保護魔法、施されました
今日、更新の一話目になります。
よろしくお願いいたします。
ラルフ様が結界を解き、応接室から出ようとしていた時、お母様が待ち構えていたのか、エリーゼ達の元へやってきた。
如何にも文句を言ってやろうという顔をしているお母様は、懲りない人だ。
「アーレンベルク様、もうお帰りですの?」
「はい、長居はエリーゼの体調に差し障りますから……」
「まぁ、お気遣いありがとうございます」
「また、伺います」
「御機嫌よう、アーレンベルク様」
ラルフ様が、次回の来訪を告げても、お母様は完全にスルーし別れのあいさつで締めた。にっこり笑っていても、もう来るなオーラがみなぎっているのが分かる。
「あぁ、帰る前に。シュピーゲル夫人にご相談がありまして」
「私に?」
「はい、先程、応接室を盗み聞いていた輩がいましてね。結界を張って、対応させていただいたのですが、どうもこの屋敷は不用心なようですね」
また、雲行が怪しくなってきました。暴風雪注意報発令中です!
とにかく衝撃に備えます。
ちなみに輩とは、お母様とヘムルート先生と思われます。
「あなたには、幸い頼りになる男性がいらっしゃるようですので、安心しておりますが、エリーゼとケリーに関しては安全確保に不備がある様に思います。ですから、二人に他者から害を与えられると発動して跳ね返す、保護魔法をかけさせていただいよろしいですか?」
ラルフ様は、お母様に提案しているが、絶対かけて帰るつもりだと思った。お母様をどう説得するのか、エリーゼは固唾を飲んで見守る。
「え……、急にそんな事言われても……。どうして、エリーゼとケリーにだけに?」
お母様は、自分が保護魔法の対象に入ってなくて不満なようだ。
「あなたに、同じ魔法をかけますと、ブラウン医師を撥ね返すようになりますよ。良いのですか? 触れなくなりますよ」
「!!」
お母様が、息を飲んで瞠目した。
そうか、不貞相手は、害をなす人になるのか。保護魔法は、倫理を判断基準にしている魔法なんだなと、エリーゼは思った。
「心優しいあなたは、娘と使用人を守ることに反対しませんよね? 安心してください。害を与えないものは、普通に触れます。大事な娘と使用人を傷つけようなんて、あなたが考えるわけがありませんものねぇ……」
暴風雪警報発令です!! 冷たい突き刺さるような風を感じて、震えが止まらない。
「いかがです? 許可いただけますか?」
有無を言わせない威圧が、ラルフ様の体からほとばしる様だった。
「はい、エリーゼとケリーに保護魔法をお願いします。私は、必要ないわ」
「了承いただき、感謝します」
「ラルフ様、保護魔法を料理長にも施していただけますか?」
エリーゼは、ケリーが保護対象になるなら、料理長も対象になるだろうと思った。
「勿論いいですよ。この家全員が食べる食事を用意する人なら、当然守っておかなければいけませんね。夫人の食の安全にもつながるので、まさか、反対などされませんよね」
「……、反対など、いたしません」
ノックアウト試合終了のゴングが聞こえた気がした。
お母様、ラルフ様に完全敗北です。
最後までラッシュ攻撃でタコ殴りされたお母様は、小さく見えた。
「さぁ、許しも得たことですし、まず料理長に保護魔法をかけに行きましょうか。案内してもらえますか?」
「はい、こちらへ。どうぞ」
ケリーがキッチンへ歩き出したので、エリーゼも後を追った。
そして、エリーゼ、ケリー、料理長はラルフ様に保護魔法を施してもらった。
ラルフ様の牽制があったおかげで、彼が帰った後も、エリーゼとケリーは穏やかな毎日を過ごすことができている。
ラルフ様の徹底ぶりは、有能さを感じずにはいられない。
保護魔法の存在を恐れているのか、お母様は必要以上にかかわって来なくなった。ヘムルート先生は相変わらず通ってきているようだが、『診察』と称してエリーゼの自室に来ることはなくなった。
ラルフ様も指摘していたが、ヘムルート先生はお母様と会う口実で、エリーゼの往診に来ていたのだろうと思い知る。
往診しなくなったのは、エリーゼにかけられた保護魔法を恐れているからだろう。
ラルフ様と夫人のタイマンは、ラルフ様の完全勝利。
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