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第13話 JBC2歳優駿開催

【笠松の主演女優】

ロマンブライト ウインブライト  ステイゴールド   *サンデーサイレンス

                            ゴールデンサッシュ

                 サマーエタニティ   アドマイヤコジーン

                            オールフォーゲラン

        ロマンスター  *スターオブコジーン  Cozzene

                           Star Gem

                 オグリピンキー    *トニービン

                            オグリローマン

 未来優駿シリーズも、ネクストスター名古屋を終えると残りはクライマックスの三競走のみとなる。門別のJBC2歳優駿(JpnIII)、園田の兵庫ジュニアグランプリ(JpnII)、川崎の全日本2歳優駿(JpnI)である。


 そのクライマックスの三競走を前に、新聞にとんでもない記事が掲載された。

 ネクストスター笠松を勝った『ロマンブライト』が中央競馬の牝馬クラシックに挑戦するというのだ。新聞は早くも『芦毛の怪物伝説の再演』などと書きたてている。


 笠松の新馬戦でデビューし、続く芙蓉特別にも勝利。

 二戦二勝で門別に遠征し、ターフチャレンジに出走し見事勝利。

 笠松に帰って来てネクストスター笠松に出走して勝利。

 デビューから四戦全て後方からの差し切り勝ち。次走は中央競馬の福島2歳ステークス(OP)に出走予定なのだそうだ。その結果次第では阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)に出走予定だとか。


 父は香港のGIを二勝したウインブライト、母はロマンスター、母の父はスターオブコジーン。

 父のウインブライトは稀代の荒馬ステイゴールドの産駒。ステイゴールドはオルフェーヴル、ゴールドシップに見られるように気性難を抱える名馬を多数輩出した種牡馬である。

 母ロマンスターの父はスターオブコジーンで、その父はコジーン。ウインブライトの母の父はアドマイヤコジーンで、その父は同じくコジーン。つまりロマンブライトはコジーンの5×4というクロスを持っているという事になる。


 コジーンは、ナスルーラ、グレイソヴリン、フォルティノ、カロと続くサイアーラインで芦毛の名馬を多数輩出している。

 ナスルーラは鹿毛馬なのだが、そこからコジーンまでは全て芦毛馬である。コジーンの母は鹿毛、カロの母は栗毛、フォルティノの母は鹿毛で、グレイソヴリンの母コングが芦毛という状況にも関わらず、その芦毛遺伝子を色濃く引き継いでる。

 ロマンブライトも芦毛馬である。


 三大始祖といえば、ゴドルフィンアラビアン、ダーレーアラビアン、バイアリータークの事であるが、これは実はその三頭を祖とした馬が今に至るまで残っているというだけに過ぎない。実際には血統表にだけしか残っていない消滅した始祖の血統というのが存在している。最も有名なのが、この芦毛という毛色を現代にまで伝えているオルコックアラビアンだろう。


 芦毛の馬を辿っていくとほとんどの馬がこのオルコックアラビアンに行きつくのだそうだ。

 芦毛というのは優性遺伝で両親のどちらかが芦毛じゃないと生まれない。当然の事だが両親共に芦毛でなければ、芦毛の産まれる確率は二分の一である。オルコックアラビアンの血が絶えたという事は、種牡馬に勢いが無かったという事になるわけだから、徐々にだが血は淘汰されていくはずである。にも関わらず現代までこうして途絶えたと言われるオルコックアラビアンの毛色が残るのだから、競走馬というのはわからないものである。


 記事には締めとして馬主の若尾錦氏のコメントが記載されていた。


”本馬の曾祖母はかつて中央競馬の桜花賞を制したオグリローマンであり、本馬も必ずや来年の牝馬クラシックの台風の目となってくれる事だろう”



 ◇◇◇


 いよいよJBC2歳優駿の馬柱が発表になった。出走馬は全十四頭。


 中央競馬からは、グロッタアズーラ、ニンフルサグ、モディリアーニ、ライジングイーグル、クロストゥーユーの計五頭が参戦。

 グロッタアズーラ、クロストゥーユーがそれぞれ一番人気、二番人気となっている。三番人気は大井のカリナン。四番人気に北海道のラッキーユニバース。

 ここまでの四頭がかなり人気として高くなっており、五番人気から少しオッズが上がる。

 その五番人気にモディリアーニ。六番人気がライジングイーグル。川崎のウィンザーローズが七番人気。八番人気はネクストスター盛岡を制したスプリングオペラ。

 九番人気以下はオッズも二桁後半となっている。


 グロッタアズーラは芝の新馬戦を五着に敗退した後、ダートの未勝利戦に勝利してここに挑んでいる。次走は全日本2歳優駿、年明けにサウジダービーの遠征を予定しているのだとか。

