49話 嘘はない
「それダウトで」
「アッー!」
「ぎゃっ!?」
買い出しから戻ってきたウルフさんは、部屋に入るなり悲鳴をあげた。
なにせ裸のレイニーが糸でぐるぐる巻き状態で操り人形のように吊るされているのだ。無理も無い。
そんなこの部屋ではニカナ国王であるはずのホンイツまでトランプで一緒に遊んでいる。ウルフさんとホンイツは今日会ったばかりなので、なおさら意味不明だろう。
それはそれとして裸でぐるぐる巻きのレイニーについて説明をしてくれとウルフさんは困り果てた様子で膝をついた。
「糸を出すスキルをコイツが使ってレイニーが動けなくなったから、俺のスキルにあった【糸キリバサミ】で糸を切って」
「そうしたら切れた糸がレイニーに巻き付いてね」
「レイニーが裸なのは一瞬で全裸になる俺の【スキル:はじける服】をなんとかコイツに応用できないかと試したからで」
「見事に服だけ弾け飛んだよ」
このままにしておくわけにもいかないので、糸キリバサミで全部きれないかと聞くウルフさん。
だがなんとこのスキルはハサミが勝手に動き、超が付くほど危ない。
ハサミ型の魔物を召喚するスキルだったのだ。
「この糸は燃えるか?」
「燃やしたことないよ」
「レイニー、もし熱かったらスキルで消せよ」
スキルカードの〈炎〉でレイニーの糸に火がついたが、いつまでも燃え続ける。
レイニーが熱がる様子は少しもない。
しばらくして糸は全部焼き切れたが、操り糸と炎から解放されたレイニーの身体には跡ひとつ残っていなかった
「あっそうだウルフスキルカードくれ」
「何のスキルカードだ?」
「ウルフが女神様から貰ったスキルのスキルカードな」
「構わんが素人は犬の耳と尻尾が生える程度だぞ」
そういうお店でケモ耳尻尾を生やした子とえっちなことに使っていいだろうかと思考を巡らせた。
懸念される副作用や、スキルを使用してからどれほど効果が続くのか聞いてみる。
副作用なら特に無いと言われたのでいつか試してみようと思った。
【スキルカード:犬】、狼男とかだと思っていたがまんま犬。
「ほら、こんなものを何に使うんだ?」
「スキルカードはいくつあっても楽しいので――」
受け取った瞬間に夢にダイブした。
子供の頃は犬に近すぎて、ガゴリグさんに犬だと思われていた可愛いウルフの姿が見られるかと思った。
だが実際はわけが分からないダンジョンの奥深くに足を踏み入れなければいけなくなっていた。
――――――――――――――――――――――――
灰色の、巨大な石の建造物。ダンジョンの入り繰りだろうか。今と見た目があまり変わらない乳のティラノが相変わらず不機嫌そうに口を開いた。
「人が消える村があって、近くにこーんな怪しい場所があって誰も調査しないなんて不自然過ぎよ!」
探索パーティーの戦闘を歩いているのはノアとレイニーのようだ。
「誰も消えた人のことを覚えてないのすごく怖いね」
「お化けではあるまいし、魔物に捧げられたとかそういうオチでしょうけども」
2人ともダンジョンの中を調べようと、辺りをつぶさに観察しているようだった。
だがシャックは、俺が今まで一度も話に聞いたことのない、幼い女の子と2人で談笑している。
「おにぃちゃんも調べるんだからね!」
「面倒だけど妹の頼みじゃしょーがないか」
へー、シャックって妹いたんだ。
――バチン!!
急激に叩き起こされた。
ウルフにビンタされたのだ。
「痛ったぁ!?」
「今のは何だ!?」
「何だって、俺のスキルでカードくれた相手の過去を見るっていうやつだよ」
ウルフなら悲しい過去とかでも犬の姿でプルプルしているとかかと思っていた。
少なくともえっちなシーンではないだろうと。軽率にスキルカードくれと言っても大丈夫な相手だと。
ウルフは慌てているが、別に異世界転生者が謎の解明しにダンジョンに行った一幕だろう。
桃太郎が鬼ヶ島にたどり着いたシーンを映し出したような活躍のほんの一部。
「俺はシャックに妹がいたなんて知らないんだ」
「え?」
明らかに一緒にいたのに?
「頼む、教えてくれ!」
何か大切なことを忘れている気がするんだ。
拳を握るウルフのこんな顔は初めて見た。




