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伯爵家、終わりの始まり

本日更新、二話目です。

一話目まだの方は、ご注意ください。

 ルーカスが結界を解いたので、外塀を囲っていた隊員が数名邸内にやってきた。


「外の様子は、どうだ?」


 レオポルトが執務室に応援にやってきた隊員に訊いた。


「はい、サーチできる者に警戒させていますが、まだ、それらしき反応はないと」

「奴は、まだ邸内か……。 地下通路はどうだ?」

「少人数ですが、すでにさぐらせています。そちらも、まだ、報告なしです」

「そうか、一目見て囲まれていると分かるから、逃走経路は地下を使う可能性が高い。引き続き、警戒しろ」

「はい」


「それと、ハルトヴィヒの移送をしてほしい。ひとまず、五番に入れておけ」

「了解しました」


 魂が抜けたように意気消沈していたハルトヴィヒは、隊員に連行されて行った。


 ルーカスは、クラウディアに寄り添っている。

 クラウディアは、落ち着きを取り戻しているように見えた。

 少し、赤く腫れた瞳が痛々しかったが、その表情はスッキリしているようにエリーゼは感じた。



 はい! 私、エリーゼは壁に背を向け、待機中ですよ!

 ちょっとでも動くと、他のみなさんの邪魔になりそうなので、石になったつもりでじっとしていますよ! ここから、実況頑張ります。


「ルーカス、ひとまず、コンラート捕縛が急務だ。彼のことを教えてくれ」


 レオポルト様は、団長さんらしく、先程から仕切りっぱなしです。

 きっと、すごく頭の切れる人なんだろうなって思います。

 何か、纏うオーラが神々しいです。

 ルーカス様も、彼を知っているのか、完全に服従してます。


「コンラートは平民ですが、魔力が強かったので、父に気に入られて、この家に雇い入れたそうです。父はご存じの通り、薬の開発に没頭していましたから、他の者が尻込みして拒む実験も、コンラートは嫌がらず協力していたので、いつの間にか、父はずっと彼を傍に置くようになっていきました。そして、執事にまで登り詰めました。領地経営も、やがてコンラートが取り仕切る様になり、領地管理人も、彼が推薦した者に変わっていました。私は、領民を顧みない父を、良いとは思っていなかった。だから、彼の思惑を知らなかった私は、領地経営は私がやろうと、日々勉強しました。学校を卒業し、やっと当主の嫡男として領民を支えられると動き始めて、初めてコンラートが領民から集めた税の一部を横領していることに気づいたのです」


 レオポルトが、ルーカスに話の続きをしろと目配せした。


「私は、コンラートに詰め寄り、金を返すように言いました。今、思えば、軽率な行動でした。犯罪者相手に、馬鹿正直に立ち向かうことは愚かでしかない。横領の露見を防ぐために、コンラートは、私にいつもの薬だと偽って、禁術魔法を付与した薬を飲ませたのです。開発中の薬で死ねば、父にも言い訳ができると考えたのでしょうね。その結果、私は死なずに若返ってしまった」


「コンラートも、その禁術魔法薬の開発に関わっていたと?」

「はい、父は近頃、老いが急激にきていました。父が自分自身に使う前に、私で試そうと、彼は父を唆したのだと思います」


「使用禁止の魔法を使った上に,違法薬とは、恐ろしいものを身内に使うなど、正気の沙汰ではないな」


「コンラートは横領して、父を欺いていましたが、慕っていたと思います。だから、若返りの薬を早く完成させたかったのだと思います。私の姿を見れば、ある意味成功しているといえますが、違法で使ってはいけない薬なのは変わりません。このようなものは、決して広めてはいけないものです」


 ルーカス様の強い語気に、レオポルトは頷いた。


「ルーカスの言う通りだ。しかし、古くから継承されてきた名門伯爵家の執事が聞いて呆れる。忠義者の殻の下は、醜い金の亡者とは……。コンラートという奴は、最低で救いようのない阿呆だな」


 レオポルトが、大袈裟にコンラートを貶める言葉を連発した。


 その時、エリーゼの背後の壁が、急に柔らかい感触に変わり、驚いて振り返ったら、壁から手が生えていた。


「!?」


 手、肩、頭と壁から生えるように人間がゆっくり出てくる。


「コンラート!!!」


 ルーカスが、叫んだ。

 彼は、壁に隠れていたのだ。


 レオポルトは分かっていて、コンラートを罵倒していたのだ。

 コンラートは、出てきてすぐ目の前のエリーゼを人質にしようと、手が触れた瞬間――――



「いやぁっ!!」

 バン!! ガッシャーン!!!



 エリーゼが叫んだ声と同時に、大きく弾けて何かが割れるようなした。

 エリーゼは、とっさにしゃがみこんで身を守った。

 しばらく、そのままの体制を保っていたが、エリーゼはコンラートに捕らえられることはなかった。


 恐る恐る顔を上げると、エリーゼが背にしていた壁とは反対の、遠くの窓の下にコンラートはいた。コンラートは窓ガラスに叩きつけられたのか、割れたガラスが彼の体に無数に刺さっていた。

 コンラートは白目をむいて倒れていて、全く動かなかった。


「はぁ、ラルフ……。強すぎだろ? もっと加減しないと死人が出るぞ」

「エリーゼを守るのに、やりすぎではありませんよ」


 ラルフは、コンラートが息をしているのを確かめ、動かない彼を拘束した。


「保護魔法というより、攻撃魔法だろう……これは」


 んん?


「大丈夫ですよ、死んでいません」

「何、結果オーライなドヤ顔してんだ、コラ。犯人殺したら、罪に問えんだろう。ルーカスたちが救えなくなるところだ」

「――――すみません」


 んんんん~~~~???


「それにしても、凄まじい……。男爵令嬢に触れた瞬間、コンラードがぶっ飛んだぞ。お前がかけた保護魔法、役に立って良かったな」


 えええ~~~~、もしかしなくても、ずたぼろコンラートさん、私のせいですか?

 私的には助かったけど、めっちゃ後味悪いです~~~。


「男爵令嬢、顔ひきつってるぞ」

「……いろいろ、衝撃過ぎて引いてます……」

「いや~、ラルフの保護魔法がどんなものか確かめたかったっつーか、愛の強さに比例するような、発動力だったなぁ。私も、驚いたよ~」


 わざと、襲われる様に仕向けたんだ。この団長はっ!!!


「コンラートを瞬殺してくれたから、助かったよ! シュピーゲル嬢!!」


 てへっと可愛くウインクしても、エリーゼは苦笑いしかできない。

 仕事はできる人かもしれないが、団長は今日から私の敵に決定です!!


「エリーゼ、大丈夫か?」


 コンラートを拘束し見守るラルフ様が、ぞんざいに声をかけてくる。

 仕事優先なのは分かるが、それなら、声をかけてこなくていいわとひねくれてしまう。


「大丈夫じゃ、ないです! いろいろと!!」


 助けてもらっておいて、礼も言わない私は、本当に可愛くないと思う。

 消化できない感情を、エリーゼは持て余して叫んだ。













ラスボスのはずのコンラート、瞬殺。


ブックマーク登録、評価等いただき誠にありがとうございます。

読んでいただき光栄に思います。

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