7話 スキルカード
毎日の食事を王子様に運ばせているのはいい加減どうなのか。
まだスキルの誤爆が不安かもしれないけれどもずっと俺に付きっぱなしで流石に公務は大丈夫なのかと聞いたらレイニーから予想外の返事が。
「あなたが魔王と戦うことができる方がどうか見極めなければ」
勇気のあるなしではなく今のところ勇者のパーティーから追放される未来しか見えないので期待するのは勘弁してほしい。
【スキル:IH IHがどれぐらいの温度か分かる】
この世界にIH式のコンロは多分無い。
調理場を見せてもらったが、かまど式というか木を燃やして料理するのが主流らしく電気やガスなどはほとんど通っていないらしい。
そんなに#高価__・__#なものを使うぐらいなら〈魔法石〉と呼ばれる道具と〈スキルカード〉で炎の魔法を唱える。
「〈スキルカード〉?」
「簡単に言えばスキルを紙に閉じ込めたアイテムで、〈魔法石〉を用いればカードに封じられたスキルが使えます」
「なら俺でも炎の魔法とか使えたりする!?」
「炎の魔法は初心者には危ないので水のスキルカードをどうぞ」
何やら紙を渡されたが【スキルカード:水】と書かれているだけだった。
具体的に何か書かれていないのは汎用性を付与するためだろう。
たとえば畑に水を撒くとか、水そのものを風呂に運ぶとか。魔物への攻撃も一応は可能。
水のスキルなんていかにも実践向きだと思っていたが、実際は威力が低く攻撃には向かないそうだ。ホース程度の威力なら素人でも出せるが、弓矢でも使ったほうが戦力として有用だと言われ納得した。
「【スキルカード:水】」
俺の手から出た水が天井に当たって跳ね返りレイニーもろともずぶ濡れになった。
しかし、濡れたこと以上にきちんと俺でもまともスキルが使えることに興奮していた。
これも鍛えようと思えば鍛えられるらしく、女神からもらった数々のスキルよりも〈スキルカード〉を使う戦闘スタイルのほうが俺には合っているかもしれない。
「魔法石は高価なので連発はお勧めしません」
服を脱いで傷だらけのカッコいい戦士の身体を見せつけながら言ってきた。
「どれぐらいの値段なの?」
「パン5個ぐらいです」
「買い物したことがないから分からん」
城の中に閉じこもっているわけではないのだが、金もないので町へ出たところで買いものはできない。
レイニーにはお世話になっているし、今のところは特に文句もないが、この〈カミノ王国〉みも慣れてきた。そろそろ城の外の様子もあれこれ見てみたい段階ではある。
窓から見えていた巨大な畑も育てている野菜や果物だって知りたい。
「城下町へ行くのであればウルフさんを同伴してください」
「レイニーは一緒にこないのか?」
「私は城を離れたくありませんので」
「実は引きこもりで人見知りだったりする?」
「私は国の要として、万が一にも死ぬわけにいかないもので」
王子の自己評価が半端ない。
国王の身に何かあったならともかく、王子の1人ぐらい後釜がいそうなものだが。レイニーは1人っ子のようだし、俺に政治は分からない。
「社会のテストで8点だった俺が口をはさむ問題じゃないな」
「この世界の歴史を教えてもすぐ忘れてしまいそうですね」
「自分のスキルももう半分ぐらい忘れた」