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44話 緊急避難

 

 ジーンズ王女様ヨモギ・ティー様とカミノ王国の王子代理(これ未だに謎)ウルフ・シルバーによる交渉の結果、ジーンズに残っていた国民はティラノさんの【テレポーター】で迅速にカミノへと大勢が避難した。

 魔王の予測進路はジーンズ。カミノに向かってくることはなさそうだ。


『現在の王子様がいうならば仕方がありません』

『よそものを入れるなんて』

『何を考えているのやら』


 受け答えがあっさりしている。今思えばところどころ反応が変だったのは人間のフリをしているから。魔物たちが()()()()()()()()()()()()()()を体現しているようだ。実際にこういう場合には鎖国国家が突然の開国したら騒ぎになることは黙っていよう。


『人間ってこういう時いやがる――で、いいんだよな?(小声)』

『こんな事体は訓練にねぇけど合ってる……はず(小声)』

『子供ってはしゃぐの?それとも怖がるの?』


 カミノの住民たちが皆、魔物だと知っている人も中にはいるのかもしれないが。

 魔王討伐隊が終わったらジーンズに帰るであろう多くの人々が一時的に暮らす場所や食べるものを提供する必要があり、民家なども借りて対応していった。


「なあレイニー、魔王討伐作戦ってまだ始められないの?」

「簡単に言えば動き出すまで攻撃が通用しないので」

「こんな簡単なことならさっさと言ってくれりゃよかったのになぁ」

「……」


 なんかレイニーの様子がおかしい気がする。

 顔が1cmの距離に迫っているのはただごとじゃない。

 目が血走っているしお漏らしでもしたレベルでビシャビシャ――。


「これ本当にもらしていたりする?」


 これはパンツを買ってきてやったほうがいいだろうかと悩む。

 黄色くないし別にお漏らしではない……どっちにしろパンツは必要かもしれん。

 そこへ魔王が動き出したと一報が入る。身なりに構っている暇はなさそうだ。

 次の瞬間、俺たちは2人で魔王の前に出現させられた。

 幸い低空だったので落下死はまぬがれたが、200メートルもある巨体に踏みつぶされそうになる。


「わーーーーー!?」


 レイニーに何とかしてくれとしがみ付いた。

 虚ろな目をしていたレイニーは、なぜかこっちを見て笑う。

 異様な雰囲気に俺は息をごくり。だがレイニーは魔王を見据え、そして。


「【スキル:水 涙】」


 バケツをひっくりかえしたような雨――という言葉がある。

 だがそんな言葉では生ぬるい。たとえるなら海をもう1つ天空に創り出したような……いや、俺の頭ではこの凄まじい豪雨を具体的に言い表すことができそうない。

 つらい思いをすればするほど異世界転生者は強くなる。それがこの世界の摂理。

 だからレイニーはこんなにも強い。

 雨粒1つでさえも弾丸のような雨は魔王の外殻を突き破り、体内にあった丸い玉までも貫いて粉々に砕かれた。

 それがコアだと気付いたころには魔王はもう原型すらなくなっていた。



「さすがレイニーだな」

「……いきましょう」

「どこに?」

「城に」

「カミノに帰りたいの?」


 旅行も無理やり付き合わせたようなものだしホームシックの頃合いか。

 兵士やメイドさんたちにお世話されていた王子様が大変な旅だもんな。

 カミノのヒミツも全然思ったより大したことは無かった訳だし。


「ここからなら歩いて――」

「【スキルカード:テレポーター カミノ城】」



 気付いたらレイニーと2人で城の中に帰ってきていた。

 レイニーにテレポーターのスキルカードが使えるなんて聞いていない。ティラノさんには使いこなすのが難しいと言われていたスキルだ。初見で便利そうだと口走って怒られた。

 最初からこのスキルカードで世界を巡れば良かった感。

 道中が楽しかったからいいが、レイニーの顔が近い。


「いや本当にどうした……?」

「カドマツ様は危険をかえりみない」

「最後のは俺のせいじゃなくね!?」

「逃がさない」

「今日はもう疲れたし寝ようぜ、ベッド借りるぞおやすみ」


 朝起きたら足枷がつけられていた件について。


 ティラノさんが部屋にいたので何か知らないかと聞けばレイニーの仕業だと言う。

 昨日魔王が突然動き出し、ティラノさんの討伐部隊がどうにか食い止めようとしたものの攻撃がほとんど通らず、苦肉の策で俺とレイニーを魔王の目の前に瞬間移動させたらしい。


「アタシが唐突にあんな危険な場所にアンタを放り出したからパニックになっちゃったのよ」

「もっと遠くに転送してくれればよかったのでは?」

「レイニーに本気ださせなきゃいけなくて咄嗟にね。でも、失敗だったかも」


 後悔していると言いたげに肩をすくめたティラノさん。

 レイニーが俺をこんな状態にしたことにため息をついていた。


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