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64話 サカネの旅(前編)

 

 カドマツが異世界転生してくる数百年前。


 ウチの『サカネ』は親からもらった名前そのままだ。

 異世界転生者として治療のスキルを選択したが、異世界の医学は酷かった。

 病院なんてあると言えばあるけど包帯すら高級品。


「アカーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 テレビで見るアカーンの10倍ぐらいで叫んだ。

 国王はウチを奴隷商人(?)に売ろうとしとるし。

 火事のごたごたで国の外へ逃げられが、行くあてがない。

 そんなおりに彼女たちに出会った。


「あれ、旅人さん?」

「せやでー」

「大阪の方言?」


 しもた。異世界転生者だってバレたら、カミノに帰されて売られてまうかもしれへん。


「えーと、東京弁でしょ?」

「東京弁なんて言ってるが、そんなものないし無理しなくていいぞ?」

「……犬やん!?」

「初めてみると驚くよなぁ」

「私たちも異世界転生者だから安心して!」


 唯一まともそうな大人の女性が不機嫌そうにしていた。

 当時はレイニーもノアも子供の姿、シャックも背が小さいから子供や思った。

 まさかシャックが百歳こえとるなんて思わへんかったな。


「あなたのスキルぐらい確認させてちょうだい」

「うちのスキル?【スキル:治療】や――まだ使ったことないねんけど」

「え? じゃあ使ってみせてちょうだい」

「こんな動物実験もしとらん力、使えるわけないやろ」

「じゃあ犬ならいいのね?」


 ポンと肩を叩かれたウルフ、こういう役目はたいていウルフ。


「確かに犬だけどさぁ――!!」

「保護するにしたって連れてくにしたって、スキル見なきゃ決められないわよ」

「それにシャックさんの火傷、少しは良くなるかもしれませんね」

「……見してみ」

「いいけど、どうせなら治療してよね」


 シャックの火傷は『何で歩けるねん入院や!』と叫びたくなるほど酷かった。

 異世界だけあって常識は通用しないのかと思わなくもなかったが顔色も悪い。

 一刻も早くきちんとした処置が必要。


「スキルためしてみるわ、痛んでもちと我慢してな」

「いいよそんなの」

「【スキル:治療】」


 ゲームでいうなら体力が500あって残り20だったのを25にできた。

 連続でできれば良かったが酷く体力を酷く消耗したのだ。

 スキルを使った瞬間10キロぐらい走らされた感覚。


「――すごいな、痛みがかなりひいたよ」

「ちょ、ちょい待ち……もっとやらんと!!」

「きたばかりの異世界転生者がスキルを連発するのは危険よ」


 こうして砂漠の国、ジーンズへとウチは連れてこられた。

 国王様はレイニーたちを大歓迎、以前この近くにいた魔物を討伐してくれた英雄らしい。

 他にも異世界転生者が兵士長を務めていると紹介してくれた。

 ウルフよりも顔立ちが狼みたいなイケメン異世界転生者。


「兵士長のドラレコだ、言っておくが初心者のウチはしごくからな」

「魔物と戦うとか……ウチには無理やで」

「それでもタダメシというわけには――」

「ウチは医者やねん!!」

「医者ぁ!?」


 国王様が慌てた、異世界転生者で医者は初めてのことらしい。

 ウチの治療スキルが見たいと国王様にせがまれたら流石に断れない。

 それにまだ治し切れてない怪我人なら目の前にいた。


「また僕?もっと怪我した人いると思うけど」

「ええからさっさと服ぬいで見せんかい」

「……はいはい」


 火傷を治療すれば、国王様は少し考えた後にスキルカードを作って欲しいと告げた。


 ここまで連れてきてくれたノアたちと別れて、国にとどまることを決意。

 腕に巻く清潔な包帯が8000マル(日当1200マルの時代)、でもスキルカードを使うための石は1個で500マル程度、しかも何度か使える。


 数か月ほどジーンズで過ごして作ったカードだが、必要なのは何もこの国に限った話ではない。カミノからは逃げてきた都合上、戻るのは危険。

