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第96話

休載迄、残り4話!

完結迄のストックが溜まりません(苦笑)

「しんせーまほーならボクできりゅの。しょれできれいにしゅるの」

シリウスに習ったばかりの神聖魔法で、フリックは使いたいことから言った。

「フリック。お前が神聖魔法を使えるのは分かっているけど、失敗したら元も子も無いだろう?」

「うー…ボク。できりゅもん。しっぱいしないもん!」

「ま、まあまあ。フリックちゃん。実戦は積む必要はないわ」

「ボク、ちゅかいたいの。きれいになりたいひとのためにちゅかうまほーだってシリウスおにいちゃま、いっていたの」

「それはそうだが、フリック。“ス”の発音、上手く言えないだろう?」

神聖魔法は≪サンクトゥス・ヴァルキュルスト≫ということから、ルシウスは舌足らずのフリックには、まだ早いことから言ったのだ。

「うー…ヒック…ヒック…シュ(ス)いえりゅもん!うわああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!」

そうフリックは言うものの、上手く“ス”は言えずに泣き出してしまったのである。

「フリックちゃん………」

「兄さん。フリックがこう泣いたら…」

「わ、分かっている。俺が全て責任を取る。フリック…悪かった。兄さんが悪かったから…」

「ううぅ…ヒック……ヒック……ルシウシュにーさまなんて…だいっきらいなの…!うわああああああああああああああああああああん!!!!!!!!」

「………フリック」

未だ泣き崩れ出すフリックにルシウスは、途方にも暮れてしまった。

「ん?フリック…泣いているのかい?」

マイラスは夕飯が出来たからと呼びに来たものの、大きな声を出しながらフリックが泣いていることに気付いたのだ。

「あ、ああ…マイラスか。見ての通りでちょっと…な」

「…どう見てもちょっとじゃない気がする。ルシウス兄さん…フリックに何をしたんだよ」

「実はマイラス兄さん…」

エリオスは、事の現状をマイラスに話したのだ。

「…そうか。ちょっと兄さん。コレは幾ら何でも言い過ぎじゃないのか?フリックだって頑張って少しずつ魔法を覚えようとしているからこそ、やってみたかったんだろう?」

膨大な魔力を持つが故に今までロクに魔法を教えられず、ここに来てから召喚魔法を始めとする魔法を少しずつ習っている様子を知っているからこそ、マイラスは言ったのだ。

「だが、吸血鬼カミラに狙われもしたら…」

幾らリベルダ領土内全体は、シリウスの張った結界の元、ここには辿り着くことは勿論、クレイスの造った魔導具がある以上、エルフは人間に見えるように施すという奇跡的なモノを編み出したとはいえ、危険には変わりないのだとルシウスは返したのだ。



吸血鬼カミラは、シェルファがこの世界に転生する前から存在しているという。

それ故に神聖魔法は、人間を始めとする種族は扱うことが出来ないとされていたが、日々の公務との合間に自身の体調を無理しながら、10都市の街を持つノイント都市国家をまとめあげている、若き大統領である、リリア・ネルソン・ルスト・アルヴィーンが神聖魔法を扱うということであった。



「ううぅ………ヒック……ヒック……」

「フリックちゃん。事が終わるまで私と一緒に森に遊びに来る?」

「いいの…?シェルおねえちゃま」

「ええ、いいわよ。フリックちゃんの大好きな遊園地も用意しているわ」

「いくの。ボク、シェルおねえちゃまといっしょにいくの」

漸くと泣き止んだフリックは、シェルファに懐きながら返したのだった。

「…いつもすみません」

「いいのよ。この子は勿論、あなたたちのことは本当の孫みたいな…だから」

エルフの頂点に立つ以上、シェルファはこの世界からエルフがいなくならないことを信じつつ、今はするべきことをするだけだと思いながら、彼らと共に夕飯するためにホールへと向かったのである。




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