止まらぬ恋心
王太子宮へ戻ったラルフは、すぐに王城の侍医の診察を受けた。結果、肋骨が三本折れており、絶対安静を言い渡された。
強制療養期間にそのまま入り、一週間後、時間制限を設けられてはいるものの、面会を許されることになった。エリーゼとレオポルトは早速一週間ぶりに、ラルフと顔を合わせていた。
「ラフィ、久しぶり。調子はどうだ?」
レオポルトが言うと、まだ起き上がることが叶わないラルフは、苦笑いを返した。
「レオ……、気分だけは、大分、いい……」
「ラルフ様、こんにちは」
「……エリーゼ、心配かけてすまない」
「本当にな! まぁ、自分が構築した保護魔法で死にかけるとは、間抜けというか、自業自得というか……、反省しろよ、マジで」
「反省、してますとも。だから、治癒魔法治療受けずに、自力で直しています」
レオポルトの呆れ交じりの厳しい言葉に、ラルフは寝たきりだが、居住まいを正す真似をした。
(そうなんだよね~、ラルフ様は今回、保護魔法を逆手に取られ、ケリーに利用されてしまったことを、すごく、すごく、後悔しているみたいなんだよね……)
だから、失態を忘れない戒めとする気持ちを大事にして、ラルフはあえて自然治癒にすることに決めていた。
「私の懸念通りになったな。これに懲りて、攻撃特化の保護魔法の付与は止めておけよ」
「あれは、もう封印します。次は、こんなことにならないように、攻撃力をもっと細やかに調整すれば解決します。魔法術式を考え直します」
「うぉ~いぃ! 止める気ないんかい!」
「エリーゼを守るために、必ず必要になります」
レオポルトのこめかみに青筋が浮き上がったのを、エリーゼは見逃さなかった。
「私は、今の書き換えた保護魔法で、充分ですよ」
(私は、ラルフ様が治癒してくれたから、傷一つないけれど、魔法で治さなかったら、かなり深くて大きな傷が残ったことだろうと思う。治せるから、無茶して多少体が壊れても大丈夫だと思ってしまうことは、非常に危険なことなのだと、ここに来る前にレオポルト殿下に言われて、私はちょっと怖くなったのだ。正直、あの手の魔法は、役に立つと分かっていても、かけられたくないと思えてきてしまった。相手が悪意を持ってやってきたのを、必殺するのだから、私のせいではないのに罪悪感に苛まれてしまうと思う)
「ラフィ、冗談で済ませないでくれ。攻撃特化は止めておけ! 上司命令だ。保護されるものや周りにかける精神的負担が大きすぎる」
「精神的負担って……」
ラルフは、心外だと言わんばかりに、困惑をにじませた。
「ラルフ様、今回は私も殿下と同意見です」
エリーゼは、間髪入れずに意見を述べた。
「エリーゼ」
「守りが足りなければ、別の方法で守ることを考えてください。お願いします」
(レオポルト殿下が止める案件って、危険度マックスの匂いしかしないでしょ! あのリスク管理ゆるゆるな殿下が、駄目って言ってるんだから、断固拒否しないといけません!!!)
「――――わ、かった……」
レオポルトとエリーゼとで、二人がかりでごりごりで注意したので、ラルフは勢いに負けて最後に折れた。
承諾したラルフが妙に可愛く見えて、エリーゼは頭の中の理性にヒビが入る音がした。
「「「……」」」
三人は、しばし沈黙していた。
気が付くと、エリーゼはラルフの頭を撫でていた。
ラルフは、どう反応していいのか分からず、スンっと無表情なままなのも堪らなくて、愛しさが溢れて止まらなかった。
「あーーー、シュピーゲル嬢? 変身していないラルフを、猫可愛がりするな」
レオポルトの呆れた声のツッコミで、エリーゼは我に返った。
自分のしていた行動を思い出して、恥ずかしさで赤面してしまう。
そして、弾かれる様にエリーゼは一歩後ずさった。
「す、す、すっ……、すみません!ついっ」
(好きが溢れて体現してしまうって、恐ろしい……)
「つい……とは?」
「……」
(殿下! そこは、ツッコんで欲しくないところっ!!! 好きだなって思っちゃったなんて、第三者のレオポルト殿下に言えるわけがない~~~)
その時、少し開いていた扉を軽く叩く音がした。
ノックをしたのは、王太子のゴットフリートだった。
「話し中、割り込んで失礼。ラルフ、調子はどうだい?」
「王太子殿下、大分、いいです」
「そうか、回復が順調なようで幸いだ。でも、骨が三本も折れていたのだから、油断せずに大人しく療養したまえ」
「ありがとうございます」
「エリーゼ、国王陛下が君に話を訊きたいと言われている。だから、今から準備をしてほしい。カミラに頼んだから、彼女の居室に行ってくれ」
「はい、かしこまりました。ラルフ様、行ってまいりますね。お大事になさってください」
助かったとばかりに、エリーゼは退室した。
(二人きりじゃないときに、告白なんてしたくないから、王太子殿下が来てくれて助かったわーーーー!)
熱の引かない顔を両手で押さえながら、エリーゼはカミラの元へ急いだ。
それから、カミラ専属侍女ズの助けを借りて、エリーゼは謁見に相応しい盛装にしてもらった。
そして、エリーゼは王太子宮の馬車に乗り、国王陛下の居城へ向かった。
猫でもないのにラルフに萌えるスイッチが入るエリーゼ。
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