94話 サバイバル 後編
「武器は銛しかないけど……」
でも食べたい、お腹が空いた。
危なければ助けてはもらえるかもしれないが空腹は助けてくれない。
俺がすべきことを考えた結果、とってきた魚を茹でた。
「まずは飯を食べないと戦えないし!」
「そうね、ハッキリ言うけど合ってるわ」
「え」
「いるのよ時々! ろくにご飯も食べずにダンジョンに潜るバカ!」
とてもお怒りなご様子。
何かあったのか聞けば犯人はレイニーらしい。
一緒に旅をしていた時に食事を取らずにダンジョンに行き死にかけたのだそう。
そこで死んでたら俺は今頃どうなっていたのやら?
「魚は喰えたし……鮫の魔物か」
【スキル:トラウマ】は綿のぬいぐるみだから海を行けない。だが【スキル:ボート】でボートは出せるから海上へ行くことは可能。
鮫ばかりに気をとられてもいけない。
無人島で生活して4日が経過した朝に作戦を決行することに。
よく見れば鮫の魔物は目が丸く大きくてちょっと可愛い。
【スキル:ノビノビコード】
コンセントを操れるという元々はいらねぇと思ったスキルだ。
だが、俺には家電を出せるものがいくつかある。
電気不要なので意味のないコンセントだったのだが【スキル:ノビノビコード】があれば武器に代わる。持ちやすいという理由で掃除機を出した。
「喰らえ!!【スキル:ノビノビ――】速いな!?」
いや、俺のスキルが遅いのであって決して速い魔物ではない。
今まで出会った中では低クラスだろう。
何とかして動きを一度止められれば捕まえられる。
「血で―――いや、駄目だ」
ティラノに出された怪我をするなという条件に引っかかる。
捕まえて戦おうなんてかなり迂闊だった、反省しなきゃな。
最初に仕留めてからロープで岸まで運ぶ方が圧倒的に安全。
「【スキル:石投げ 投げた石の軌道を変えられる】」
重い石を投げるのは難しいが船から落とすだけであれば難易度は各段に下がる。
それだけでは当てるのが難しいのでスキルを工夫して網を作って追い込み漁。
狙い通りに石は当たったし初めて1人で魔物が狩れた。
「成功すると思わなかった!」
鮫を陸地までコードのスキルなどを工夫して運び料理開始。
夜になってようやく鮫のスープが完成して食べられた。
人間にとって大事な衣食住の食だけはなんとかなったが残り二つはまだである。
「ま、ここまでは及第点かしらね」
「鮫スープ美味しい?」
「美味しいわよ」
「てっきり、この程度しか作れないのかーとか言われるのかと」
パァン!!(ビンタの音)
「ビンタするわよ」
「もうしてんじゃん!!」
「あんたもアタシのこと理不尽に怒ってるクソ女と一緒にするのかしら」
「いや……そうじゃなくて、それ死ぬほどしょっぱい筈なんだけど」
海水で作ったとんでもなく塩辛いスープなのに美味しいのか。
「異世界転生者は年をとればとるほど過激な味が分からないのよ」
「レイニーとどっちが年上なんだ?」
「レイニーとならアタシの方が上ね」
「に、しては頭がしっかりしすぎている気がするんだけど」
「魔物と間違われてる犬! 襲い掛かってくる魔物を全部許しちゃう子! ほんとーに肝心なことは言ってくれないガキ……ていうか、恋人が死んで1人で大物に立ち向かうとか自殺にしたって他にあるでしょうがまだ! 自分の命だけは本当に粗末にする元盗賊に―――アタシがしっかりしなきゃと思っていれば案外ボケないのよ」
月下美人という月の灯りで人が美しく見える現象がある。
まさに今がそう、なんだろうけど。
いまだ彼女が世話してやらないといけない、そう優しく微笑む顔が胸に刺さる。
「……マジか」
俺、ティラノに惚れちまった。




