31話 レイニーの旅
「レイニーがいてくれなきゃ、今頃大変なことになってたぜ!」
大怪我を4人もしたばかりで、まったく能天気な人だ。
死亡者もいないし、治療もあらかた済んだので3人で食事をとる運びになった。
本来はこの船では旅人には質素な食事しか提供しないらしいが、今日はクラーケンを退治したお礼ということで魚料理を振舞ってくれた。
そして驚いたことにクラーケンは食べない。強い魔物は基本的に硬く食べられる部分はかなり限られていて調理できるシェフも少ないのだそう。
噛み切れないのではなく一般的な包丁で切ろうとしても包丁が折れるらしい。
ちょっと残念だ。イカ食べたかった。
「相変わらずお元気そうですね」
「レイニーが動き出すなんて思わなかったが、何があったんだ?」
「私はただ友達のボディーガードをしているだけです」
友達だと明言され嬉しくなり、俺の友達は凄いだろうとドヤ顔する。
ガゴリグさんから聞いた昔話によると、もともとはレイニーのほうがガゴリグさんより弱かったらしい。……レイニーにも弱かった頃があったのか。
さっき俺達が戦ったクラーケンという海の魔物はガゴリグが使うスキルとは相性が悪く、打撃攻撃が効きにくい。
対抗するには刀や炎が有効なのだが、刀も炎もガゴリグさんとは相性が悪い。レイニーが水のスキルで迅速にクラーケンを捕獲してくれて本当に助かったとのこと。
「剣とか俺が使うと折っちまうんだよな」
「相変わらず力だけは強いのですね」
「確かにお前が顔を見せるわけにゃいかんよな。本当に何があったんだ?」
レイニーは国で〈待っていた人物〉がこの俺・カドマツであり、ノアの遺言通りに願いを聞き届ける役目を果たしているとひとつひとつ丁寧に説明していった。
そして今はウルフに国を任せてきた――と告げる。
「ウルフなぁ、拾った時はまだほんの子犬だったのに、すっかり大きくなりやがって」
「え?」
「昔はうちの船員だったんだよウルフは」
なんとガゴリグさんはウルフさんの育ての親らしく、しかも拾ったばかりの時は人間だと思わなかったらしい。
子犬を拾って育てていたらある日突然喋り出して、異世界転生者だと初めて気付いたのだと普通もっと早く気付きそうなエピソードを明かしてくれた。
「ドッグフードあげていたんですか?」
「いや工場で作ってるような犬専用の餌はこっちの世界にはないぞ、俺の飯を分けていたな」
「ウルフさんが船を離れた時、寂しかったですよね」
「死んだと思ったよ。レイニーごと津波にさらわれたからな」
水のスキル使うのにレイニーが波にさらわれるのが不思議だ。
カミノ王国の王子様であるレイニーが何故この船に乗っていたのかは知らないが、確かに元海賊だなんて経歴はちょっと人に言いづらいかもしれない。隠したい過去を暴き立てるのも……やめたほうがいいだろう。
友達だからって何でもかんでも聞いていいわけじゃないよな。
「俺はお前がにどんな悪いことしていた過去があっても気にしないが、海賊帽はクッソ似合わなそうだと思う」
「どうしてカドマツ様はいつもあらぬ方向に誤解するのです?」
「昔は海賊やってたんじゃなかったのか?」
海賊は一度もなっていないが、雑用係としてガゴリグの船に乗っていたらしい。
幼い子供だったレイニーには仕事が選べず、荷物を運んだり網を引き揚げたりすることすらろくにこなせなかったが、それでも船員として船に置いてくれていたガゴリグさんに感謝していると。
「3人とも可愛がってやったぞ」
「ウルフさんとレイニーで2人ではなく?」
「もう1人嬢ちゃんがいてなぁ」
「私はノアと共にこの船に乗っていました」
レイニーが何故ガゴリグと知り合いなのか、どういう経緯でガゴリグの船に乗ることになったのか、かいつまんで話してくれた。
ノアとレイニーは次に俺たちが向かう国・ニカナで出会った。
いろいろあって2人で隣の国へ逃げようとしていたのだが、子供だった2人ではろくな働き口もなく途方にくれていた。
そんなときガゴリグが船員を募っていたので、何でもするから乗せてほしいと必死に頭を下げた。あのとき船に乗せてもらえていなかったら、あのままノアと2人でのたれ死んでいたかもしれない。
「お前ら何でニカナに行くんだ?」
「船で旅行するなら近いのがニカナだとレイニーが」
「……何も教えてないだろお前」
「聞かれていませんから」




