48話 ドール
「色々と聞きたいところだが誰だコイツ」
買い出しから戻って来たウルフさんは、どうやらホンイツを知らない様子。
俺はレイニーに酷いことをして強くしたがレイニーから報復を受けたりなんやかんやあって今は和解(?)しているニカナの国王だとかいつまんで説明しておいた。
頼んだ通り買い集めてきてくれたらしいバーベキューセットや酒、暇つぶしになりそうなものを両手いっぱい受け取る。
トランプや本など、様々なものを追加で注文したらウルフさんは律儀に収集に行ってくれた。
「一回やってみたかったんだよ室内でバーベキュー」
「足枷を外せと言わないの?」
「ちょっと痛いから間にはさむタオルかなんかのほうがほしいかな」
俺は監禁されライフだろうが満喫できる自信がある。
飯は出てくるし遊んでくれる人はいるし仕事はしなくていい。
王様気分で店は向こうから来てもらう。
旅行に行くまえからレイニーには引きこもりニートやめたら死刑って言われていた。
「俺はもともと引きこもりだしクソタノシイ」
「引きこもりだったのか」
「仕事なんかしなくても世話までしてもらえる人生とか最高」
牢屋と違ってベッドはフカフカで飯が美味いのだ。
金持ちの友だちが『もっと俺の家泊っていけよ』状態。
しかも夏休みで用事が特に無いならお礼いって連泊するんじゃないだろうか。
追い出される前に働こうとしていたが、こうなればとことん楽しむほうがいい。
「とりあえず僕はニカナに帰るから」
「悪かったな」
「ここにいてください」
ここにいてくださいBOTもといレイニーの右手には剣があった。
そしてホンイツめがけて振り下ろしたが、ベッドが真っ二つになっただけだった。
壊れちゃったから今夜までに新しいの買ってきなさいと叱ればレイニーはフラフラと外へ。
「わり、お前は巻き込んじまっただけだしスキルで今のうちに逃げろよ」
「僕に瞬間移動はできないよ」
「4代目の転生者のくせに大したことねーなー」
ケツが危ない状態になったところでレイニーがベッドをかついで戻ってきた。
「助けてくれレイニー!」
「自業自得だよ」
「だって俺が今まで見たお前のスキル、人形で遊んでいる程度だぞ⁉」
4代目ということなのでホンイツはレイニーよりもはるか昔からこの世界で魔王と戦ってきた異世界転生者の筈。
そうなれば期待もするし人、形が動くだけかと知ったらガッカリもする。
強い魔物を〈ドール〉にしてみせて『これで分かったよね』と決めポーズして欲しかった。
ベッドを設置したレイニーの手にはノコギリが現れる。
「その手足はいりませんよね」
レイニーの手に握られた大きなノコギリがいったい何を切るためのものなのかを察して俺は青くなった。
「【スキル:ドール 操りの糸】」
レイニーの身体に極細のワイヤーのようなものが巻きついて、絡めとるように動きを封じた。
頭上には糸あやつり人形を操作する十字型のアレが浮いている。
マリオネットみたいに自分では全く動けない様子のレイニー。
「いくらレイニーでもノコギリで手足を切られるのは時間がかかりすぎるからね」
あのレイニーが動けなくなるほどの【スキル:ドール】。
ここでようやく、もしかしてホンイツって強い?と実感し始めた。
手足を切断されたくないのは当然だが、#時間がかかる__・__#という発言が謎だ。
斧のように一瞬で切断できるなら四肢切断自体は別にいいのか。
「このスキルっていつ解けるの?」
「4日もあれば」
「思ったよりも強力なスキル」
このまま逃げ出すかと思ったがホンイツはそのままレイニーが今設置したベッドに座った。
また誘拐されても面倒だからもうここにいることにする、と。
ゴミカスと悪名高い国王に謁見を願い出る物好きもいないので〈ドール〉で動いている限りは国も安泰。
「マジもんのお飾り王じゃん」
「今ならレイニーに邪魔されることもないかな」
「もしかして俺の尻がまだ危なかったりする?」




