90話 世界を知る
「異世界転生者ってさ、もっとこう可愛いヒロインがいるもんなんだよ」
ティラノさんもサカネさんもメレンゲさんも可愛いヒロインではある気がする。
人妻が混ざってる?いいじゃん人妻のヒロイン。
でも、異世界転生者ってもっとこう黄色い声援をキャーキャーされてるイメージ。
「勉強に疲れてきてるな……休憩したほうがいいぞ」
「そうだウルフ、パンゲアって国について何か知らない?」
世界を勉強していたらパンゲアという国が世界のどこかにあることが分かった。
でも詳しいことが書かれた資料がほぼない。
面積的な意味で巨大な国らしいのに、である。
「恐竜がいる」
「魔物の恐竜型?」
「いや、魔物ではなく恐竜がいる」
「魔物との違いは?」
「炎をまとっていたり……スキルが使えるのが魔物だと思っててくれ」
「へぇ」
「それにパンゲアは国ではなく大陸の名前なんだが―――どうした?」
「そこから移り住みたいって要望がきてて」
「あんなところに住んでいればそれはそうだろうな」
レイニーの【スキルカード:テレポーター】で軽く見にきた。
恐竜と戦って死に物狂いで生活している民族がいた。
ので、レイニーに頼んで恐竜をボコしてもらう。
『肉はわたさんぞ!!』
「いらねーから」
『誘拐か!?』
「俺はカミノの国王、この大陸へは視察にきた」
『そんな馬鹿な話が信じられるわけないだろ!!』
真実なのに?
「食料を渡せば話をしてくれる―――ってことでいいか?」
『いや、水だ!! さっきあんたら水を出しただろう!!』
枯れていた池にレイニーが水を入れた。
食料も渡すからこの地域について俺たちはただ聞きとり調査にきただけだと伝える。
長老が出てきて、自分たちはもうダメだというのだ。
『どうか子供たちだけでも助けてもらえないでしょうか』
「と、いうと?」
『恐竜たちの力は日に日に増し……数か月は恐竜が獲れておりません』
確かに大人も子供もガリガリに痩せ細っている。
「で、助けてくれって移住させてやってくれってこと?」
『……はい』
「逆に全員ならいいですよ」
『え?』
「出来るかレイニー?」
「はい」
「ここにいる25名で全員―――でいいですか?」
『ああ、そうじゃ』
「俺の国は俺に逆らったら死刑、それでも来る?」
『えっ』
何故こういう法にしたのか?と疑問に思われるかもしれない。
魔物である国民たちは基本、国王に逆らう=敵という認識
それだけならまだ良かったのだが問題はガチの敵。
過激派の魔物を殲滅させる組織に国を壊されるかもしれない。
『何故、あなたなのでしょうか?』
「俺が国王だからですけど」
『あなたが国王!?』
人をバカにした態度の、そんなワケないだろうという態度。
国王がこんな所へくるのは有り得ないという偏見があるらしい。
今までもきたのは誘拐目的の海賊ぐらい。
「バカにされましたね、この方々は死刑ですか?」
これ俺が死刑を告げたらレイニー本当に殺しちまうんだろうな。
しかもゲームの敵を殺したような子供の感覚。
放置すればどっちにしろ死ぬけどなこの村。
「待て! いいな? そんじゃまぁ【誘拐】するか」
「はい」
「全員を一旦つれていく、できるか?」
「もちろん」
カミノの城下町に設置した空間(民間人は立ち入り禁止)にレイニーの【スキルカード:テレポーター】で瞬間移動してきた。
『どうなって!?』
『ここはどこだ!?』
『何が起きた!?』
田舎ではスキルがあまり認識されていないのかな。
「国王陛下!!お怪我は!?」
「メレンゲさん俺なら心配いらないから」
連れて来たパンゲアの民が上を見上げている、初めて高層ビルを見ればそうなるだろう。
ビルはこの世界では基本的にカミノにしかないようだ。
万が一壊れたとしても頑丈な魔物たちはそこまでダメージがない。
新しい暮らしをそれなりに楽しくやってもらっている。
「本来なら移住なんてそうそうさせるもんじゃないがな」
「では何故?」
「大人のバカに巻き込まれるのはいつでも子供なんだよ」
レイニーには俺の台詞の意味にピンときていない。
大人という存在になったつもりでいるレイニーには難しそうだ。
俺の持論だが弱いものを守れるようになった時に人は大人になる。
だから、俺はまだ大人になれていないんだ。




