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63話 住む地

 

 ついにサカネの家を訪ねる日が来た。

 ティラノさんに頼み【スキル:テレポーター】で飛んできたのだが想像とは違うポツンと一軒家(石造り)が建っていた。

 日本で言えばド田舎で森と畑しか周りに見えないあの光景といえば分かりやすいだろう。


「ここは〈フォレ〉って国やねんけど森と畑ばかりで殺風景やろ?」

「のどかで俺はけっこう気に入りました」


 子供がこちらに走ってきた。まだ幼い様子だがまるでアニメのように走った箇所は土が煙となるほどの電光石火。


「母ちゃんお帰り!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 あまりにも大きな少年の声で思わず耳を塞いだ。

 サカネさんに家の中へと案内され5人兄弟と旦那さんに出会う。

 全員が自己紹介してくれた。


「俺が長男のイチタです」

「ニタ」

「サンタ」

「ヨンタ」

「僕がサカネの旦那でケンタといいます、こっちの赤ちゃんはゴタ」


 一番下は赤ちゃんで可愛いが二本ほどツノが生えている様子。

 長男は背が高く中学生ぐらいの年齢に見える。


「さっそくこの大量に溜まってもーた洗濯物をなんとかしてもらうで」


 効果音はドーンでは足りない、どおおおおおおおん!!!!と表記しなければいけない量の泥と腐ったような匂いがする小さな服たち。


「まかせてください」

「ついてきて正解だったようですね」

「で、この女性は誰やねん?」

「私はカミノ王国の城でメイドをしておりますメレンゲです」

「料理が得意な……人?だから俺だけじゃダメそうなら手伝って貰おうと思って」

「カドマツ様はこの世界の食材や料理法をあまり知りませんので、料理は私が手伝います」


 たくさんの洗濯物を家の外に出した。【スキル:洗濯機】で洗濯機を召喚。

 コンセントではなく〈魔法石〉をはめ込む電池式のような設計でどこでも使えて便利である。

 今まで全てをタライで洗っていたと聞きますますサカネさんを尊敬した。

 畑にピンと張られたロープが5本あって物干しざおとして使っているらしい。


「干したら次は―――」

「芋虫が〈背中〉にいますよ」

「何で分かるねん」

「……ホンジャドウシヨウカイモムシを探せるスキル持ってるので」

「芋虫が畑の野菜を食い荒らして困ってんねん!!」



 異世界まできて虫とりする俺だがサンタくんが肩車してくれというので背負った。

 虫取りなんかしている俺の肩なんかすぐに飽きるかと軽い気持ちで承諾した。


「ハックシュン!!」


 ―――ボワッ(目の前にあった野菜が黒焦げに)


 サンタくんはクリスマスのような寒さを連想させる名前だが火を吐くらしい。

 よくみれば焦げ跡がそこかしこにある。


「火傷したらスキルで治療したるわ」

「町はずれに住んでいる理由がよく分かりました」

「そろそろ昼飯やな」


 家の近くにまるでピクニックのように布が敷かれて美味しそうな料理が並ぶ。

 全員で集合してきちんと手を洗い布の敷き物に座った。


「いただきます」

「メイドいうだけあるわ……でも食材が見たことないもんおおいんやけど」

「カミノ王国の名物です」


 子供たちは肉を美味い美味いと無我夢中で食べている。

 この田舎では肉を調達するのは難しくあまり食べさせてあげられていないとのこと。


「国から補助とかもらえないのですか?」

「それどころか追い出されそうになってるで」

「何で!?」

「……もともとサンタが町で火事を起こしてここに引っ越したねん」


 俺のスキルが誤爆したときに服がはじけとぶ程度で済んで本当に良かった。

 しかしこのまま国を追い出されそうなんて……行く場所あるんだろうか。

 カミノ王国って子育て向くか?


「カミノ王国にはいらっしゃらないのですか?」

「アンタらのところは鎖国しとるやろが」

「法律が変わって今ではジーンズ王国から移り住んだ人々がいますよ」


 子供たちが満腹になり一番下の赤ん坊が泣きだした

 ふとミルクはどうしているのかと聞けばヤギの乳で育てているらしい。

 彼女は〈訳あり〉で母乳では育てられないと言われ何よりまず疑問が浮かんだ。


「え、病気……ってことですよね???」

「詳しい話は今度したるわ」


 そのあとも畑や家事を手伝っていたのだが、イチタくんが二人と二人で話したいと言ってきたので家から少しだけ離れた場所へ。



「俺の母ちゃんに身体のこと聞かないで……」

「ごめんセクハラだった!?」

「本当は俺、長男じゃない」

「え?」


 イチから始まる名前で連続して数字が続くのに?

 レイタくんがいた可能性はあるな。


「上に7人いる」

「ななにん」

「でも生まれる前にみんな……死んじゃったって」

「え」


 ある日、毒にやられて多くの人々が命を落とした。

 その時に産まれるはずだった赤ん坊が次々と死んでしまったらしい。

 ノアとは違い、化学工場の人身事故で。


「俺も――産まれた時は心臓が動いてなかったって」

「よく生きてたな……」

「父ちゃんが、母ちゃんが毒を消せるようになったのは俺が産まれた瞬間からだって」

「え、そこ?」


 毒の種類によっては今までも対処できた。

 だが何でも治療できるようになったのはイチタが産まれてからだそうだ。

 ヤギの乳や赤ん坊に仕える薬は当時かなり値段が高く、長いこと毒を治療していたサカネさんではお金が足りなかったらしい。


「……何でイチタくん生きられたの?」

「お金を全部出してくれたイケメンがいたらしいんだ」

「それはイケメンだな」

「俺は大人になったらそういう男になりたいなって」


 喋り方とか、年のわりにしっかりしてるのはそういう憧れがあったのか。

 物語に影響されて自分もヒーローみたいに誰かを助けたいと願う、みたいな?

 俺も子供の頃に空腹な子にご飯をあげるヒーロー憧れたもんな~。


「名前とか分かる?」

「ティラノさん!!」


 女性であること言うべきか、否か。


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