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第11話 未来優駿シリーズに突入

【大井の至宝】

カリナン クリソベリル   ゴールドアリュール *サンデーサイレンス

                         ニキーヤ

              クリソプレーズ    エルコンドルパサー

                         キャサリンパー

     ナイトオブスター メジロマックイーン  メジロティターン

                         メジロオーロラ

              ワンウィッシュ    エアダブリン

                         プティエトワール

 九月に入ると、いよいよ『未来優駿』というシリーズに突入する。

 大井競馬場のゴールドジュニアから始まり、各地のネクストスター競争を経て、十一月のJBC2歳優駿、兵庫ジュニアグランプリ、最終戦の全日本2歳優駿で幕を閉じる。

 ここまで二連勝中のビヴロストも、セレクトゴールド競争で認定を取得して、この未来優駿の一つ、ネクストスター名古屋に挑もうとしている。



 セレクトゴールド競争を三日後に控えたある日、仕事中にメールが入った。宛先は結城調教師。恐らく出走予定の連絡だろう、そう思って確認は後回しにしていた。


 昼休憩、石野社長と昼食をとっている途中でメールの事を思い出しやっと内容を確認した。そこにはビヴロストが熱発を起こしたという事が書かれていたのだった。


 残念ながらセレクトゴールド競争は回避しようと思う。セレクトゴールド第二戦以外ローテーション的に良いレースが無いので、このまま経過を観察し、ネクストスター名古屋に挑む事にしましたと書かれていた。次走の結果いかんではライデンリーダー記念への遠征も白紙になるかもしれない。この時期の馬は体調を崩す事が多いとはいえ、このような事になってしまい申し訳ありませんでしたと謝罪まで記載されていた。


 メールの内容を聞いた石野は、まるで小学生の我が子の報告を担任の先生から受けてるみたいだと笑い出した。




 『大井競馬場に芦毛の怪物現る!』


 未来優駿の初戦ゴールドジュニア(SIII)の翌日、スポーツ新聞の記事にそんな見出しが躍った。二着に一馬身差を付けての勝利。着差以上の強さを感じると記事には書かれていた。


 勝ったのは『カリナン』という馬。父クリソベリル、母ナイトオブスター、母の父メジロマックイーン。

 父のクリソベリルは数々のダートの名馬を輩出したサンデーサイレンス系のゴールドアリュールの産駒。現役時代はジャパンダートダービー、チャンピオンズカップ、帝王賞、JBCクラシックと、ダートのチャンピオンレースを総なめにした馬である。

 注目すべきはその牝系で、過去三代で三大始祖の血統を網羅しているということ。三大始祖とはゴドルフィンアラビアン、ダーレーアラビアン、バイアリーターク。

 母ナイトオブスターの父メジロマックイーンはバイアリータークの子孫。

 祖母ワンウィッシュの父トニービンはダーレーアラビアンの子孫

 曾祖母プティエトワールの父パーフライトはゴドルフィンアラビアンの子孫。

 サラブレッドは血の結晶であり、そういう意味ではカリナンはまさに至宝といえる存在だろう。


 初戦の新馬戦に一着。

 二戦目となるフレッシュスター特別一着。

 そして三戦目となるゴールドジュニアを制した。

 ここまで三戦全勝。


 血統的には母の父メジロマックイーンという所から、中距離から長距離が適鞍だと推測される。にも関わらず千二百メートルのゴールドジュニアを勝利した。つまりは豊富なスピードと豊富なスタミナを兼ね備えた馬という事になるだろう。間違いなく今年の二歳世代でも中心の一頭になるはずだと記事には書かれていた。



 また、サッポロクラシックカップを勝利したラッキーユニバースがサンライズカップ(H1)に勝利したらしい。これでこの馬は五戦全勝。


 どちらも次走はJBC2歳優駿となっており、対決が今から楽しみと記事は締めくくられていた。




 月が替わり、ビヴロストの出走が予定されている十月になった。


 ビヴロストがデビューしてからというもの、ニュースサイトに流れてくる地方競馬のニュースが非常に目に止まるようになった。それまで気にも止めていなかったのだが、気になるとこんなにもニュースになっていたのかと非常に驚愕する。

