57話 vs.イチドペンギン(決戦編)
「【スキルカード:ドール 服従】!」
この探索に出る前に、ホンイツに聞いたスキルカードの正しい使い方。
たとえば乗馬の素人が馬を手に入れたとしても、その馬がが瞬時に素人に懐くようなことはまずありえないだろう。
そもそもドールのスキル人形に#命令をきかせるためのスキル__・__#である。
「トラウマ、俺を乗せて走れ!」
『では頑張って避けるところを見せてください 【カテイハツメイ】』
洗濯機やケータイに冷蔵庫など電化製品が空から降り続く。
馬に乗った経験など観光地でたった1度、両親に無理やり乗せられただけ。
だが俺は迷わずトラウマの手綱をとった。
はるか頭上、避けられなければ明らかに死ぬと分かる高所から容赦なく降り注ぐ家電たち。
「【スキル:ギャクバンジー】」
バネのように空の上まで飛び上ってしまうスキルなのでこれまで使ってこなかったスキルだ。
着地に失敗したら確実に死ぬから。
相手の攻撃が空中から落ちてくる大量の家電の雨ならば、その上にまで高く飛んでしまえば、ひとまずは当たらない。
『【文明の台】』
突如、灰色の地面が出現する。だが、俺は、それが絶対に直で触れてはない鉄の板だと直感した。
俺はこの家電を知っている。本物は人間が乗れるような巨大なものじゃないが、天板の特徴的な模様ですぐに分かった。平坦な見た目。丸い模様。俺は【スキルカード:土】を使って地面を埋め立てる。
土で絶縁した地面にドコドコとキノコを生やして着地の衝撃を軽減した。
『よく今の台が『攻撃』だと分かりましたね』
IHの温度が分かるスキルを持っていなければ、巨大IHクッキングヒーターの天板が恐ろしい高温に熱されていることに気付けなかった。
【スキル:IH IHがどれぐらいの温度か分かる】
スキルブックの2行目に書かれていた時には一生使う気がしなかった。
順番はせめて『あいうえお順』で並べておいて欲しかった。
「IHの温度は分かるからな」
かっこよくない決め台詞を吐き、次に【スキル:じめじめ】を発動した。
キノコがさらにドコドコ生えていく。
【スキル:ドコドコキノコ】
スキル名こそダサいが、無限に生えてくるキノコの毒は本物だ。
アホな敵で食べてくれないかと期待したが、イチドペンギンはマキナを捕らえた『檻』の上から一歩たりとも動こうとしない。
実は鈍足の可能性がありそうだ。あるいは、守備・防御に自信があるか。
『ゴホッ……ん?』
もしもこの戦いが俺と闇使いであるマキナだけの2人だけの話だったならば、絶対に使わない禁断の手。
ここで俺がイチドペンギンを仕留められなければ、この世界が大変なことになるかもしれない。
だが他に方法が思い付かなかった。
俺はシャックとシャックの妹、俺の目の前で銃弾に倒れた男、それから『悪夢の水槽』に囚われている人々をここで救うと決めた。そのためには、どんなスキルだって使う
『ゴホッ、ゲホッ!!』
咳き込むいちどペンギンに向けて、【スキル:かき氷】のスキルを放つ。
さらに空気を閉じ込めるために段ボールで囲んだ。【スキル:割りばし 割りばしを作ることができる】で補強する。
一切様子が見えなくなるが、これが俺にできるトドメの一撃であり、これで仕留められ
なかったらマキナには悪いが俺にはもう無理だろう。
檻に向けて呟いた。
「……絶対使わないと誓ったスキルなのに」
イチドペンギンが踏み台にしていた『檻』が壊れて、降ってくるマキナ。
キノコまみれの地面に着地すると驚いた目をカドマツに向けた。
マキナからみればカドマツは過去を見るスキルを持っただけの、友だちのためなのに一緒に探索に行こうともしない寒がりで弱い役立たずでしかなかった。
「すごいな」
「俺との相性がクソドリと最悪だったから勝てはしたがな」
「大勝利じゃないか、浮かない顔をする意味が分からん」
「あんたインフルエンザって知ってるか?」
「普通に学級閉鎖したことあるぞ」
「その強烈なウイルスをバラまけるクソスキルを使った」
ガラスの割れる音や水が流れる轟音が聞こえてきた。




