89話 新国王
カミノの大きな公園にて、国王交代のパーティーが行われることになった。
テーブルには食事が並べられて招待客が談笑していたり食事をしていたり。
1人テーブルの上で寝ている破天荒な者がいたが気にする者はほぼいない。
ウルフだけが慌てている。
「おまっ、コロネまた机の上に土足で――!!」
「飼い主うるさいにゃ」
「俺は飼い主じゃねぇっての」
「……ここナワバリの臭いしない」
「あ、まずい!?」
ウルフがコロネさんをかかえて路地裏に入っていく。
真っ赤な顔したウルフだけが帰ってきた。
小さく『見ちまった』と聞こえた気がする。
そして、ティラノさんとサカネさんが珍しくドレス服で話している。
「パーティー……サカネちゃんの頼みだし、ドレス着てきたけど」
「ティラノのドレス姿むっちゃ可愛いなぁ」
「可愛いって言わないでよ! もう、なんか……恥ずかしいし」
ふだんツンツンしてる分、着飾って照れているのがギャップ映えしてより可愛いく見える。別に露出している服ばかりが好きなワケでもない。女性の可愛いやり取りはついつい目が行く。
で、肝心のレイニーは俺の腕を急に引っ張る。
ぐいぐいとすごい力で、抵抗なんか考える間もなかった。
立派な椅子がある場所まで連れてこられた。
「カドマツ様はちょっとここに座ってください」
「新しい国王誕生のパーティーだってのに」
「今までとは違う国になるのですから、私のお願い聞いてくれますね?」
俺はこの時まで国王に命令されちゃ仕方ねぇと思っていた。
レイニーの機嫌を損ねないため、椅子に座った。
でも、次の瞬間に耳を疑う言葉が放たれた。
「では、新しい国王として頑張ってくださいね」
「は?」
馬鹿みたいにデカい体育館でも収まるかギリギリのくす玉が上空で開いた。
俺の目には『新・国王 カドマツ』という字が映る。
ついでに上がる花火。
「私のための国、だからこそ国王は私ではなくあなたが任命されてください」
誰しも目が点である。俺が今初めて聞かされたのだからそりゃそうだ。
「俺何も聞いてねぇぞ―――トルマリン!!」
封印の檻から出てペガサスの姿に戻っている元・国王のトルマリン。
でも、一度も政治をしているところは見たことがない。
かといって別に俺へ譲る要素も今の俺には理解できなかった。
「レイニーガ望ンダモノヲ叶エルタメノ国ダカラナ」
「なのにレイニーが国王じゃないって意味わかんなくない!?」
「国の魔物たちであなたを守らせる、国王ですから当然のことですよね」
「ん? そりゃ国王になれば?」
「ハクアの本体はまだ生きてますから、カドマツ様は狙われます」
「うんうん、それは確かに分かるよ?」
でもさ、国王ってこととかみ合わないじゃん。
無茶苦茶ぱちぱちと拍手されてるけど俺が国王?
レイニーが国王にならない理由は、何だ?
「カドマツ様を国王にすれば軍で守っていてもおかしくないでしょう?」
「そうだけど……」
なるほど、確かに俺という存在を城の兵士たちが守る分かりやすい理由にはなる。
「人間というのは自分が可愛い醜い生き物ですから」
「そういう敵を作る言い方はやめようぜ?」
「国王様がいうなら止めましょうか」
「え」
「王子が一般人のいいなり―――という状況すら人間は不満を持ちますから」
確かにずっと代理で色々やってたけど、それはあくまで代理。
でもよくよく考えたらレイニーが国王より俺のほうが確かにスムーズ。
これでお前は何者? って目線に対して王子の友だちで国王と王子がなにもしないから代理している何ていう説明をいちいちしなくて済む。
「あれ? もしかして俺って国王になる運命から逃げらられない?」
「ウルフさんも喜んでいますし」
「いちいちあの人は何者? という会話に付き合わなくて済む」
「確かにずっと代理で色々とやってきたけど!!」
「言っておくがやること何も変わらないからな?」
最近やけに代理の仕事が多いなとは思ってた。
「やぁ、おめでとう国王」
「なんでいるんだホンイツ!?」
「さっき『出席しろ』ってさらわれたんだけど?」
「娘さんとはうまく折り合いついたの?(小声)」
「おやつにされてる(物理)」
色んなことはひとまずおいておくとしてホンイツは美味いのだろうか?




