27話 ウルフの苦悩
これはまだノアが生きていたころ、ウルフのお話。
同時にレイニーが王子では無い時代でもある。
辛い出来事もあったが今よりはずいぶん楽しい日々だった。
俺はあいつらとの冒険を選んだことだけは後悔しない。
これは、そんな中で〈ドリ王国〉という国に位置する森での出来事。
俺は落とし穴に落ちてすんでの所で串刺しになるのを免れた。
レイニーは俺が落ちたあとにいつもの調子で話してくる。
「ウルフさんなら、まぁ、大丈夫だろうと思いました」
「……罠があるって分かっていたなら言えやクソガキ!」
何度倒しても10年の周期で復活しつづける魔王をどうにかするために何か手がかりはないかと遺跡などを仲間たちめぐっていた。
この時の探索メンバーは俺、レイニー、ノア、シャック、ティラノの5人。
魔物と出くわしてもノアの【スキル:服従】がどんな相手も効いたので、魔王を除いて向かうところ敵なしの最強パーティーは世界中で噂になるほどだった。
「君の目が悪すぎなんじゃなーい?」
「シャックお前あとで覚えとけよ!?」
この小柄な男はシャック。元盗賊の実力者だ。
魔王討伐に手を貸す代わりに減刑を迫ったずる賢い奴。
それだけ聞くと悪い奴のようだが、実は身寄りのない子供たちを匿っている教会に食料を届けるために盗みを繰り返していたことが分かり、ノアが彼をパーティーに引き入れたいと交渉したのだ。
「森でお化けが出たなんて与太話をよくあのドリ王国のグレイト王子がまともに聞いたわね」
「その話ですが出所がグレイト王子からすれば遠縁の親戚だったらしくて一応念のために私たちを寄越したわけです」
落とし穴なんかでお化けを捕まえられるか疑問だったが。魔物用の罠だったのだろうか。
にしては小さい……というか、次の道にもまた罠があって、今度はヤリの雨が降ってきた。
皆は夜目が効くのか、俺だけが運が悪いのか、俺ばかり次々と危ない目に遭う。
「なんで毒ガスなんかこんな所にあるんだよ!?」
「【スキル:水 空気浄化】」
「お化けに効かないだろ毒ガス」
さっきから変な匂いがしていて鼻が効かない。
浄化用のアロマを焚いたと言っていたが、強烈すぎる。
俺は主に嗅覚で罠などを感知しているので勘弁してほしい……。
「あのーさっきから思っていたのですが」
「何?」
「そういえばグレイト王子から話をちゃんと聞いていた時にウルフさんが――」
パン。
頭めがけて飛んできた銃撃を俺がギリギリでかわしている隙に、他のメンバーが人間を数名捕らえていた。
なにやら話が違うなどとギャーギャーわめいている。
「アンタ達がお化けのフリした強盗団ね?」
「全くスマートじゃないよねぇ」
「お金目的だとしてもやり方が酷すぎるもん」
ティラノ、シャック、ノアの3人の言葉を聞いてレイニーを見た。
どうやら俺だけ少し離れた時に『弱い冒険者のフリでもして逆に捕まえてほしい』と頼まれていたらしく、罠が仕掛けられていることも皆は最初から分かっていたらしい。
「アンタ伝えておくって言ってなかったっけ?」
「すっかり忘れていました」
「これで何度目だこの野郎……!」
懐かしい過去の思い出を夢に見ていた王子代理のウルフだったが、ふと目が覚めた。
レイニーと違い城へ引きこももらずに城下町へ出てきてうたた寝していたら何かが飛んできたのが分かったからだ。
上空から砲撃されることなど予想していなかった。砲弾は謎のカーブを描き、そしてよけきれなかったウルフの腹に思いきり叩きつけられた。
「ぐお!?」
空からの砲撃は思ったよりも柔らかくて、何かと確認してみれば布の包み。
小包からはあきらかに見知った匂いがしたので、包装紙を剥がしてみるとパンクな棘まみれの衣服と、手紙らしきメモが1枚。
『ウルフさんに着てほしくて買っちゃいました。』
カドマツの字で間違いなかったので仕方なく着ることにしたが、王子様という立場とはかけ離れた格好。
「誰も俺の服なんか見ないからいいか」
誰も見てはいないがウルフの尻尾はブンブンと激しく揺れていた。




