7 ボッチ、モーセになる
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ギルド内部
リンリーン リンリーン
ザワザワ ザワザワ
はあ、うるさ。だから人は苦手なんだよな。ん?なんかでかいおっさんがこっち来るんだけど。なに、私なんにもしてないよね。うん、さっき入ったばっかだから何もできないもんね。
「なあ」
こうゆうのは無視するに限るんだよね。
「おいって」
放置放置。
「無視すんなよ」
うるさいなあ。
『絡まれてるけどいいの?』
『無視してるww』
「お前に言ってんだよ」
痛いなあ。いきなり肩つかまないでほしいんだけど。しょうがないなあ。
『は?』
『こいつなにやってんの?』
『こいつしつこ』
「はあ」
『ため息ww』
「何ですか?」
『すっげえめんどくさそう』
『睨んだれ』
睨む・・・か。おけ。んじゃ、もう一回
「だから、何ですか?」
「あ、えっと」
なんで、いきなり黙るの?
『ビビってるww』
「何子供相手にビビってんだよ」
うわ、増えたんだけど。
『増えた』
『名前はチンピラAとチンピラBでいいか』
『それでいこう』
確かにチンピラだね。チンピラBは喋ってくれるといいけど。
「その人いきなり黙っちゃったんですけど、私に何か何か御用ですか?」
「あ、ああ・・・ガキが冒険者ギルドに何の用だ?」
あ、なるほど。15歳の子供がきょろきょろしながら入ってきたから気になったんだね。
「えと、依頼を受け・・」
「依頼したいのか。それなら受付で頼めばギルドに貼ってもらえるぞ」
『おい』
『今喋ってたやろが』
「あ、はい。ありがとうございます」
『流されるな』
『チンピラB優しくね?』
『心配して声かけた感じだしな』
『よし、チンピラからただのおっさんに昇格だな』
・・・ん?依頼しに来たんじゃなくて、依頼を受けに来たんだけど。おっさん今なんつった?依頼をしたいのか?なんか勘違いしてるじゃん。
「あの、すいません」
「何だったら嬢ちゃんの依頼、俺が受けてやろうか?」
『取れ高優先のルーレが依頼なんかするわけねえだろ』
依頼なんかって、もう少し言い方気を付けよ?まあ、依頼をしないのは事実だけどさ。
「私、依頼をしに来たんじゃなくて、依頼を受けに来たんですけど」
「・・は?」
『おっさん唖然ww』
「あと、ギルドには来たことがあるので大丈夫ですよ。それじゃ、失礼しますね」
「いやいや待て待て、依頼は危険なのが多いんだぞ?そもそも、依頼は冒険者じゃないと受けられないが」
何だ、そんなことか。
「それも大丈夫です。一応私も冒険者なので」
「そうか、それならよかった・・ってそうじゃねぇ!!EランクやDランクで調子に乗るな」
『余計なお世話だよww』
『さすがに失礼』
ちょっと失礼すぎない?
『ちなみに冒険者のランクは上から カードの色
SS 世界から認められた冒険者 プラチナ
S 二つ名持ちの冒険者 ホワイト
A 国から認められた冒険者 ゴールド
B 一流冒険者 シルバー
C 一人前冒険者 ブロンズ
D 半人前冒険者 ブルー
E 駆け出し冒険者 グリーン
こんな感じだ』
てゆーか、いくら子供だからって弱いわけじゃないんだけど。
「なら、私の冒険者カード見ます?あなたよりもランクは高いと思いますけど」
「何だと!・・いいだろう、見せてみろ。ちなみに俺のランクはⅭだ」
『ドヤ顔ww』
おっさんのドヤ顔はかわいくないんだけどなぁ。
「大丈夫ですよ。どうぞ気が済むまで確認してください」
そう言ってアイテムボックスからカードを出して渡す。おっさんはカードを見る。そして
「っな!?」
おっさん、いい反応してくれるねぇ。そんな面白い顔してくれるとは。
「その年でプ、プラチナだと!?」
『驚きすぎだろ』
『ま、SSランクの冒険者なんて滅多にお目にかかれないんだろ』
ザワッ
「嘘、だろ」
『チンピラAは逃げ出した』
『おい、チンピラAww』
「ふうん、おじさんの目っておかしいの?」
『カードを見せた途端に敬語じゃなくため口になってる』
『CよりSSの方が立場が上だろうからな』
「いやそういうわけじゃ」
まあ、興味ないんだけどね。
「どうでもいいんだけどさ」
「は、はいっ!?」
『おっさんは敬語になってるww』
「そろそろカード、返してくれない?」
「あ、ああ・・・すいません。ど、どうぞ」
カードを受け取ってアイテムボックスにしまう。
「ねえ、もういいでしょ?私、依頼受けに来たんだけど」
「引き留めてすみません。もう大丈夫です。どうぞ行ってください」
やっと解放された。さて、掲示板にはどんな依頼があるかな。迷子探しに庭の草むしり。店番に商品作り。はあ、アルバイトを探してるわけじゃないんだけどなぁ。
『雑用ばっかだな』
『冒険者養成学校の実戦訓練のコーチは?』
そんなとこあるんだ。めんどくさそう。
『面白そう』
『これにしよ?』
でもまあ、みんなが楽しめるなら悪くはない・・・かな?
