96話 大仕事が終わって
「俺がカミノの国王カドマツです」
ボルトシメ王国の村長たちに話をつけた。
まだ巨大な暴動が発生する前、というより日本のような情報化社会ではない。
口伝えの情報しかないので多くの民は災害について良く知らない段階だったのだ。
「国王様が直接きてくださるなんて―――」
「混乱を避ける為に私たちは救助ではなく友好の証として食料を贈ったと伝えて下さい」
「友好の証ですか?」
「新しい国王が友好の証を贈ってきたと。どんなに政治的に思われてもいいのでパニックだけは徹底的に避けて下さい」
「……なんと」
各地に救援物資を〈友好の証〉として飛行船で配った。
食事と火さえあれば雪国は氷を溶かして水を飲める。
さらにはトンデモ策に思えるかもしれないDVDと映写機を数台贈った。
「何故こんなものを?」
「娯楽は犯罪率を減らすからな」
あっという間に作戦が功を奏した。三日後の昼にはかなり事故について広まったにも関わらず略奪行為などの被害はかなり少なく済んだ。
雪崩のほうはおもに魔物の軍隊が対処してくれた。復興までわずか1週間という目途が立つ。
「ティラノ、復旧の様子どうだった?」
「まだ1週間はかかるけれど国家が崩壊するような事体はさけられそうね」
「……協力ありがとな」
「別にあなたのためじゃないわ、礼は不要よ」
レイニーの【スキルカード:テレポーター】は数人を移動させるのが限界。
それでも全体で見れば世界中に一瞬で移動できるのだから驚かれはする。
今まで目立たなかったが船ごとを瞬間移動なんてチートスキルにもほどがある。
「私だって運ぶだけならできるのに……」
レイニーが嫉妬してる。俺から見れば充分レイニーもすごいの。でも今回は相性が悪い。
「水のスキルだと地面が濡れるから雪国だと凍っちまうし―――」
「……仕方ないですね」
「レイニーにはカミノの水を管理するって大仕事してもらってるから、ね?」
「そうですよ」
ドヤ顔してる、俺もチョロイって言われがちだけどレイニーも人のこといえないな。
「カドマツはもうカミノに帰ったほうがいいわ、レイニーはこっちよ」
「え」
「え」
「さっさと動きなさい」
ティラノにレイニーを誘拐(?)され俺は城へ強制的に帰らされた。
城ではトラブルが起きていた。
何か真剣な表情のウルフと巨大テーブルを囲む城のメイド。
「時刻は8時ぐらい―――起床したらなくなっていた」
「どこかに落とした、ということはありませんか?」
「逆に聞くが鍵や財布ならともかく着ていたものどーやって落とすんだ?」
「それは確かに」
ふむ? ウルフが何か亡くしたのかな。
「ウルフ」
「お帰り」
「何を失くしたんだ?」
「お前らに貰った首輪」
「……もう一回、同じの買ってこようか?」
「いや! あれがいいんだ!」
「あのーそれよりレイニー様はどちらに?」
「仕事があるからとティラノに連れていかれました」
「急に距離感縮まったな……カドマツはティラノと無人島で何かあったのか?」
「一晩ヤった」
「は??????」
「俺はなウルフ、夜のテクニックだけは自信があったんだ」
「……俺が聞いていいやつ?」
「俺の20倍は手練れだった……あれだけは本当に自信あったのに!」
「あーそういや確かに島で男をはべらせていた―――ってのは聞いたことあるな」
「それはともかく首輪さがしだな」
「お前は国の仕事をしろよ」
「ハクアがどう入り込んだのかまだ分かってないからな……ウルフの首輪も嘲笑うための泥棒なんて可能性もないわけじゃない」
敵陣にメガネかけ忘れてくるアホなので予想外は考えておいたほうが良さそうだ。




