被害者は僕じゃない)


「僕は大丈夫です。許されるかどうかはリリア先生次第です」


全員の視線がリリア先生に集まる。

先生は少し考えてから、静かに答えた。


「そうですね。私は別に、このまま皆が安全に帰れれば良いです」

「これはこれは心優しい。感謝申し上げます」


ルイドスの父がほっと息をつく。

リリア先生の心の広さに感謝しろ!!!


「マーガレット家のお嬢様も今回の事は、ご両親にはどうか秘密にしていただければ幸甚でございます」

「別にパパとママに秘密にしてあげても良いわ!」


セリカが胸を張って言う。


「でも条件があるわ!」

「条件とは何でしょうか?」

「一つ。今後シエロや先生には手を出さないこと!勿論家族も含めるわ!

 二つ。ルイドスに厳しくしすぎない事!

 そして最後、学校を良くする事!」


ルイドスの父は少し考えてから、深くうなずいた。


「承知いたしました。以降、何もない限り私達は手を出さないと約束しましょう。そして学校を良くすることに努めましょう」

「もし約束を破ったらすぐにパパとママに言うんだからね!」

「はい。勿論です」


そうして僕達は四人でスカラルト家を後にした。

夕日が空を染めている。

長い一日だった。

ニナが用意した馬車に揺られながら、僕はリリア先生に今回の詳しい話を聞いた。


「実は、あの魔術の授業で問題を起こした日から、スカラルト家は動き始めていたんです」


先生の声が、馬車の中に静かに響く。


「彼らはアルランド家を自分達の傘下に置こうとしていました。でも、思うようにいかなかった」


僕の家に来た時の事か!

あの時は僕の渾身の謝罪と母に救われた。


「それで先生に?」

「ええ。ルイドス君に上級魔術を覚えさせて、シエロ君にリベンジさせろと」


先生が苦笑いを浮かべる。


「逆らえば、シエロ君を学校から退学させると脅されました」

「で、でもこれでようやくリリア先生も学校に戻れますね!」


僕は明るく言ったが、先生の表情が曇る。


「その事なのですが...」

「どうかしましたでしょうか?」

「私は学校の先生は、もうこのまま辞めようと思っています」

「ど、どうしてでしょうか!?」

「え!?先生!?」


僕とセリカが同時に声を上げた。

夕日が沈む静かな道。

馬車の車輪が石畳を叩く音だけが、規則正しく響いている。

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