22話 ジーンズ
朝起きて着替える、レイニーは不審者にしか見えないローブを着ていた。
確かにあんな貴族の服装だと旅には向かないとは思うがちょっと暑そう。
カミノ王国は土で出来たビルのように高い壁に囲まれていて外部から侵入するのが難しいと説明されていた理由はこういうことなのかと理解した。
そして、カミノ王国を出ると、国境地帯は枯木ばかりの荒地だった。さいわい道はあったので進むことにし、適当な場所で野宿を一泊。さら進んで行くとに、景色は徐々に砂漠へと変わる。
「次の国までもう少し?」
「思ったより体力があるようで驚きました」
「あれだけ城の周りを兵士たちと走っていればば体力ぐらいつくだろ」
数日間の道中で出くわした強そうな魔物をすべてレイニーが瞬殺し、やがて城壁が見えてきた。
隣の国の王子様が突然訪問してきたら門番は身構えてしまうし騒ぎになる。
そういや政治のことはわからないけど外交とか大丈夫なんだろうか。
二人で門番に旅行者であると伝えるが、やっぱりフードを取れと言われた。
「取りましたよ」
『あー、すまん。行っていいぞ』
レイニーは【スキルカード:変装】で少しの間だけ顔を変え、火傷しているように見せた。
普通の顔ではフードを取ってから入れと言われそうだかららしい。確かに。
門をくぐれば商店が立ち並ぶ賑やかな街並みが広がっていた。アラビアンナイトに出てくるターバンを頭に巻いた人々がいるので、砂漠系の王国なんだろう。あちらこちらに砂山ができているのが見える。
「ここがジーンズ王国です」
「見たことない装飾品に知らない食べ物もある!」
「そんなにはしゃぐとカモられますよ」
変わった模様の果物を見ていると兵士(鎧を着ている)らしき複数の人物が寄ってきた。
その中で鎧が他とは違い軽装で狼のような顔が見えている人物に声をかけられた。
彼は警備兵のリーダーであり、俺がただの観光客に見えなかったので気に成ったらしい。入国して早々、兵士に取り囲まれるとか怖い。
何か武器の密輸を企んでいないだろうな――なんて脅されたらどうしよう。
聞かれたのはボディーガードがついているということは要人なのか、もしかして王族・貴族のたぐいなのかということ。ちょっと安心。
「出身国は?」
「生まれ? 日本ですけど」
来たのはカミノだが、赤ちゃんとしてカミノ生まれたわけでもない。
出身国を聞かれれば日本で合っているはず。
「カミノから逃げてきた転生者か!」
「旅行しているだけなのですが」
「大丈夫だって。俺も異世界転生の仲間で、名前はドラレコ」
「俺はカドマツです」
「そっちのボディーガードは名前なんていうの?」
「……私のことはボディーガードさんで大丈夫です」
ジーンズ王国は治安が悪いらしく、名のあるボディーガードでなければ役に立たないとドラレコは食い下がったが、レイニーもといボディーガードさんは魔物だって瞬殺できるので平気ですとはねつけた。
実際レイニーの腕は確かなので嘘は言っていない。
ドラレコは少し考えた後、ギルドに案内しようかと提案した。
「助かります」
「魔物討伐向けのスキルが使えるのか?」
「俺は使えませんが、彼はスキルカードなんでも使いこなしますよ」
「なんでもか、すごい奴もいるもんだな」
こうしてギルドへ連れてきてもらい、さっそく掲示板を確認。
ドラレコさんによると、ここでは討伐ランクEが最も簡単な任務なんだそうだ。そこからE、D、C、B、A、Sランクと難しくなっていきSともなればほとんどの者が手をつけられない難易度らしい。
「俺ってここの世界の常識がまだ理解できてないのでお聞きしたいのですが」
「おう、何でも聞いてくれていいぞ」
「宿屋に一泊するのに必要なお金はどのランク1個分ですか?」
まず宿代を目安に考えようとしたのだが、異世界転生者はギルドに泊まらせてもらえることが分かった。宿の心配がいらないとは実にありがたい話だ。
「そっちのボディーガードも泊まれるように手配しといてやるよ」
ジーンズ王国到着初日。久しぶりにベッドで眠れそうだ。




