9話 地味に使えるスキル
使えないスキルばかりかと思っていたが地味に便利なものもあった。
【スキル:コーヒー コーヒー木が育つ】
地面に無からコーヒー木を生やせるスキル。このカミノ王国ではコーヒーが非常に稀少であり、一杯飲むのに4000マルは必要。メイドや兵士など特殊な職業でない普通の人は何故か1日4時間の短さしか働かない。そのため2日間も働く必要がある。
しかし自給自足できるとなれば話が変わってくる。趣味としてコーヒー栽培ができるようになった。
まだ俺1人での外出許可も降りないし、栽培・収穫・焙煎・流通まで漕ぎつけられれば金にも困らなくなりそう。
「お金の心配ならいりませんからね」
「そうは言っても旅の資金とか」
「旅……この国を出て行きたいのでしょうか?」
「ウルフさんに魔王の討伐を手伝ってほしいって言われてさ」
「ああ討伐! でしたら我が国から軍資金が出ますよ」
補助金が出るのは有難い。遠慮なく使わせてもらおう。
それはそれとして資金が多いほうが色々と自由が利くだろうし、俺は〈スキルカード〉頼みだろうからとにかく莫大な金が必要。
「〈魔法石〉さえあれば〈スキルカード〉って何度でも使えるの?」
「いえ、紙なので劣化しすぎると使えなくなります」
「汚れると使えないってこと?」
「水に濡れたらほぼ一発アウトです」
【スキル:防水スプレー】
【スキルカード:水】
指先からプシュッと吹きかけてみたが、見た目に変化はない。次に〈魔法石〉を消費して水を出した。
濡らしても特に問題なく使えていそうで、これはこれで生業にできるかもしれない。
城下町に持っていって売れたらさらにいいが、なかなか単独での外出許可が降りないし、ウルフさんにそこまで迷惑をかけるのも嫌だ。
「俺っていつになったら1人で町へ行けるの?」
「……何故?」
「資金の調達と魔法石の調達急ぎたいからさ」
「魔王に挑むためであれば魔法石は国が補助します」
「いくつあっても足りないから」
「何に使うつもりで?」
「レベル上げ」
〈スキル〉は使えば使うほどレベル――というか強さがほんの少しずつ上がるらしい。
例えば【スキル:水】でいえば最初は雨粒が指先から出る程度。だが徐々に威力や量が増えたり〈スキル〉によっては硬くなる・範囲が広がる・細かい調整など様々だそうだ。
スキルカードでもレベルがあげられるなら魔王戦で扱いやすいスキルカードで挑むほうがいいに決まっている。コーヒーの木が植えられたところで戦闘に役立てられるか今のところは想像ができない。それに、俺だって炎や氷のスキルで戦いたい。何故ってカッコいいから。
「では計画を立てましょう」
「計画?」
「スキルカードも〈火〉〈水〉〈木〉〈土〉と多様ですから」
こうして聞くと曜日のようだが、〈氷〉、〈風〉、〈治療〉、など何種類もある。だから俺自身が目指す戦闘スタイルを思い描いてからのほうが時間も無駄にならず、レベルアップ効率がいいというわけだ。
スキルの習得までは時間もかかるので闇雲に試すのはお勧めしないとレイニー。ごもっともである。そういうわけで、来たる魔王討伐に向けて綿密な計画を練ることに。
「レイニーは魔王の討伐に参加したことあるのか?」
「……有りますね」
「なくて困った道具とか、魔王の弱点とか……できれば詳しく聞きたいんだけど」
「私は戦線を離れてしまったのでウルフに説明させます」
そういえばレイニーは魔王討伐隊には加わらないんだった。
レイニーが引退しているなら現役で戦っているウルフさんに聞いたほうがいいに決まっている。これ以上外出に付き合ってもらうのも悪いので、城の中で話をきかせてもらうことに……。