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65話 サカネの旅(後編)

 

 魔王を本当に討伐するために世界中を周ったが手がかりはつかめない。

 女神の神殿では確かに魔王には弱点があると読み解けたのに。

 何度目かの魔王討伐でいくつかの部隊編成に別れた。


 もちろん後方に配属された結果、ノアやウルフとは離れた場所に。

 ティラノも一緒で頼もしい。


「まーティラノがいるならええわ」 

「最近あの子たちのイチャイチャは見てて辛いし、丁度良かったわ」


 さらに後方の一般支援が騒がしかったので確認してみれば、支援者が壊滅していた。


「嘘、やろ!?」


 まだ息がある男が何かを伝えようとしているが、命を助けるのが先だ。


『いせ――の、男―――』

「【スキル:治療 急回復】」


 彼らも魔王を討伐部隊だ。剣や矢などの武器やバリアなどのスキルカード、パンなどの食事や望遠鏡や笛といった小道具を運ぶ部隊。

 決して裕福ではないが魔王を討伐するために力を貸してくれた人々。

 助けるため必死だった。


 治療して助けられたのは何百人と参加してくれたなかの数人だけ。


 ようやくひと段落、そんなタイミングでウルフから最悪の報告。


「ノアが死んだ」


 何が起きたか分からへんかった。

 ウルフはノアの子がいたことに気づかなかった――心臓が動いていたのに、助けられなかったと土下座してきた。


「何で心臓が止まらんへんうちに連れてこんかったんや!!」


 ついつい怒鳴ってしまった、どうにもならないのに。

 傍にいたのにノアに子供ができていたことに気づかなかった。

 ノアのお腹は膨らんでなかったから油断していた。

 彼女は元の小さな身体を変身で大人に見せているだけ、魔物たちが人間に変身しているのと変わらない。たとえ元の姿が何であっても、変身後には影響がない。


「無理して大人になった代償――」


 【スキルカード:変身】の嫌な予感は最初から薄々感じてはいた。

 医者目線からすれば目で診察できないなんて最悪。

 自分の不甲斐なさにレイニーに合わせる顔がなかった。


「もっと医者がおったら――もっと医学が――」

「悔しいなら腕を磨くのもありじゃないかしら、素人意見ってやつだけど」

「そや!! ……そうやな!!」


 事件は幕を閉じた。


 この世界の治療を研究するための施設を作り、部下も沢山できた。

 数百年にわたり病気に対処してきたが施設で大事故が起きた。

 毒ガスが発生して、伝染病を撒いたのだ。


「アカン……どういう理屈か全然わからへん」


 よりによって妊婦だけは助かるという摩訶不思議な伝染病。

 ただし胎の赤ん坊だけは死んでしまう、日本でも似たような症例はあったが世界がちがうと病気も全然ちがう。


「……うちも、ついに」


 病気にかかり、なんとかスキルで治療して生きながらえていた時に旦那と出会った。


「僕はあなただけを生涯愛します、どうか私の子を産んでください」

「なんやねんコイツ」

「もし断られたら世界中を巻き込んで死にます」

「は?」

「何でもするから――生きてください」


 旦那は本当にウチ一筋で浮気どころか毎日のように助けられた。

 日本にいた頃はまー医者の世界、看護師の世界では離婚なんてよくあること。

 ウチには金がなく病気で姿もよくなかった。

 ……旦那の()()で何とか生きながらえてはいたが、辛く複雑な思いは徐々に膨らんでいく。

 治っていく身体、けど心がツラ過ぎて命を終わらせようかと悩む日々。


 でも旦那の驚きの声で終わりを告げた。


「こ、これ――!!」

「どうしたんや?」

「サカネから心音が二つ聞こえる!!」

「嘘やろ!?」


 イチタは産まれたものの、心肺停止状態。

 だけどウチにはまだ生きていることがハッキリ感じられた。

 世界の理として命のエネルギーが0を下回った時にコアが砕けて死ぬ。

 0と1の狭間だった命を【スキル:治療】でなんとか安定させた。


 けどお金がなくなった。旦那は働いてくれているがイチタのミルク代も足りない。


「【スキルカード:フレンド ティラノ】」


 ティラノに連絡してお金を貸してほしいと頭を下げた。



「ほんと、馬鹿ね」

「……すまへん」

「お金で解決できることで本当に良かったわ、いくらでも持っていきなさい」


 大量の札束を渡された。


「へ?」

「サカネの子がお金で助かるならいくらでも出すわ――その程度のことさえできないほど、アタシの親友って言葉は安くないのよ」


 そのままティラノの支援を借りて5男まで無事に産まれてきた。

 けれど異世界転生者の子はスキルをランダムに持つ。

 サンタが家を火事にしてしまい町から遠い場所に引っ越してきた。


 でも、ついに国を出ていくように通知がきた。


「ここでも、無理そうやな――」

「僕がもっとしっかりしてれば!!」

「ウチの旦那は十分やってくれとるよ」


 ティラノが唐突に寄越した連絡、ここまで支援してくれる親友に頼まれた。

 まさかのインフルエンザを治療させられた。

 しかも患者がレイニーとかいうワケ分からへん状況。


「……私はレイニーを殺しました」

「自分、生きとるやんけ」 


 治療してて分かった、彼は本当に()()()()を殺しているだろう。





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