73話 ガゴリグの思い出
これはガゴリグにとって今から数百年前に起きた話。
「何でもするので私たちを船に乗せてくださいッ!!」
「お願いします、私も何でもやります!!」
2人の子供と1人の巨大な男。
初代という男の存在はよくしっているが子供を頼まれるとは――とはいえ異世界転生者は姿が変わっていかないからスキルカードなどで成長しないかぎり子供のままだ。
「頼みますよ」
「……初代さんの頼みとはいえ海ってのは危険で子供なんて」
「お願いします」
初代の【スキル:安心】は彼のために何でもしたくなる。
正直なところ嫌なのだが子供たち2人ってこたぁかなり事情があるだろう。
断ったら子供たちが危ないかもしれない。
「しゃあねぇな……けどタダ飯なんか食わせねぇしビシビシ働かしてやるからな」
そんな訳で船に乗せたが結構な夜更けだったので寝室だけ教えて寝た。
のだが何かが俺のベッドに入ってきてもぞもぞしている―――ちょっとまて。
「何してんだお前ら!?」
ノアだけならともかくレイニーにまで夜這いされかけそういうことをするなと2人に拳骨。
ビシビシ働かせるというので働いたのに何で――? と泣かれてしまうし話をきけばこの世界にきてから国王にさせられていた仕事はそれしかないとのこと。
「あの野郎まだ――」
「まだ?」
自分が捕まっていた時代を思い出してちょっと気分が悪くなった。
俺はソッチをされたことはないが殴られ蹴られ殺されるかと思った日々だ。
異世界転生者の女に何していたかはよーく知っている。
「てめぇらの仕事は掃除に洗濯と違うもんだ!!いいからもう寝ろ!!」
部屋からつまみ出そうとしたらウルフがきた。
「親父どうしたんだよ―――え、子供?」
「わんちゃん!」
「犬って二足歩行でしたっけ?」
「俺は異世界転生者だっての!!」
犬だと思って拾ったらある日喋り出したりしたのがウルフだ。
親父って呼ばれた時は悪い気はしなかった。
なにせ喋れるようになったのは暖房にするために数年一緒にいたあとだ。そんなに違和感もなく今では船員として普通に役立ってくれている。
翌朝からビシビシ働いてもらうために甲板へ。
説明中に水は貴重だから使うなというと不思議そうな様子。
「え?」
「とにかく水は使うな」
「スキルを放ってはいけないのですね」
「いやそうは言って―――そういやスキル持ってるのか、見せろ」
「ダメなんじゃ?」
「一回も言ってねぇだろそんなこと!!」
この謎は【スキル:水】を見て解けた。とはいえ出会ったばかりのころの水量は確かに半端なかったが細かい操作が出来ず甲板は水浸し。
「おまえやるな」
「え……私は、褒められたのですか?」
「まーまだ操作はできてねぇが、水の量がそれだけ出せりゃすげーよお前」
そこから妙に俺になついたがどうも話を聞いたところ産まれてから褒められたのが初めてだとぬかした。しかも捕まっていた時代よりも日本のほうが親には酷い扱いを受けていたのだと夜にウルフと話している内容を盗み聞いて知った。
話を聞いた翌日には嵐で3人とも船から落ちてそれ以上は聞けなかった。
そして現代、今のレイニーはこっちを虚ろに見ている。
「お前の友だちは何かあればすぐに飛び込んじまうような危なっかしいやつだろ!」
「……カドマツ様」
「あいつだけは【今のお前】と友達になった正真正銘おまえのもんだろうが」
「私は」
「レイニーなら見捨てたりしない、お前が一番分かってるだろ?」
「……」
「お前がしたのがどういうことかもキッチリ教えてやる」




