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58話 vs.イチドペンギン(決着編)

 

 囚われていた水槽から出てきた人々を皆が介抱している。俺が森の中に送り返してしまったティラノも、レイニーやウルフたちと合流していた。


「おにぃちゃんにまた会えた」


 シャックの腕に大切そうに抱かれた少女はそれだけ言うと眠ってしまった。

 あとの人たちは自分が巻き込まれた事件を思い出すことができたようで、ティラノが【スキル:テレポーター】を使って必死に病人たちをしかるべき場所へと運ぶ。

 問題はレイニーがシャックの妹であるエレナへかけた言葉。

 ホンイツが危惧していた通りのことが起こっていた。

 シャックの腕の中ですうすう眠る幼い女の子を、レイニーは殺すべきだと考えている。

 エレナは『悪夢の水槽』の中でつらい思いをしきたから。きっと彼女のスキルは強大なものになっているだろう。

 だから、死ねるうちに殺してあげようと慈悲をかけようとしているのだ。


「生き返ってきたから助かったとは言えないですよ」

「【スキル:ひきよせ 千倍重力(せんばいじゅうりょく)】」


 レイニーは地面にめり込んだが、シャックの放つ重力でも動きは封じられない。両手のひらをいのるように打ち合わせるレイニー。大技をぶきかますときの構えだ。

 さすがのシャックにも焦りが見える


「【スキル:水 そ――】」


 レイニーがエレナを殺そうとして重い雰囲気の中。


「待った!!」


 カドマツが叫び説得を開始した。



「自分と相手が同じ心を持っていると勝手に勘違いしちゃいけない」


 カドマツはたとえ話を始めた。

 学校の話だ。休み時間に教室で1人本を読むしかない奴と、本を読みたいから勝手に読んでる奴は違う。

 状況は同じように思えても、前者の願いは皆と一緒に遊ぶことなのだとカドマツは解く。

 人と遊ぶのが嫌いな奴だっている。本が大好きで、読書以外に他のことをしたくない奴もいる。

 そして、今のレイニーに最も言ってやらなければならない一言。


「お前はエレナから、殺してくれって頼まれたか?」

「……いいえ」

「『おにいちゃんにまた会えた』しか言わなかった時点でエレナが死にたがってねぇことぐらい分かれガキ」


 異世界転生したときに11歳だったレイニーは、誰にも教えられてこなかったのだろう。

 その事実は当然だがかなり気の毒である。

 カミノにいたのは魔物で、人と関わる生き方を数百年してこなかったレイニー。

 まるで付き物が落ちたような顔で、レイニーはカドマツの袖を掴んだ。


「カミノに帰りましょう」

「解決したから――――え?」


 段ボールに封じて密封したはずのイチドペンギンが柱の陰から出てきた。

 パチパチと拍手をしながら。こちらへ歩み寄ってくる。何故この手(羽?)でパチパチ音が鳴るのか疑問だが、拳銃のトリガーを引いていたくらいだから拍手もできるのかもしれない。


『カドマツ様。とても素晴らしい戦いぶりでしたね』


 皆が警戒するが、彼はもう危害を加えないので話を聞けという。

 そんなの誰が聞くかとウルフが威嚇する。しかしレイニーが冷静にウルフを諫めた。

 相手がわざわざ情報を教えてくれるのならば聞いたほうが良いと。

 さすがのウルフもレイニーにそう言われては大人しくなる。


『私、イチドペンギンは魔王復活のコアを持つ四天王の1人です』


 10年に1度の魔王の復活は()()()が全員倒されてないことが原因だと語る。

 今まで旅をしてきたがそんなものは見つからなかったと『四天王』なる存在について訝しむウルフ。


『最初の試練である私が倒されなければ扉が開きませんから当然ですよ』


 最初の難易度が鬼畜すぎる。

 俺はスキルの相性でどうにか勝てたが、守備・防御力は高そうだった。

 敵が俺を対戦相手に選んでくれなければマキナも勝てたかはかなり怪しい。


『さてカドマツ様、私を倒したあなたに折り入ってお願いがございます』


 イチドペンギンが膝をついて、深々と頭を下げてきた。

 ペンギンの膝という強烈な違和感。これでは正直な話、ここから先なにを言われても頭に入ってくる気がしない。


『私をあなたの部下にしていただけませんか?』



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