28話 胸を借りる
2週間もジーンズ王国に滞在すれば、気になるところはおおよそ見て回れた。
「さすがに路銀稼がないとな」
「もう正体バラしちゃったので討伐ランクSでも受けて大丈夫ですよ」
などと話していたら、耳ざといドラレコが聞きつけ、1枚の紙を差し出してきた。
討伐ランクSSと書かれている。Sランクよりもさらにもう1つ上のヤバい任務。
達成できたらかなりの報酬が出るらしい。
「お前なら余裕だろ?」
「面倒ですね」
「他の奴にはお前がカミノから出てきたってことを黙っといてやるから、やれ」
「なら彼を置いていきますから、護衛おねがいします」
「いいのかよ俺に任せて」
「……カドマツ様が死ななければどうとでもできますから」
砂漠にとんでもないのが出現したらしく、討伐ランクSSの依頼ということで戦力にならない俺は留守番である。
いってらーと手をふってレイニーの姿が見えなくなるとドラレコにこれからどうしたいか聞かれた。
レイニーと一緒だと周りづらい夜のお店について聞くが、知らないと言われてしまった。
「なら他に知ってそうな人――」
「お前、本当に逃げなくていいのか?」
「えっと逆に俺がレイニーに何をされると思っているのか聞いても?」
生贄にでもされるというならここまで心配されるのも多少は分かる。
この国にきてから分かったのだが、カミノには妙にモノがなかった。
もちろん食べ物や服は売っていたし、一応は宿屋もあったのだが教会もなければ学校もなかったことを思い出した。
身寄りのない子供たちが暮らす施設どころか、親のいない子供にも会わなかった。
「監禁されるかもしれんぞ」
「またカミノで一緒に暮らそうってことですよね?」
「カミノの異常さには気づかなかったのか」
「いや、まぁいろいろと不思議な国ではありましたけど俺は特別待遇でしたし変なのに襲われそうになってレイニーたちに助けてもらったりしましたからね」
ハクア・ハートの名前を出すと頭を抱えるドラレコさん。
どうやらハクアはレイニーよりも頭の痛い問題らしい。異世界転生者にはスキルを見せろと言っていろいろと仕掛けてくるので、大勢が被害を受けているらしい。
そういう話は別にレイニーとでもできるので、ジーンズ王国で女の子と遊べる店が違法ではないのであれば行きたいとドラレコさんに頼んだ。
そしてドラレコさんの部下が知っていたお店へと案内された。
『ちょっと値段がしますけど……』
路銀は稼ぐことにしたがレイニーは金に困っていなかったようで小遣いはかなりの額を渡されていた。そのため遊ぶ金はあった。
値段がするとは聞いていたが2万マルで、そこまでではない。
俺が指名させてもらった女の子は可愛かったが口元を隠す衣装で少し顔が見づらいので10点満点のレビューを書くなら8点ぐらい。絶対に衣装は外してはもらえないらしいが別に布は薄く、肌が透けて見えていたところも踏まえての点数である。
おかげでレイニーが戻ってくるまでの間にスッキリしておくことができた。
しかし、ギルドの宿泊部屋に帰ってくると討伐ランクSSの任務に向かったはずのレイニーが先にいた。
「レイニー早かったな」
「部屋にいなかったので驚きましたよ」
「ちょっと店を探すのに時間がかかって……」
決して俺の行為が遅すぎたわけではない。
「どういうお店に?」
「風俗だけど、これ名刺もらっ――」
足元に何かが落ちてるのが見えた。踏んで、つまずいて、転んで、相手が女性だったらラッキースケベ……ではなく大事故。
男のおっぱいでも柔らかいな、なんて感想と同時に気付いた。
レイニーの心臓がかなり大きく鳴っているし。鼓動も早い。
「ごめん、おっぱい揉んだ」
「……いつまで男の胸を揉んでいるのです?」
「こんなに驚くと思わなかったわ心音すげぇ」
本当にびっくりするほど早い……いや、びっくりしたから早いのか?
「なら聞きますけど、目の前で唐突に転んだ人間に胸をわし掴みにされても驚かないんですか?」
「悲鳴あげるかもしれない」
俺が転んだ何かの正体を見れば、ガラスの玉みたいな何かだった。宝石っぽい。
レイニーが言うには、今回の任務で倒した敵は綺麗な宝石で人々を魅惑して誘い込み、地下深くの砂に生き埋めにしてくる恐ろしい奴だったらしい。
「手土産です」
「床に置いたお前も悪いわ」




