78話 レッドサン 前編
シャックたちがニカナの拠点に帰ることに。
「じゃあなー……ポチ、もう出てきていいぞ」
「はい」
シャックやエレナちゃんが会わないように出ないでくれと言っていたポチ。
今では俺の手下とはいえ苦しめていたのは事実。
顔を合わせるのは俺が気まずい。
「聞き忘れてたことがあるんだけど」
唐突に戻ってきたシャック、ポチに慌てて覆いかぶさった。
「誰もいないもん!!」
「犬ひろってきた子供みたいな隠し方だね」
完全にバレバレだ。
とはいえ今は人間の姿をしているしギリ――いけるか?
さっさと会話を終わればワンチャンぐらいはあるかも。
「聞き忘れたことなに!?」
「ニカナが新しい王様にかわるって噂話、何か知らないかな」
「娘に王位ゆずるってだけだろ別に」
「はぁ? あんな男尊の国で娘が国王できるワケないでしょ」
「あーいやムスコ? ムスコです」
男装の麗人を娘とバラすところだった危ない。
いくらシャックでもそんなところからバレたらワンズさんが困る。
レイニーの最低な行いだが、思ったより許しは早かった。
いわゆる示談で済んだ、というアレだ。
「5億円で抱かせてくれるというので良いのかと思ったら断り文句でした」
「まぁ、むす――え?」
「その程度であれば余裕でしたのに……もっと必要だったのでしょうか」
根本的な問題を良く分かってない様子のレイニー。
それとも、経験が少なくて下手だから駄目だったのか――なんてぶつぶつ呟いてる。
何もかも違う、ノアが生きてた世界線なら絶交されても文句言えんだろう。
「子供に罪はなくない!?」
どうやらホンイツが嫌いだからホンイツの子供なので仕返しをしかけた。と勘違いしている。あと性別もこうなってくるとややこしい。
「目的は復讐じゃねーよ、母親のノアにちょっと似ていて」
「ノア!?」
「そこの連絡だれもしなかったのか?」
「……うん」
社会人になったら報連相はしっかりやるべきだな。
てっきりウルフが話しているとばかり。
でも、知らないなら俺が今話してやればいいか。
「ノアとホンイツの間にできた子供に生き残りがいて」
「聞いてないッ!!」
「本人も死んだと思ってただろうよ、ホンイツすら殺した気でいたんだから」
シャックは渋い顔をしながら話を聞いてくれた。
何せ人を食べてしまうのだし、ノアの子だ。
こうなればと詳しい説明をすると予想外の返答。
「人喰いスキルは世界の課題だからなー……そうはいっても強いことが知られているから各国が欲しがるんだけど」
「そうなのか!? 嫌がられてるもんだと思ってた」
「……きみは海外旅行にまた行きたかったりしない?」
「行きたい」
「これあげるよ」
もらった紙には〈異世界転生者専用:レッドサンへの招待状〉と書かれていた。
和紙でちょっと頑丈さに不安があるが嫌いじゃない。
風流とかワビサビって呼ばれる何かを感じる。
「レイニー、レッドサンって何?」
「古い時代の日本に似た国ですが、この時期は祭りをやっていますね」
「なら【スキルカード:テレポーター】でいけるなら行こうぜ」
振り返ったらレイニーはかなり嫌そうな顔で腕組みしていた。
「どーーーーしても、行きたいですか?」
「何か嫌な理由があんの?」
「……はい」
「何で?」
「とにかく嫌です」
レイニーは詳しいことを話してはくれず、シャックと別れた翌日の朝。
せっかく招待券もらったからとウルフに【スキルカード:テレポーター】を使ってくれとお願いした。治安でも悪いなら護衛にもついてきてもらおうかと。
日本風と説明されただけではいつの時代風なのかもよく分からん。
「結果が変わらないだろうし、2人で行ってこいよ」
「結果?」
「新しい四天王が現れる前の方がいいだろうからな」
結局は俺とウルフで行かれるよりはマシだとレッドサンにレイニーと2人で訪れた。
【スキルカード:テレポーター】を自由自在に扱うレイニーは本当にすごい。
だが、目の前に広がる池や枯山水の美しさのほうがもっとすごい!
寺のような建物の縁側へ辿りついたようだ。
目前には巨大な日本庭園、巨大な池には鯉がいて朱色の橋がかかる最高の景色。
「すげえええええっ!!」
「ここは異世界転生者がこの国にテレポーターで飛ぶための専用施設です」
「そんな場所あるんだ?」
『ようこそ、招待状はお持ちですか?』
お坊さんの恰好をした人に招待状を渡した。
少し驚いたあとに建物の外へ案内された―――突然、夕方に変わった。
今は夕方というは早い朝だった気がする。
「なにこれ」
「オボンという祭りの時期はずっと夕暮れ時の景色なので」
「……おまえ誰?」
もしもこの状況がアニメで視聴者がいるなら混乱するだろう、レイニーだろ?って。
姿はほとんど変わらない、鏡のようだ。
でも変なところがある。
「私はレイニーですよ」
「見えてる怪我の位置逆だぞ」
「……」
「ははーん、こういうイタズラする魔物がいるから嫌だったわけか」
で、俺のレイニーがいないのだが後ろを振り向いたら建物が消滅している。
和風ホラーは嫌いだ、何故なら超怖いから。
洋風は洋風でゾンビがグロかったりもするけど銃で解決できる
「お、おいレイニー!? 俺を1人にするとか何考えてんだ!?」
「【スキル:水 通り雨】」
俺の頭上に雨雲ができて、急な土砂降りにずぶ濡れにされた。
荷物からタオルを取り出して身体を拭いてたら周辺に霧が出はじめた。
レイニーは怒った顔ではないが霧のせいでよく見えない。
「疑ってゴメン、何? 鏡みたいになる世界ってこと?」
「……少し歩きましょう」