 フレンドのスキルカードでノアたちと連絡をとってニカナという国で合流。

 スキルカードの変身を手に入れたノアとレイニーは大人の姿になっていた。


「この国でスキルカードを流通させるために、まずはニカナの偉い人に話がしたいねんけど、知っとる?」


 ノアとレイニーが嫌そうな顔をした。

 予防接種する前の保育園児みたいな、それはもう嫌そう。

 なら1人で行こうかと提案したがレイニーが首を横に10回、もはやバイブレーションのような高速で動かした。


「あの男を……ニカナの国王を舐めてかかってはいけません」

「美味しくないもんね!」

「俺は犬だったから会ったことねーな」

「僕は盗賊だったしニカナには初めてきたよ」

「アタシの時代は異世界転生者を売ってなかったから初見よ」


 ボケ属性おおすぎひん?

 結局のところ、シャック、ノア、ウルフをギルドに残して王宮へ。

 ラブホにしか見えない竜宮城に入ると王様が顔を出した。


「……抱かれにきたの?」

「エロ漫画でしか聞いたことない台詞やんけ!?」

「ま、私がそれで済めばマシですかね」

「あいつゲイなん!?」

「いえ異世界転生者なら手を出してくるので、気を付けて」

「ゆーても国王やろ……もし襲われても玉の輿ちゃう?」

「ノアとホンイツの間にできた子供を、ゴミ捨て場に投げて殺したような王ですが?」


 思ってた100倍クズやん。

 子供にてぇだしたあげくに自分の子を殺害なんて許されてたまるかボケ。

 もしウチが戦闘系のスキルなら死ぬまで殴ってたわ。


「そろそろ、こんなところに訪ねてきたのは何の用か教えてもらえないかな」

「スキルカードの流通に協力してほしいねん」

「変わった申し出だね、理由は?」

「見せたほうが早いわ【スキルカード:治療 カードクリエイト】」

「……そのスキル、ついにきたのか」


 城の地下にある広い空間で人形を倒せば流通に協力する。

 ただし倒せずに1人でも動けなくなればウチをひきわたし。

 ニカナで動くなら国王に許可もなくは難しいとのことでウチは覚悟を決めた。


「ま、アタシがいるから最悪の場合は逃げるわよ」

「絶対に倒します」

「頼もしいわ」


 人形は一体だけでレイニーとティラノがボコボコにした。

 多少レイニーが怪我するようなこともあったが、治療で充分ことたりるかすり傷。

 そしてついに動かなくなった人形。


「僕の負けだ、わかった――スキルカードの流通には手を貸そう」

「行くわよレイニー」

「……はい」


 勝ったのに嬉しそうにはしないレイニー。

 その夜はギルドに宿泊、どうにも気になって眠れずに外へでたらレイニーは泣いていた。

 まるで子供が迷子になった時のような泣き方で。


「わあああッ!!あああッ!!」

「どないしたねん!?」

「強く、なったのに――撫でてくれなかった!!」

「え?」

「あの男に捕まった時に、強くなったら褒めてやるって――なのに……なのに!」

「そんなに褒められたいってもうどっか異常やない?」


 レイニーに気づいてノアが起きてきた。

 唐突に始まるキスシーン。

 何となく二人がそういう関係かもしれへんとは思っとったけど、今?


「レイニーくん、強くなったご褒美は私があげるから泣かないで」

「……はい」


 イチャイチャを見せられるぶんにはええか、何だかスッキリしたわ。


 ティラノを起こさないように出てきたのだが部屋の窓から彼女はこちらを見ていた。

 部屋に戻るとまだティラノは窓の外に目をやっている。


「……ほんと、二人とも子供なんだから」

「まだイチャついとるん?」

「あんなところでバードキスなんかしてないで部屋に連んでヤんなさいよ」

「そうしてくれりゃ諦めがつくゆーわけか」

「気付いてたのね」

「諦めとか応援とかは言わへんけど――自分ら(あなたたち)、男の趣味悪いわ」

「同感よ」



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