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59話 生き残ったのは

 

 これはエレナが異世界転生してから今に至るまでの話。


『どこに隠れた!?』

『もうじき商人がくるぞ!?』

『逃げ出すなんて、感づかれたのか!?』


 カミノから海外へ売り飛ばされそうになったことに気付いたエレナ。

 走り、ボロ通りと呼ばれる場所へ逃げきったが見つかる可能性が高かった。

 教会を見つけ建物には所々にヒビが入っていてガラスも割れていた。

 そこでボロボロの服にして、髪も汚した。


「どうか、仕事をもらえませんか!?」


 病気にもなっていないし働けるからと懇願。

 シスターに少しのあいだだけという条件付きで教会に引き取られた。

 で、あたしは実際には異世界転生者で大人なので何でも他の子より優秀。


『あら、シャックさん』

「シスター、これあげるよ」

『また食べ物を―――本当に助かります』

「あの子、新入り?」

『とても優秀で文字も読めるいい子なんですよ』

「……ふーん」


 シャックおにぃちゃんは、教会に食べ物をくれるヒーローだった。

 子供たちには大人気でシャックにいちゃん遊んで遊んでと群がっている。

 あたし、子供じゃないんだけど異世界転生者だという彼に見抜かれてしまうだろうか。


「金持ちに邪魔になって捨てられた子――ってところかな」

「……えっと」

「ああ言わなくていいよ、ただ服がいいものだったから」


 鋭い指摘に親から逃げるため、と嘘をついて教会から支給された服に着替えた。

 決して楽ではない生活だったが売り飛ばされるよりは多分、いい生活だと思う。

 身長が伸びなかったが貧困街の子供では珍しいことでもなく、10年たって次の異世界転生者がきてもあたしは同じ姿だった。


「みんな、手を洗おうね」

『『『はーい』』』


 シスターが病気になって代わりにあたしが他の子たちを世話していた。

 相変わらず盗賊の頭であるシャックからの支援を頼りにするしかない。

 手を洗う水でさえも、汚染された少し汚れたものしか手に入らない衛生環境。

 子供たちは病気になり死んだり、薬物に逃げたり、誘拐されたりしていなくなっていく。


「シャックおにぃちゃん、いつもありがとうね」

「……もっとまっとうに稼げれば、良かったのに」


 ぼそりと呟く彼は酷く疲れた様子で、あたしはその日教会に泊まるように助言した。

 せめて今日は息抜きしたらいいよと子供っぽく笑ってみせる。

 頭を撫でられつつ、NOという言葉も話さずおにいちゃんは盗賊団のアジトへ帰ってゆく。


 深夜、大火事が起きた。

 子供たちを逃がそうにも密集した地帯では逃げ場がない。

 泣き叫ぶ声が聞こえる、教会は炎の熱風で音を立てて崩れた。


 あたしは少し気絶したことに気づき、自分を潰していた瓦礫をどかした。

 子供たちは焼け死んでいたり瓦礫に押しつぶされていたりで殲滅だ。

 やがて、おにぃちゃんが巨大な瓦礫に挟まれているのを見つけた。

 それは鉄で出来た巨大な扉。


「【スキル:でんき 電磁石】」


 扉をどかして息がまだあるのを確認したが周辺は酷い有り様。

 痛いと泣き叫ぶ誰かの声を聞きながら、おにいちゃんを抱えて移動した。

 他の子は全員、もう助からないと分かったからせめて彼だけでも、と。


「おいおい、なんだこりゃあ」

「【スキル:水 雨】」

「水が使える魔物さんいたかな!?」

「救助に行ってくるわ!!」


 スキルを使っている異世界転生者の集団を見つけ、すがりついた。

 他にも沢山の救助が必要な者がいるのは分かっている。

 でも、今のあたしにはおにぃちゃんしか残っていないのだ。


「お願い、おにぃちゃんを助けてッ!!」

「生きてる!? う病院まで運んでやるからな!!」


 カミノのはずれにある病院でおにぃちゃんは一命をとりとめた。


「きみ、たちは?」

「最強の異世界転生者パーティーよ」

「はは、冗談かな?」

「【スキル:犬】どんなところに逃げても俺の鼻でおいかけてやる」

「【スキル:水】人間であれば溺死させられます」

「【スキル:テレポーター】10キロぐらいなら一瞬で移動可能よ」

「【スキル:服従】魔物を従えてるよ!」


 本当に最強と言っていいほどのメンバーだった。

 聞けば魔王を封印する旅をしているのだとか。

 魔王さえいなくなれば、魔王に親を殺される子はもう産まれない。


「一緒につれてって……ッおにぃちゃんを!!」

「僕!? 罪人なんだけど――」

「いいでしょ?おにぃちゃん」

「助けてくれたからって信用するな」

「【スキル:でんき ショック】」


 ――ビビビビビビビ!!!!


「あばばばばばばば!?!?!?!?」

「おにぃちゃんはもう自分のために生きて――」

「そいつ気絶してるわよ」


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