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13話 ハクア(前編)

 

 包帯が取れた。そして、これは結果論だがメイドさんのお世話にならなくて良かった。

 トイレの世話とか恥ずかしいし、王子様にやらせることではないにせよ、女性にやらせるわけにもいかないもので……。下手にワガママ言わなくて助かった。

 城から窓の外を見れば何やら騒がしい。


「あれ?」

「まだ包帯がとれたばかりなんですから安静に」

「ウルフさん大慌てでこっちに向かってきてる」

「はい?」

「おおーい、ウルフさーん!」


 窓から手を振った。

 先輩である異世界転生者に元気になったと伝えようとしただけだが。

 車が追い抜けそうなスピードで窓から突っ込んできた。

 壁に激突させられたが、今度は水の膜で弾かれ助かった。


「【スキル:水 水壁】」


 カッコイイ。さすがはかつての魔王を倒した異世界転生者。

 しかし今は俺のことよりも怪我人すら出しそうな勢いで突っ込んできたウルフさんだ。

 速度オーバーするほどの猛スピードで訪ねてきたら当然だが何事かと思う。


「ハクアが国に入ってきたッッッ!!」

「何ですって!?」


 誰やねん。

 いや、スキル名かもしれないし魔物とか麻薬とかの名称かもしれない。

 思い込みはよくない、まずは話を聞かないと。


「ハクアって……」

「申し訳ありませんが説明をしている暇はありませんね」

「大至急兵士を集めてくれ」

「カドマツ様はここを動かないでください」


 気になる状態で置いて行かれた。

 せめて人物名かどうかくらい教えてから言ってほしかった。

 怪しい奴とか警戒必要になった。

 こんなドタバタな状態で訪るのは怪しい奴でしかない。

 メイドさんが食事を部屋に運んできた。


「お前、誰だ!?」

「食事をお持ちしただけですよ」


 ますます怪しい。


「マジでどちら様ですか?」


 今の今までメイドの姿だった男は顔を覆っていた変装用マスクをベリッと剥がし、こちらに近づいてきた。

 身長が急激に伸びてアニメのようだ。

 これがゲームなら登場シーンの1枚絵があるだろう。


「何故、僕様が怪しいと気付いたのかな?」

「メイドが料理を持ってくるわけがない」

「王子に頼まれたのかもしれないよ?」

「そんなの――俺の包帯が取れたお祝いとしてさっき皆で喰ったばっかりだからだが!?」


 ~30分前~


「盛大なご馳走」

『今日で包帯が取れるので快気祝いです』

「何かお役に立てることがあれば何なりと言ってください」

『もう動けるのですからあとで片付け手伝ってもらいますからね』


 回想終了。俺は皿洗いまでしてきたし、その場にメイドは全員そろっていた。

 俺が飯をに食事を運んでくるということは、俺がさっきたらふく飯を喰った事を知らない誰かしかあり得ない。だからすぐ気付いた。

 もしかしたら俺には推理系の才能があるかもしれない。


「だが気付いたところでもう遅い!」

「何で?」

「部屋には〈スキルカード〉で防音の結界を張らせてもらった」


 こんなことになるなら犯人を看破せずに速攻で逃げ出していれば良かった。後悔しても遅いが。

 でも金目当てならワンチャンある。

 わざわざ変装してもぐりこんできたわけだし、宝物庫の場所を聞き出そうとしているかもしれない。


「お金が目的なら宝物庫は東側の3階に」

「それはいいことを聞いた」

「どうも」

「君のお名前は?」


 まずい。何とか時間を稼いで、誰かにこの不審者のことを知らせないといけない。

 レイニーやウルフさんはともかく本物のメイドたちが逃げ遅れて死ぬようなことがあったら俺は一生今日という悪夢にうなされ続けるだろう。


「……まず自分から名乗れよ」

「僕様の名前はハクア・ハート」


 人物名で正解だったらしい。


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