40話 知らぬが花
「……大丈夫か?」
18禁の大変な状態から起きたホンイツに、俺はおそるおそる声をかけた。
目を覚ましたホンイツは、痛みはないし、記憶にも変なところはない。受け答えもはっきりしている。
自分はニカナ国王であることと、今までの最悪な出来事も覚えていると話した。
「一件落着だな。シャックさん酒が美味い店教えてくれ」
「今日会ったばかりなのに馴れ馴れしいな君」
「できれば美人のお姉さんがいるところがいいんだけど」
俺たちを一瞥し、ソファーから気だるげに立ち上がるホンイツ。
「僕がお店紹介してあげるから城から出てってくれるかな?」
「あ、私たち今晩も城に泊まりますから」
「君本当に好き放題するね」
「シャックさんもいるので3人分の食事でお願いします」
確かに2人は久しぶりに会ったのだし、積もる話は城の中でしたほうがいいかもしれない。
何百年ぶりの再会らしいし、シャックさんが魔王討伐参加をやめたのが経済的な理由なら聞きたい事は山ほどある。
王子様であるレイニーが居酒屋に現れたら、もしかしたら騒ぎになるかもしれないし。
街歩きと飲み屋じゃ、出会う人も違う。
「ごちになりまーす」
ホンイツは頭を抱えていたが、レイニーが元に戻った今の俺には怖いものなど無い。
というか元からこの人になら身を任せてもいいやと思っていた。
本来は優しい人だからこそ、毒を受け入れて死にたがっていたのかもしれない。レイニーに殺されるなら本望でも、レイニーを人殺しにはしたくなかったんだろう。
ドールたちにお酒や食事を用意してもらう。
国王の寝室に。嫌がらせのつもりらしい。
「僕の部屋で食べられる物ならどうぞ」
「うわー改めてみるとベッドフカフカじゃん」
「お酒美味しいですよ」
「君ら、相手はここニカナの国王だってのに本当に好き放題やるね……」
「レイニーだってカミノの王子様じゃん?」
俺からすればどっちも王族だろ言うと、シャックさんから露骨に視線をそらすレイニー。
カミノ王国の話題はNGだっただろうか?
お世話になった人たちが大勢いる国ってだけなのだが。
「いくらホンイツさんがゴミカスでも、さすがにあんな偽りの王子と一緒にするなよ」
「え?僕はカミノでレイニー君が異世界転生者を世話しているって噂しか知らないな」
「長いこと離れているとなれば、カミノも少し心配だな……」
確かにずっと引きこもっていたレイニーが急に国を離れたわけだしなぁ。
「じゃあ一回戻ってウルフさんに様子聞くか」
「いいのですか?」
「シャックさんもホンイツさんと知り合いだったりする?」
「僕はニカナの王宮街に入ったことすら今日が初めてだけど」
「金用意してもらえよ、魔王の討伐に有用な戦力なんだから必要経費だろ」
俺がそう言うと、少し考えたあとでああという納得した表情になるホンイツ。
「何者かと思っていたけど君ゴルダ盗賊団の#頭__かしら__#か」
「今はハンターギルドでしがないハンターをしているけどね」
ちらりとこっちを見るシャックさんに醤油を手渡した。
お刺身があるのにさっきから手をつけてないと思ったら、俺のところに醤油があったのだ。
ごめんごめんと謝りつつ醤油はちゃんと渡したのだがシャックさんはまだ不満そう。
確かにせっかくのお刺身なのにワサビが見当たらない。
「ワサビないの?」
「君の前にいるの国王なんだけど」
「国王にワサビないか聞いちゃいけない法律でもあんの?」
「作ろうかな」
「こいつら国から連れ出してあげるからグレンディアベアの討伐作戦に僕を推薦してよ」
「レイニーくんも連れて行くならいいよ」
「もちろん手伝ってくれるよね」
「役に立たない俺も行っていいなら大丈夫」
ニカナは海に面しているだけあって海産物も新鮮で美味いようだ。酒も国王が飲むようなものはさすがに美味い。
「僕が盗賊だったと聞いてもビビらないんだね君」
「そうは言われても、俺その盗賊団のことはは知らねぇし国王が恐ろしいとか言われてもお人形遊びが趣味のロリショタコンの変態にビビれって言われても」
シャックが目覚めると、レイニーがホンイツの手をとって自分の頭に乗せているのが見えた。
無理やり飲まされた酒に潰され動けない様子のホンイツ。
やけに身体が重いと思えば、カドマツに枕にされていた。
「どうして『良くやった』と褒めてくれなかったのですか……」
お酒が好きではないはずのレイニーが珍しく飲んでいたのは、カドマツが美味しいと勧めたからだろう。美味い物を腹いっぱい食べること、そして美味しいと笑いあえる友だちがいること。その尊さを、シャックはよく知っている。
「枕ぐらいは許してやるか」
「おぇ」
「ちょっ!?」




