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60話 想定外

 

 イチドペンギンを倒してシャックの妹エレナを救出した俺たちは、グレイスノウの雪山でマキナと別れ、カミノに帰って来た。


「グラドさんこの方はカドマツ様の従者です」

『ポチと申します』


 ペンギンの名前がポチな理由について聞かれカドマツが名付けたことを伝える。

 従者にしてくれと頼まれたので『ポチ』と命名した。

 犬ではないのに何故と言われれば思いつかなかったとしか言いようがない。『カドマツ』だって思いつかなかったから名乗った名前だ。

 さすがに『イチドペンギン』のままでは人の姿に変身したとしても不自然だし。


「イチドでは駄目だったのでしょうか」


 その手もあったなという顔のカドマツ。

 変えるかとイチドペンギンに確認するが、本人がポチという名前が気に入っていると胸を張ったのでそのままにした。

 イチドという名前は()()に似ているので無意識に避けたが結果、喜んでいるならいいか。

 レイニーは久しぶりに戻ってきたカミノ王国の様子を見て首をかしげる。


「何かおかしいですね」

「……どうにもジーンズから避難してきた人間が帰らずに引き続き生活しているようでして」

「ここが魔物だらけの国だと知らないのでしょうか」


 せっかくカミノ帰ってきたので、ジュースの美味い行きつけの店に。

 もともと活気のある城下町ではあったが、活気のありかたがだいぶ変わったようだった。

 新入荷アップル&パインソーダという、観光地で目にしたらつい飲みたくなるのぼりが立っていて目移りする。

 昔は売る気なんかないレベルで品物がただ置いてあるだけの地味な市場だった。


「レイニーも飲む?」

「では私も彼と同じ物を下さい」


 2人と1匹と何故こうなったという顔をした狼男でカミノ城に向かっててくてく歩く。

 ポチがペンギンのまま姿では目立つので、レイニーがスキルカードを使って人の姿に変えた。

 正体を知らなければシルクハットの紳士にしか見えないだろう。


『カドマツ様、ゴミ箱でございます』

「お、ちょうど欲しかったんだよ」

「これも捨てておいてください」

『カドマツ様のご友人様ももちろんお使いください』


 ポチが気を利かせてくれて、今日の俺は上機嫌だ。いつもはレイニーの部下たちに囲まれているので自分の手下というものに憧れていた。

 それも、四天王という他の魔物とは一線を画す存在に優越感。

 レイニーはポチを警戒しているので、強い部下を得て羨ましいとかそういう感じはあまりなさそうだ。


「しかしゴミ箱など、いったいどこから?」

『私のスキルです』

「さんざん冷蔵庫とか出してたもんな……」


 スキルで家電のほかにもさまざまな物が出せると教わった。

 今はそんなことより、目の前に現れた【新作:さつまいもパイ】の方がカドマツには重要だった。


「いただきますッ……はへほへはーッ!!(やけどしたぁ!!」


 出来立てアツアツだから気を付けてと言われた。

 カドマツは忠告を聞きそびれて一気にかじりついたのだ。

 当然だが大火傷である。いつもの癖でレイニーに助けを求めたが、正論で返されてしまった。


「私の水よりカドマツ様の【スキル:かき氷】で冷したほうがいいですよ」


 ポチが【火傷】に効く薬を出しだしてくれたので飲んだ。

 レイニーは信じないほうが……と顔をしかめていたが火傷が思ったより痛い。

 せっかく敵と仲直りしたというか、初めての部下ができたので友好的な関係を築きたい。


「【スキルカード:治療】」

「薬のんだからもう大丈夫だって」

「信用しすぎているあなたの代わりに私が疑ってあげているだけです」


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