 そこはやはりというか、ビヴロストが牝馬な為、同世代の牝馬の動向が気になるのはやむを得ない所だろう。

 その中で、現在一頭気になっている馬がいる。

 未来優駿の一つ鎌倉記念(SII)を勝利した『ウインザーローズ』という馬である。実に牝馬らしい可愛らしい名前を付けてもらったものだ。


 父モズアスコット、母アマオウ、母の父ロードカナロア。

父のモズアスコットは芝の安田記念と、ダートのフェブラリーステークスを勝利した二刀流の馬で、その父は欧州で数々の大レースを勝利したフランケル。フランケルは欧州で大活躍しているガリレオ系の種牡馬である。ノーザンダンサー、サドラーズウェルズ、ガリレオと、その三代で一体どれだけの名馬を輩出したのかというくらいの目のくらむようなサイアーラインである。


 父が二刀流だったせいだろう。ウィンザーローズは最初中央競馬の美浦の厩舎に入厩している。だが中央競馬ではデビューせずに移籍して門別競馬場でデビューした。新聞の記事によると脚元が弱く、芝のレースでは負担が大きすぎるというのが原因だったらしい。

 だが脚元が弱いと言っても、競争能力とは別物らしい。

 フレッシュチャレンジ一着。

 続くターフチャレンジは二着と惜敗。

 三戦目のフルールカップ(H3)に勝利して川崎競馬場に移籍。

 四戦目の鎌倉記念に勝利。


 当初、この馬の記事を見た時には、正直そこまで興味はそそられなかった。あのモズアスコットの産駒かという程度であった。それすらも、先月のカリナンの父クリソベリルの方がインパクトが大きかった。何でガリレオ系の父にキングマンボ系の母でダートを走っているんだろう? 普通に芝馬っぽいのに。その程度の印象しかなかった。実はこの馬に興味をそそられたのは俺では無く深雪だったのだ。


 鎌倉記念の二日後の事であった。ビヴロストがデビューしてからというもの、我が家の食卓の話題はビヴロストや同世代の馬の話題になる事が非常に多い。そんな中で深雪が面白い馬がいると言って紹介してきたのが、このウィンザーローズであった。

 名前は知っていると俺が言うと、深雪は嬉しそうな顔で血統は見たかと聞いてきた。モズアスコットの産駒だよね、そう言った俺に深雪はそこじゃ無いと言って笑い出した。


「この馬ね、うちのビヴロストと同じで、ひいお婆ちゃんが凄い馬なんだよ」


 そう言われ血統表を確認する。母アマオウ、母の母イズミバード、その母ロジータ。


「え? ロジータ? ロジータってあのロジータ?」


 ちょっと面白くない? そう言って深雪は嬉しそうに携帯電話で記事を読んでいる。


 ロジータは、全盛期のオグリキャップが挑んでニュージーランドの牝馬ホーリックスに惜敗したジャパンカップに、地方代表として出走した牝馬である。結果は大差シンガリだったが、このレースのメンバーを見たらそれも納得だろう。凱旋門賞馬キャロルハウス、昨年度勝ち馬ペイザバトラー、秋の天皇賞を勝ったスーパークリーク、宝塚記念を勝ったイナリワン、安田記念を勝ったバンブーメモリーとスターホースが揃いまくっていた。

 ジャパンカップの敗戦後は、東京大賞典と川崎記念に出走し、どちらも勝利して引退している。


「自身も東京大賞典勝ってて、繁殖入りしてからカネツフルーヴっていう名馬を輩出してるんだもんね。名牝だよね」


 確かに。調べてみると、産駒の一頭シスターソノからはレギュラーメンバーという名馬も出ている。産駒成績がさっぱりで途絶える間際であったビヴロストとはえらい違いだ。いつかビヴロストがこの馬と一緒に走る事もあるのだろうか?


 次走はこの馬もJBC2歳優駿を予定しているらしい。中央競馬からも出走してくる馬がいるだろうから、どのような結果になるのか今から楽しみだ。

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