 クロストゥーユーはダートの新馬戦を勝利し一戦一勝。こちらも次走は全日本2歳優駿、年明けはダートクラシック路線に出走予定らしい。


 元から素質の高い中央競馬の馬がやはり強いのか。それとも例年に比べ質が高いと言われ始めている地方の代表が勝つのか。スポーツ紙はそんな煽りをしている。



 我が家はこの注目の一戦をビール片手に家でインターネット視聴する事になった。

 深雪の予想はやはり中央競馬の馬は強いだろうという事でグロッタアズーラらしい。人気薄ではあるがウィンザーローズには頑張って欲しいと応援の複勝馬券も購入したそうだ。

 俺も本命はグロッタアズーラ。そこからクロストゥーユー、カリナン、ラッキーユニバースへ流した三連複馬券。



 ◇◇◇


 夕方十六時半。いよいよ出走の時刻となった。数日前に降った雨によって、未だに馬場は湿っており稍重となっている。

 十一月の十六時はもう陽が暮れてからかなり時が経っており、真っ白な砂が敷き詰められたコースを照明が照らし出し白金のように美しく見える。


 係員が旗を振るとファンファーレが生演奏され、一気に観客も盛り上がりを見せる。



 第四コーナーの先にゲートが置かれ、観客の真ん前でゲート入りが行われる。中央競馬と違いそこまで歓声が多いわけではないが、やはりスタンド前発走は馬にとっては嫌なものらしい。枠入りを嫌がる馬が何頭か出ている。


 八枠十四番モディリアーニが枠入りしたところでゲートが開いた。


 最初に押して先頭を切ったのは先行力に定評のあるカリナン。続いてウィンザーローズとラッキーユニバース。その後ろにライジングイーグル。グロッタアズーラ、ニンフルサグは後方グループで、その外にスプリングオペラとモディリアーニ。最後方にクロストゥーユー。


 正面直線コースを過ぎ一コーナーへ。

 カリナンが作り出すペースはほぼ平均ペースで、二つに別れた馬群もそこまで間隔は開いていない。おおよそ一団といっていい状態。


 二コーナーを過ぎて向正面直線に入る。

 直線半ばから徐々にカリナンが速度を上げ始める。それに合わせてウィンザーローズとラッキーユニバースも速度を上げる。それに付き合わなかったライジングイーグルは後方集団へと編入。逆にグロッタアズーラは後方集団から抜け出しカリナンたちの追走を開始した。


 三コーナーを回ってカリナンがロングスパートに入った。

 ウィンザーローズもラッキーユニバースもじっと耐えたのだが、その外をグロッタアズーラが追い越して行った。人気の一角に前に行かれ、渋々ラッキーユニバースが追い出しを開始すると、ウィンザーローズもそれに続いた。

 後続も徐々に追い上げてきたのだが、その差はあまり詰まってはいない。


 四コーナーを過ぎ、最後の直線に入ると、カリナンの鞍上宮本はさらに鞭を入れる。ぐんぐんと加速するカリナンだったが、残念ながら逃げ切り体勢とまではいかない。内からウィンザーローズが、外からラッキーユニバースが、凄まじい迫力で迫ってくる。ライジングイーグルとグロッタアズーラが、二頭並んで外から猛然と追いかけてくる。


 後方集団も必死に鞭を入れているが、カリナンとの差が全く詰まらない。スプリングオペラは前が塞がり追い出しが遅れた。そんな中、ただ一頭クロストゥーユーが大外からじりじりと追い上げてきている。


 だが門別の直線は長い!

 各馬まだ諦めずに壮絶な追い上げを見せている。


 残り二百メートル。

 追走していたラッキーユニバースの脚色が衰える。逃げるカリナンは逃げ切りをはかろうと必死である。ウィンザーローズが並びかけると、カリナンはもう一度伸び脚を見せる。

 ライジングイーグルの伸び脚が鈍る。だがグロッタアズーラはそのままの勢いで伸びて来る。

 ここでやっとスプリングオペラが追い出しを開始。スパッと切れる末脚で一気に順位を上げていく。


 残り百メートル。

 鞍上宮本がさらに鞭を入れ、カリナンが一気に抜ける。ウィンザーローズが必死に追いすがるが中々差が縮まらない。ラッキーユニバースは完全に一杯になった。グロッタアズーラも追いかけているがじりじりとしか差が詰まらない。


 大外からエンジン全開になったクロストゥーユーが猛烈な末脚で突っ込んで来る。最内からもスプリングオペラが豪快に追い上げる。


 ゴール板はもう目の前。

 追いすがるウィンザーローズを一馬身半引き離し、カリナンが先頭でゴール板を駆け抜けた。見事な逃げ切り勝ちであった。

 鞍上の宮本は思わず鞭を強く握りしめて前後に振った。



 一着カリナン(大井)、二着ウィンザーローズ(川崎)、三着ラッキーユニバース(北海道)。

 四着グロッタアズーラ(JRA)、五着クロストゥーユー(JRA)。

 スプリングオペラが六着、ライジングイーグルは七着、ニンフルサグが十三着、モディリアーニが十四着という結果に終わった。

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― 新着の感想 ―
JBC2歳優駿で北海道とJRA以外の馬が1,2着とは、カリナンもウィンザーローズもかなり強いですね。 カリナンは地方競馬は前目有利とは言え、そのまま逃げ切れず先行馬に捕まることも多い中逃げ切り勝ちは…
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