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魔法騎士団、激震が走る 1 (ラルフside)

本日、更新の一話目です。

よろしくお願いいたします。

「はぁ……、書類作業ばかりで、嫌になるな」


 第三王子であり、第一魔法騎士団長のレオポルト=フォン=ヴァルデックは、愚痴っていた。


「口ばかり動かしていないで、頭と手を働かせてください」


 副騎士団長のラルフは、レオポルトの愚痴を一刀両断した。


「そういえば、今日は手紙をもう送ったのか?」


 レオポルトは、注意されても話すのを止めなかった。


「まだです。昼休みに花屋に行く予定ですので、その時に送ります」

「続くね。そのうち、花、ネタ切れするんじゃないか?」

「団長が思うより、花の種類は多いですよ。野草とか栽培されている花以外も合わせたら、すぐ尽きることはありません」


「あー、彼女、雑草も美しいと愛でる、奇特な人だったものね」

「奇特とは言っていません。雑草を見事に生けて、個性的だとは申し上げましたが……。それに、雑草と言って怒られました。人と植物は同じ生を受けて存在しているから、区別するなと」


「ラフィに、そこまで自分の意見をはっきり言って、納得させる力のある女性は、珍しいな。とても、興味がある」


 レオポルトは、ラルフとは同い年で、王立魔法学園で同級生だったので、ラフィとラルフのことを愛称で呼ぶ。


「殿下、余計なちょっかいは出さないで下さい」


 王族の一人なのに、『団長』の時の彼は、くだけ過ぎている。ラルフは、嫌味を込めて殿下呼びをあえてした。


「会って、話すくらいは良いのでは?」


 ラルフの嫌味をものともせず、いけしゃあしゃあと、レオポルトは言う。


「殿下の行動は話すだけでも、他の者とは違った意味に取られる立場の御方であるのは、お分かりですよね?」

「全く……、冗談も気軽に言えないとは、窮屈なものだな」


 レオポルトが、諦観の顔をして、遠くを見るふりをした。



 コンコン。



 執務室のドアがノックされ、一気に空気が張り詰めた。


「今日、届いた手紙を、お持ちしました」


 扉の外で、聞き覚えのある隊員の声がした。

 ラルフが立ち上がり、扉を開けた。

 平隊員のマルコが、大小大きさの異なる手紙を胸に抱え、敬礼をして立っていた。


「ご苦労」


 ラルフが言うと、マルコから持ってきた手紙の一部を受け取った。

 そして、残りの数通の手紙をラルフに見せた。


「こちらは、ラルフ様に個人的に届いたものですが、いつもの処理でいいですか?」


 マルコが別にしていた手紙は、どこか華やかな雰囲気がする封筒ばかりだ。いつもの処理とは、粉砕処理の上、ゴミ箱行きにすることだ。要するに、読まずに処分しておくという処理のことだ。


 ラルフは、まだ婚約者がいないため、アプローチしたい令嬢からの手紙が絶えない。ピンク色やら花柄など、騎士団あてに似合わない封筒が使われているので、一目でわかるのだ。

 顔も良く知らない令嬢の手紙など、開封する気にもならない。


「構わない。一応、名前だけ確認する」


 ラルフは、マルコから受け取り、差出人だけ目を通していく。

 以前、手紙を読まずに処分していると知った令嬢が、嫌がらせを仕掛けてきたことがあったので、差出人の名前は必ず確認することにしている。

 事前に、犯人になりうる彼女たちの名前を、最低限の情報として把握していくことは、必要なことだ。


 その中に一通、水色の封筒に目が留まる。


「副長? いかがされましたか?」


 マルコが不思議そうな顔で、声をかけてきた。

 ラルフは、水色の手紙以外を、マルコに返した。


「それらは、いつもの処理で」

「そちらの手紙は、お受け取りになられるのですか?」


 マルコは、ラルフが個人宛で、明らかに令嬢が差出人である手紙を、受け取るのを初めて見た。なので、何気なく訊いてしまったのだ。


 訊いた瞬間、ラルフから殺気を帯びた冷たい空気が漂ってきた。

 豹変した上官の厳しい顔に、マルコは自分が失言したことに気づいた。


「マルコ、お前はこの手紙の差し出し人の名は見たか?」


 ラルフの尋問のような攻める気迫に、マルコは震えあがった。

 まるで、咎人に罪を自白させる尋問をされているかのような、威圧感があった。


「はいっ、届いた手紙は、すべて魔法トラップの有無をスキャンしますから、確認はしています」

「この水色の差出人の手紙は、今後、届けてくれて問題ない」


「はぇぇぇっ!?」

「――――名は、覚えているよな」


「はっ、はい、確か、エリーゼ――」

「覚えているのならいい」


 マルコがシュピーゲルと続けようとして、間髪入れずラルフに言葉を遮られた。


「マルコ、今後、決してその名は、口にするな。お前が、責任を持って、この差出人の手紙は私の元へ確実に届けるようにしてくれ。他の者に、処理させるな」


 最重要案件のように、秘密を守れという。

 エリーゼ=シュピーゲルとは、諜報員の偽名なのかと、マルコは考えを巡らす。確かに、他の令嬢とは派手さがない、地味な封筒を使っている。


「間違って処理したら、お前を処分してやる。細心の注意を払って、努めろ」

「ひっ……!!」

「分かったか?」

「はっ、はひっぃ! かかか、かしこまりましたぁっっ!!」


 ガバリと頭を下げ、マルコは足早に去って行った。



生贄マルコ、真面目で可愛い奴です。


ブックマーク登録、評価等いただき誠にありがとうございます。

テンション爆上がりします。

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