「いいよ、これ受けようか」
『よっしゃぁぁぁぁ!!』
『やった』
「これって取れ高ある?」
『また?』
当然じゃん。取れ高大事。
『ww』
『さすが取れ高モンスター』
人を新手の魔獣みたいに言わないでよ。
「んじゃ、受付に持って行こう」
磁石を外し、依頼内容の書かれた紙取る。
『おー』
私は受付に向かって歩き出す。・・あれ?なんかみんな私のこと避けるんだけど。なんで。
『モーセみたい』
『面白いww』
いや、笑い事じゃないんだけど。リアルでも避けられてるのに、なんでゲームの中でも避けられなきゃいけないのさ。リアルで避けられるのはどうでもいいけど、ゲームの中だとこたえる。楽でいいっちゃいいけど。っとここか。
「すいません」
「は、はい!?何か御用でしょうか」
ん?この人美人だな。いや、美人というより可愛い女の子かな。ピンクの髪にはちみつ色の瞳。うん、可愛い。
『びっくりしてるww』
「これ、受けたいんですけど」
そう言ってカウンターに紙を置く。
「か、かしこまりました。・・・えっと、この依頼は貴方の名前で受注しますので冒険者カードを提示してください」
緊張してたみたいだけど、持ち直したね。
「お願いします」
受付嬢さんにカードを渡す。
「はい、確認しますね。えと、ルーレさんですね。うわ、プラチナカードなんて初めて見た」
後半は独り言かな?
『独り言でっかww』
「よし、できた!」
『新人さんかな?』
『すっごい嬉しそう』
うん、なんか可愛い受付嬢さんだね。
「お待たせしました。受注、完了しました」
『ちょっとだけドヤ顔ww』
『可愛い』
『おっさんは見習ってもろて』
「ありがとうございます」
カードと依頼の紙を受け取る。
「ルーレさん、そちらの依頼なんですが」
「はい、何でしょう」
「その紙にも書かれているのですが、明日の午後2時に冒険者養成学校ですので、お間違えの無いようお気を付けくださいね」
「はい、親切にありがとうございます」
受付嬢さんにお辞儀をして、ドアに向かう。ドアに手をかけた時、後ろから声がした。
「ルーレさん」
私はゆっくりと振り向いた。
「何ですか?」
受付嬢さんは深呼吸をして、大きな声で明るくこう言った。
「いってらっしゃいませ」
一瞬脳裏に彼がよぎる。あり得ないことだけど、彼女と彼が重なる。⦅いってらっしゃい⦆あの人も毎日私に笑ってそういってくれた。私は?私はなんて返していた?そうだ、私も笑ってこう言っていたんだ。
私は受付嬢さんに言葉を返した。私が彼にしていたように。勿論笑って。
「行ってきます!」
??、行ってきます。
⦅うん霊、行ってらっしゃい⦆
あの人が言っていた言葉。勘違いかもしれないけど、気のせいかも知れないけど、あの人の声が聞こえた気がした。
待っててね、??。
* *
「というわけで、今日はこれで終わるね」
『はーい!』
「明日は午後1時30分に配信するよ」
『りょ』
『おけ』
『わかった』
『んじゃな』
設定画面の配信終了ボタンを押した。板と球が消える。
「ふう、システムゲームを終わる」
〈ログアウトしますか?〉
「Yes」
〈了解。ログアウトします〉
視界が暗転して、感覚がなくなっていく。そして、ゆっくりと意識が沈んでいった。
次回、現実サイドの予定です。
ではまた、一週間後にお待ちしています。
個人的なことですが、ブックマークが一つついていました。
ブックマークをつけてくれた方、本当にありがとうございます。作者、一人で大喜びしました。